Vol.54

掲げるのは「働く株主®」。 投資×経営コンサルティングで 日本の上場企業に革新を起こし、 株式投資のフロンティアを開拓していく。

みさき投資株式会社

代表取締役社長中神康議氏

エンゲージメント・オフィサー中尾彰宏 氏

インタビュアー 入江・永田・山本

「働く株主®」という斬新なコンセプトを掲げ、従来の日本にはなかったアプローチで上場企業の企業価値向上を図るみさき投資。なぜ「働く株主®」という哲学が生まれたのか、そして、みさき投資は日本の資本市場で何を成し遂げようとしているのか。経営コンサルタント出身で創業者の中神氏と、経営コンサルティングファームから転職し、いま同社の最前線で活躍するエンゲージメント・オフィサーの中尾氏に話をうかがった。

Message

投資運用にコンサルティングの力を移植すれば、大きなリターンが得られるはずだ。

永田
まずはお二方のご経歴を簡単に教えていただけますか。
中神
私は大学卒業後、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)に入社し、その後コーポレイトディレクション(CDI) に移って20年ほど経営コンサルタントとしてキャリアを積みました。そこでの経験から想うところがあって、2005年に投資運用業界に身を転じてファンドを起ち上げ、いくつか実績を残しました。そして2013年にこの「みさき投資」を設立し、また新たなファンドを起ち上げて現在に至っています。
中尾
私も中神と似たような経歴で、工学系の大学院を修了した後、技術のある企業が正当に評価されない日本の市場に問題意識を覚え、経営コンサルティングを志向してCDIに入社しました。その後、よりグローバルな製造業の案件に携わりたいとA.T.カーニーに移籍し、2017年からみさき投資に参画しています。
永田
中神さんがコンサルティング業界から投資運用業界に転身されたのは、どのようなお考えからだったのでしょうか。
中神
経営コンサルタント時代、クライアントの経営者とともに優れた戦略を企画実行することで企業価値が大きく向上し、結果として株価が上昇するという体験を何度か重ねてきました。そこから「投資の世界にコンサルティングの力を移植し、自ら企業価値向上に関われば良いリターンが得られるのではないか」と考えるようになったんですね。コンサルタントの仕事は、事業の目利きをして戦略を立案し、経営者を説得して会社を変えていくこと。この力は投資の世界でも活きるはずだというのが、当時私が立てた仮説でした。この仮説を実証したいと投資運用業界に飛び込んだのです。
永田
コンサルタント出身者がプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)業界に移るケースはよく見受けられますが、中神さんはまた違ったアプローチをとられたのですね。
中神
おっしゃる通り、コンサルタント経験者がPEファンドに転職するのは当時から人気のキャリアパスでした。しかし、日本でもすでに多くのPEファンドがひしめいていて、優秀なコンサルタントが殺到するものの、投資対象となる有望な未公開企業などそう存在するものではなく、プレイヤーが多い割には案件が少なくて競争が激しい状況だった。一方、上場企業を対象にしたファンドは、コンサルタント経験者は誰も関心を払っていなかったんですね。PEファンドは投資先のマジョリティの株主となって思い通りに会社を変えていくことができますが、公開企業だとそうはいかない。マイノリティの株主だと経営に関与できる余地が限られ、それがコンサルタント経験者にとっては物足りないと。
永田
上場企業に投資しても、経営には深く関われない、それほどリターンも得られないと思われていたところに、中神さんは敢えて挑まれたわけですね。
中神
ええ。日本の株式市場を見渡すと、EBITDAマルチプルで2倍3倍程度の企業が多数存在し、なかにはPBRが1倍を切るような会社もたくさんある。そこに投資してコンサルティングの力で企業価値を向上させれば、充分大きなリターンが期待できるに違いない。そしてPEファンドと比べると、扱うマーケットのサイズがまったく違う。日本の株式市場は時価総額で約600兆円に上る一方、国内のPEファンドによる投資はすべての歴史を集積しても6兆円ほどのストックしかたぶんない。ケタが2つ違うんです。しかも株式市場の年間売買回転率はほぼ100%なので、流動性もきわめて高く、フロー金額としても600兆円ある。マーケットが大きく、フローもあって、プレイヤーも少ない。まさにここはブルーオーシャンだと感じて、上場企業投資の世界に転身しようと決断したのです。

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投資家でありながら、企業経営にも関わる。成功事例を上げて、仮説が確信に。

永田
中神さんがみさき投資を設立される以前、前職時代に起ち上げたファンドでは、どのような成果を上げられたのでしょうか。
中神
先ほどお話ししたように「投資家が経営者と一緒に働いて事業を良くすれば、大きなリターンが得られるのではないか」という仮説を持ち、投資先企業の経営に関わりながらファンドを運営しましたが、結果的に8年半を通じて大きなリターンを出すことができた。この間、リーマンショックや東日本大震災など日本経済にとってネガティブな要因があり、海外の投資家から日本株が敬遠されていたにも関わらず、きわめて高いパフォーマンスを維持することができました。ある日本株の有名な研究者の方から、「日本の株式市場に燦然と輝く金字塔だ」とまで賞賛されたほど。なかでも大ヒットと自負しているのが、ベビー用品メーカーへの投資案件。我々が投資した時の時価総額は250億円ほどでしたが、現在は5,000億を超えています。
永田
それはものすごい成果ですね。どうしてその企業に投資されたのですか?
中神
その会社は哺乳瓶をはじめとするベビー用品で圧倒的なシェアを持っていて、そこに注目して投資したのですが、その頃、株式市場ではあまり高い評価が得られていなかったんです。日本は少子高齢化が進んでいますので市場が伸びないと。でも我々はアジアにまで視野を広げ、各国に出張してリサーチしたところ、現地のメーカーの何倍もする日本製のベビー用品が売れ始めていたんですね。大切な赤ちゃんのためなら、安全安心で高品質な日本の製品を購入することを厭わないという人が増えていて、マーケットは必ず伸びる、その会社にとっては大きな成長ポテンシャルがあると確信しました。そして会社が中期経営計画を作る際に、我々からサポートプロジェクトを提案し、約1年弱かけて海外市場調査や海外競合分析、事業計画や資本政策案などさまざまな切り口の支援を行いました。その後、同社が中期計画を発表し、海外成長に向けた取り組みを加速させていった結果として、以後10年強で海外売上高比率が10%から50%へ拡大して業績が急伸し、ROEは3倍、配当は5倍にまで向上したのです。
永田
その企業が独自に海外での成長戦略を立案実行するのは、やはり難しかったのでしょうか。
中神
実はベビー用品のマーケットはニッチで、まとまった統計データも入手は容易ではありませんでした。海外の競合企業も非上場企業が多く、業績動向や戦略なども見えづらい。そこは我々の経営コンサルティングで培った経験が大いに活きたところであり、企業価値向上に貢献できたと思っています。こうして成果を上げたことで仮説が確信に変わり、2013年に新たにみさき投資を起ち上げたのです。
永田
中尾さんは以前、経営コンサルタントとして活躍されていたとのことですが、みさき投資に参画されたのはどのようなお考えからですか。
中尾
前職ではグローバルな有名メーカーの経営に数々関与し、新聞に載るような案件も手がけ、それなりに満足感を得ていたのですが、同時にコンサルティング業界が大きく変容しているのを感じるようになりました。どんどん高度化・先鋭化する事業の課題に応えるためには、その業界に特化して専門性を発揮することが求められ。また、競争のスピードに対応するためにもよりオペレーショナルなところまで入り込むケースが多くなってきた。企業のお役に立てている実感はあった。でも、果たしてそれが本当に自分のやりたいことなのか?と。私としては、やはり世の中でくすぶっている企業のポテンシャルを長期で最大化させるような経営コンサルティングがしたいという思いがあり、今後のキャリアについて悩んでいた時にたまたま中神に会い、みさき投資が掲げる「働く株主®」というコンセプトにとても惹かれたのです。みさき投資は投資運用業でありながら、本当にやろうとしているのは「経営ポテンシャルの最大化」であり、そこに真正面から取り組もうとしていた。いままでにないモデルで、ここなら本来私が望んでいた経営コンサルティングを追求できると感じて入社を決意したのです。

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経営に精通した投資家の目線を株式市場に持ち込めば、日本企業は劇的に変わる。

永田
いま中尾さんから、「働く株主®」がみさき投資の掲げるコンセプトだというお話がありましたが、「働く株主®」とは具体的にどのようなことなのでしょうか?
中神
単に株式市場でリターンを求めて企業に投資するのではなく。株主も企業価値を向上させることにもっと参加してもいいのではないか、むしろそれが本来の役割ではないのか、というのが我々の社会に対する問題提起です。こうお話しすると「モノ言う株主」をイメージされるかもしれませんが、企業と対立姿勢を強めて株主総会で影響力を行使するだけでは、結局、経営の何の役にも立たず、時には迷惑な存在にすらなってしまう。そんな「モノ言う株主」のアンチテーゼとして、我々が掲げているのが「働く株主®」なのです。特に日本企業においては、投資家の目線を取り込むことで企業経営は劇的に良くなるというのが私の時代観です。
永田
なぜいま、企業経営に投資家の目線が必要とされているのでしょうか。
中神
企業経営は3つの市場と日々対峙し、そこで啓発されることで進化していくと考えています。3つの市場とは「製品・サービス市場」「労働市場」そして「資本市場」。日本企業は、「製品・サービス市場」においては世界一厳しいと言われる顧客の要望に応えて競争力を磨き、企業価値を高めてきました。今でも世界シェアの高い製品はたくさんあります。また「労働市場」においても、かつては頻発していた労働争議などを乗り越え、世界に誇るべき健全な労使関係を築き、日本企業の経営レベルは格段に向上したと思います。一方、「資本市場」と企業経営の関係はどうかというと、間接金融市場においては過去、銀行との連携がうまく機能してきました。戦後の復興はそのおかげです。一方、直接金融市場では、株主はまったくと言っていいほど経営に貢献してこなかった。昨今、そうした状況は不健全だとガバナンス改革が叫ばれていますが、我々「働く株主®」が本来の投資家目線で経営に関わり、現場からそれを成し遂げていくことで、日本の企業経営に革新をもたらしていきたいのです。
永田
企業経営に最も近い投資家として、事業の現場にも関わり、資本市場からの評価を高めていくためのアクションを起こしていくのが「働く株主®」なのですね。確かに、そうしたモデルの投資運用会社は他には見当たらないように思います。
中神
その通りです。投資家でありながら、経営に関する見識を持ち、経営者と膝詰めで事業の話ができ、データドリブンでロジカルに経営者を説得して意思決定を促すことができる、ここまで精緻なエンゲージメント・モデルで株式市場に関わっているプレイヤーはいまところ国内には存在しないのではないかと思います。いま我々が挑んでいるのは、日本でまだ誰も手がけていないフロンティア。これまで持ちえなかった視点で企業経営を洗練させるテーマは山ほどあり、我々が「働く株主®」としてそれらを実行していく所存です。
永田
中尾さんは、みさき投資に参画されてまさに「働く株主®」を実践されているわけですが、現状をどのように捉えていらっしゃいますか。
中尾
いま実感しているのは、「働く株主®」の具体的なモデルはまだ完成されたものがないということ。どのような形で投資先に関わっていけば投資家として企業価値向上に貢献できるのか、自由な発想で試行錯誤を繰り返しています。いわゆる経営コンサルティングと同じでは、我々の存在意義はない。これまで経営コンサルタントとして培ってきた経験をベースにしながらも、コンサルティングファームの流儀はいったん自分の中からすべて取り払って、これまでの常識や慣習にとらわれずに「どうすれば経営のポテンシャルを引き出して企業価値を最大化できるか」をゼロベースで考え、みさきならではのスタイルを模索しているところです。


構成:山下 和彦
撮影:櫻井 健司

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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