コンサルタント転職のこぼれ話
キャリアに夢やビジョンは必要か?

キャリアコンサルタント 入江 祥之

キャリアに夢やビジョンは必要か?

先日、若いコンサルタントとお会いした際に、彼はこのような話をしていました。
 
「私は幼い頃に父親を亡くしてお金に苦労して生きてきました。中学受験では志望校に合格しましたがその学校への入学は諦めました。大学はランクを下げて奨学金で通える大学を選びました。大学時代は低賃金のアルバイトしかなくお金を稼ぐのにも苦労しました。だから私はお金で夢を諦める必要のない世の中にしたいですし、一度失敗しても再チャレンジできる世の中を作りたい。だから、私は・・・のようなビジネスをやりたいと思っています。」
 
私は彼の話を聞いて、素直に応援したい、夢を実現して欲しいと思いました。
 
皆さんはどのように感じられるでしょうか?
 
私が普段キャリア相談を受けている際に、上記のような夢やビジョンを語られる方はあまり多くはありません。
 
コンサルタントの方であれば、事業会社で経営ポジションに就きたい、当事者側でビジネスを作って育てたい、ファイナンスのスキルを身に着けたい、上が詰まっているのでポジションを上げたい、年収を上げたい、などの希望を挙げられる方が多いです。
 
転職とは、今の職場では実現できない何かしらの不満を解決する手段でもあるので、これはこれで全く違和感はありません。
 
ただ、人の心を掴み、「応援したい!」、「一緒にやりたい!」と思えるのはどちらのタイプでしょうか。
大抵の仕事は一人で完結することはありません。大きなことを成し遂げたいと思えば、周りの人の協力を得られないと実現しません。
 
先日PEファンドでどんな人を採用したいかを聞いたところ、「表現は的確ではないかもしれませんが、我々の仕事は中小企業の経営者であるおじいちゃん、おばあちゃんの希望を叶える仕事です。おじいちゃん、おばあちゃんの話を何時間もじっくり聞いてあげられる人でないと出来ない仕事です。また、現場の社員は大抵の場合、始めは反対勢力になります
その人たちとゴールを定めて一緒に額に汗をかいて頑張る仕事です。経営やファイナンスの知識はもちろん必要ですが、最後は人として信頼しても
らえるか、人を動かす力があるかどうかが最も大事です。」というお話をされていました。

 
「I Have a Dream(私には夢がある)」

 
これは、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが人種平等と差別の終焉を呼びかけた有名な演説の一節です。この演説でキング牧師はアメリカ国民の心を掴み、歴史を変えました。
 
地位、権力、お金は人が求めやすい欲求であり、こちらがあるからこそ、成し遂げられることがあることも事実だと思います。ただ、きれいな心、正しい考え方を持っていることが大事で、伝え方や順序を間違えてしまうと人の気持ちを冷ましてしまうこともあります。
 
キャリアや転職だけではなく、今後、リーダーを目指す方には、夢やビジョンを掲げ、人を惹きつける言葉を語れるようになるかどうかが重要になってくると思います。

(2016年7月20日)
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