コンサルタント転職のこぼれ話
CX向上に欠かせない、「聴く」スキルの磨き方

キャリアコンサルタント 永田 憲章

CX向上に欠かせない、「聴く」スキルの磨き方

先日、人の話を「聴く」ことに関する、とても素敵な本に出会いました。今回のコラムでは、その本を紹介します。
 
本の紹介の前に、ひとつ質問です。
こんな場面に遭遇したら、あなたはどう感じますか?
 
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あなたは、コンサルティングファームでプロジェクトの責任者をしています。
ある日、クライアントの担当者から声をかけられました。
「先日の会議で説明してもらった〇〇〇がよく分からなかったんだけど」
 
このとき、お客様はあなたに何を伝えたいでしょうか?

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もし、私が前職のコンサルタント時代に上記の場面に遭遇したら、二通りのことを考えたでしょう。
 
1つ目は、「追加の説明資料を作成する必要があるだろうか」と考える。
2つ目は「あれだけ分かりやすく説明したのに、どうして伝わらないのか」と、自分の説明に落ち度がないことを正当化したくなります。
 
しかし、これらは、自分に矢印が向かっている状態で、相手の話を聴いているとは言えません。
まずは担当者の発言の背景を想像することが重要です。
 
たとえば、カウンターパートの方は、「すごくいいアイデアなので、次の会議で上司に説明したいけれど、自分にITの知識が足りないから、詳しく知りたい」と思っているのかもしれません。
 
そういった背景に意識が及ばず、自分に矢印が向いた状態で「(内心、少し怒りながら)あの説明のどこが分かりにくかったですか?」とコミュニケーションをとってしまうと、新たなチャンスを逃してしまう可能性もあります。
 
極端な例ですが、このようなコミュニケーションのズレは、生活の様々な場面で起こっているのではないでしょうか。
こうしたズレを防ぐためには、相手の話をまず「聴く」ことが重要です。
 
聴くスキルを磨くのに最適な本が、『LISTEN』(ケイト・マーフィー 著/篠田真貴子 監訳/松丸さとみ 訳)です。
 
著者のケイト・マーフィー氏は、ニューヨーク・タイムズや、ウォール・ストリート・ジャーナルなどで活躍するジャーナリストです。
大量の文献を読み、聴くことを生業とする様々な方にインタビューをしたマーフィー氏が、人の話を「聴くこと」について、書いています。
 
たとえば、次のようなことが書かれています。

 
●人々は、話し方や伝え方は教えられているのに聴き方や傾聴の仕方を教えられていない
 
●夫婦や子供とのコミュニケーションにズレが生じるのは「相手が何をいうか分かっている」という思い込みが原因
 
●会話のときに気が散る最大の原因は「次にどんな気のきいたことを言おうかな」と、次に何を話そうかと考えること
 
●話を聞きながら、問題を解決しようとしたり、安心させるために説得したりすると、会話の内容がずれてしまう
 
こうした事象には自分にも思い当たる節があり、自らのコミュニケーションを振り返る良い機会になりました。

 
更に、『LISTEN』には、人の話を聴くことの素晴らしさがたくさん書かれています。
たとえば、聴くことが人生を面白くし、親しい人との仲を守ること、ヒット商品も聴くことから生まれることなどです。
 
ビジネスにおいても、これからはCXの時代です。CXは顧客理解から始まるため、聴くスキルを身につけることは、非常に大きな価値を持ちます。
 
ちなみに、転職活動に置き換えて考えると、採用時の面接では「何を話すか」の前に、「面接官は何を確認したいのか」を聴くことが重要です。
 
「よく見せよう、アピールしよう」ということに注意が向き、面接官が何を知りたいのかを理解せずに話してしまうと、話したことが面接官に届かないばかりか、良くない印象を与えかねません。
 
このように、人の話を「聴く」スキルは、仕事・家庭・転職活動など、人生の様々な場面で活用できます。気になった方は、読書の秋にぜひ『LISTEN』を手にとってみてください。

(2021年10月19日)
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