コンサルタント転職のこぼれ話
コンサル経験は事業会社でどう活かせるのか

キャリアコンサルタント 永田 憲章

コンサル経験は事業会社でどう活かせるのか

先日、「クライスCareer Lounge」というオンラインセミナーを実施しました。
「コンサルになるとキャリアの選択肢は本当に増えるのか?」というテーマで、2名の方に登壇いただきました。
お一人はNTT東日本・ドリームインキュベータを経て、ラクスルに入社し、ジョーシスのセールス&マーケティング やユーザーコミュニティの立上げを所掌している城戸氏。そして、A.T.カーニーを経てエクサウィザーズへ入社し、執行役員として医療ヘルスケア領域の事業責任を担っている羽間氏です。
セミナーでは、コンサルタントを目指す方や現役コンサルタントの方がキャリアを考える上での金言が多く飛び出しました。その内容をこのコラムでお伝えします。
 
コンサルティングファームで得られること
 
●コンサルタントの基本となる期限内に顧客に価値を提供するため、「できることを全てやる」というアティチュードは、仕事のOSになり、どのような仕事でも活かせる。
 
●コンサル経験は、どのような状況にも対応できる応用力を得られる。城戸氏は 現在スタートアップでサービスのローンチにBizdevとして関わっている。プロダクトづくり、セールス、マーケティング、コミュニティの立ち上げなど、毎月業務内容が変わる中で、コンサル時代に「2週間後に新しいテーマで経営層とディスカッションする」といったプロジェクトで揉まれた経験が活きている。
 
●論理的な思考力を得られる。問題解決や戦略に関するフレームワークは、本を読むだけでは実用性がなく、コンサル経験を通じてどう実践するかを学べる
 
●法人や外部のステークホルダーを巻き込みながら事業開発をする場合に、ステークホルダーが多い中で企業に対してコンサルティングをした経験が活きる
 
コンサルティングファームと事業会社の違い
 
●コンサルと事業会社はスタート地点が根本的に違う。コンサルは、問題や課題があるお客様に、解決策を提示するサービスを提供している。事業会社は、そもそも自分たちは何をしたいのか、どうするべきかというミッション・ビジョンの定義をすることから始まる。
コンサルタントの立場に慣れすぎると、自分が何をやりたいかではなく、まず整理からはじめる傾向がある。その結果、整理に頭とチームのエネルギーを使い過ぎ、何も生まれないことも。事業会社においても整理が大事な場面はあるものの、ビジョンや自分の意志を考えることが重要。
 
●コンサルティングファームと事業会社のマネジメントはまったく違う。コンサルティングファームでは、プロジェクトのスコープ・目的・期限がある中で最大限のアウトプットを出すためのプロジェクトマネジメントが行われ、人材としては似たタイプが多い。
一方、事業会社のマネジメントは、事業としての結果を出すためのマネージメンマネジメント。ミッション・ビジョンの実現や、事業としての目的達成のために、数字・ビジネス・組織を創り、結果を出すために全てをやる。時間軸が長く複雑性があり、職種・経験・スキル・価値観・志向などが異なるメンバーをマネジメントしていく。さらに、採用も重要なミッションであり、強いチーム創り、カルチャー醸成などを行っていく。マネジメントのタイプが違うため、事業会社のマネジメントは、コンサルティングファームでは経験できない
 
経営力や事業を創る力は、経験しなければ身につかない。コンサルファームで経営や事業を考えること、事業会社で人や組織に対してレスポンシビリティをもって実践することは全く異なる。
 
現役コンサルタントが意識すると良いこと
 
●コンサルタントとして活躍したいのか、事業を創れるようになりたいのか。「自分はどうありたいか、何をしたいのか」の問いに向き合っていくことが重要。最初からやりたいことが決まっている人は珍しい。さまざまなことにアンテナを張り、好奇心を持って動くこと。
極論をいえば、飛び込まないとわからない。飛び込んでみると熱中していくこともある。飛び込んで違うと思ったら、今の時代ならまた転職できる。ピンとくることがあったら、飛び込んだり話を聞いてみたり、実際に動いたほうがいい。
 
●事業のオーナーを目指す場合は、自分がクライアント側の意思決定者になると想像してみる。具体的には、「自分の提案に対して、身銭をきり、時間とチームメンバーをアサインしてやるのか?」をシミュレーションする。客観的に見てやるべきという視点ではなく、自分が提案される側で、会社の意思決定を背負いリアルにやるかまで考えてプレゼンすると、お客様に与える重みはまったく違う。
また、自分の提案の結果、お客様が実際にどのように動き、世の中・マーケットからどうレスポンスが返ってきているかまで見ていくことが重要。プロジェクト終了後もお客様とコミュニケーションをして、「あの後どうなっていますか?」と聞いてみる。
 
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自らのキャリアとして、いずれコンサルティングファームからの卒業を考えている人も多いでしょう。そのため、ネクストキャリアの選択肢になりうる事業会社の解像度を高め、コンサルティングファームと事業会社の違いを認識しておくことが重要です。もし、友人・知人に、コンサルティングファームから事業会社に転職した方がいたら、お話を聞いてみてください。
 
そして、「自分としてどうありたいか、何をしたいのか」を見つけるため、好奇心を大切にして、アンテナを張ってピンときたことに対しては積極的にアクションすることをお勧めします。

(2023年4月20日)
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