前回の私のブログでは「デジタルトランスフォーメーションを推進するリーダーが心得るべきこと」について言及しました。
https://kc-consul.com/blog/65.html
デジタルトランスフォーメーションは、今後のキャリアを考える上でも
非常に重要なテーマになることが想定されるため、今回のブログも同様のテーマでおおくりします。
まずはじめに、既にお読みになられている方もいらっしゃるかと思いますが、デジタルトランスフォーメーションを考える上で、是非、お読みいただきたい書籍があります。
ビービットの藤井保文氏、IT批評家の尾原和啓氏による新著、
『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』です。
中国で展開されている新しいビジネスの裏側にある仕組みやその奥にある新たなビジネス競争原理に関する藤井氏の知見と、尾原氏の膨大なグローバルの知識を統合することにより、
世界全体から見たデジタルの変化とビジネスにおいて必要な視点とアクションが提示されている本書。
藤井氏と尾原氏は、オフラインがデジタル世界に包含される世界を「アフターデジタル」と呼び、多くの日本人の捉え方が「ビフォアデジタル」であることに警笛を鳴らしながら、世界潮流から見たデジタルトランスフォーメーションの方法論を提示しています。
日本企業はオフラインを軸にしてオンラインを活用しているが、
先進的な世界では考え方のベースがオンラインになっていて(オンラインが“主”)、オフラインは信頼獲得可能な顧客との接点という位置づけ(オフラインが“従”)であること。
「顧客接点データを多く持ち、それをエクスペリエンスの良さに還元する」という
新たな改善ループをいかに高速で回せるかが、新しい競争原理になっていること。
上記はあくまで一例となりますが、本書には様々な示唆が含まれていて、私自身、デジタルトランスフォーメーションに関する考え方が大きく変わりました。
本書に記載されている
中国のタクシー配車サービス「ディディ」。
私は先日、都内での移動のために、ディディを利用しているタクシーに乗車する機会があり、運転手さんが、ディディの使い勝手に関して次の話を聞かせてくださいました。
●ディディは、音声あるいはメッセージにより、顧客とダイレクトにやり取りできるので便利
●(ハンドルの左についているディディの画面を見ながら)
ディディのユーザーインターフェースは、導入時から大きく変わっている。
私達ドライバーの要望をどんどん反映してくれていて、使いやすくなっている。
本書では、エコシステムに関わる全ての関係者の満足度が重要であることや、行動データをため続けるために「楽しい、便利、使いやすい」といった体験品質の高さが必須であると記載されており、
正にディディが高速でそれらを行っていることが垣間見えた瞬間でした。
また、大企業や既存型企業の変革好事例として
「平安保険(ピンアン)グループ」のデジタルトランスフォーメーションが取り上げられています。2017年からの1年で、株式時価総額が倍の約21兆3,000億円に到達するという異例の躍進を遂げている同社。
1998年に創業した保険会社が何を行ってきたのかを知ることができるだけでも本書を読む意味があると感じます。
ここまでは書籍の紹介となりますが、それでは
「アフターデジタル」時代にはどのようなキャリアを歩めば良いのでしょうか。
最近、弊社がご支援させていただいている企業では、
「未来の顧客接点のあり方を考える」ためのポジションが新設されました。今後、様々な企業で、アフターデジタル的な思考が求められてくることが想定されます。
コンサルティングファームにいらっしゃる方であればデジタルトランスフォーメーションプロジェクトへのアサインを希望し、「オフラインの世界が中心で、そこに付加価値的にデジタル領域が広がっている」という従来の考え方ではなく、
「オフラインとオンラインの主従関係が逆転した世界」という視点を持ってお客様の課題と向き合っていくことをお勧めします。
また、「エクスペリエンスと行動データのループを回す」経験をたくさん積んでいるかどうかも1つのポイントになると感じます。
IT企業では
「カスタマーサクセス」というポジションがますます重要視されていますが、私は「エクスペリエンスと行動データのループを回す」という観点で
貴重な経験を積めるポジションであると考えています。
先日、freee社のCEO、佐々木氏による以下の寄稿がありました。
日本発の強いSaaSビジネスを作るには?SaaSビジネスモデルを7年の経験から徹底解剖
https://jp.techcrunch.com/2019/09/27/freee-saas-feature/
上記には、サブスクリプションの実力値を評価する数値であるARR(Annual Recuring Revenue)に関して、ある期間におけるARRの成長は大きく3つに分けることができると書かれています。
①既存顧客の解約(Churn)
②新規顧客獲得
③既存顧客へのアップセル
カスタマーサクセスは、特に①③に影響を与える重要なポジションであり、
エクスペリエンスと行動データのループを回した結果が如実に現れる点でも大きな遣り甲斐があると思います。
コンサルタント経験者の方をカスタマーサクセスポジションで求めている企業もありますので「アフターデジタル」時代のキャリアの選択肢として是非検討いただきたいです。
(2019年10月21日)