医療とAI、それぞれの専門家が集結。医療×データの観点から、人々の健康に真に貢献するイノベーションを創り出す。 株式会社MICIN 原 聖吾氏 草間 亮一氏

Vol.44

医療とAI、それぞれの専門家が集結。医療×データの観点から、人々の健康に真に貢献するイノベーションを創り出す。

株式会社MICIN

代表取締役原 聖吾氏

取締役草間 亮一氏

公開日:2018.07.15

インタビュアー 入江・工藤

臨床医を経てマッキンゼーでコンサルタントを務めた、異色の経歴を持つ原氏が中心となって起ち上げたMICIN。医療の現場に集積されているさまざまな情報を、AIをはじめとするテクノロジーを駆使して高度に活用し、新たなイノベーションを起こすことに挑む注目のスタートアップ企業だ。同社を率いる原氏と、同じくマッキンゼー出身で共同創業者の草間氏に、起業の経緯や事業の優位性、さらには自ら経営を担う醍醐味などについて話をうかがった。

Message

医療現場に潜むデータを活用すれば、革新を起こせる。そんな想いから起業。

工藤
まずはお二方のご経歴を教えていただけますか。
私は東京大学の医学部を卒業し、国立国際医療研究センターでしばらく臨床医を務めた後、医療政策のシンクタンクである日本医療政策機構に移って政策立案に携わりました。その後、スタンフォード大学のビジネススクールへの留学を挟んでマッキンゼーに入社し、主にヘルスケア領域のコンサルティングに従事。こうして臨床、政策、ビジネスという異なる観点から医療に関わり、2015年にこのMICINを創業しました。
草間
私もマッキンゼーの出身です。原がマッキンゼーに中途入社した半年後に新卒で入社しました。私のバックグラウンドは工学で、ヘルスケアとは無縁でしたが、マッキンゼー入社時のトレーニングを担当されていたのがヘルスケア専門のコンサルタントの方で、その先輩に声をかけてもらってヘルスケア領域に携わるように。そして1年目の終盤、あるプロジェクトで日本全国を巡って患者さんにインタビューする機会があり、そこで患者さんの生の声に触れてヘルスケアを担う意義を実感し、この領域を究めていきたいと強く関心を持つようになりました。3年目以降は渡米してマッキンゼーのニュージャージー支社に籍を置き、引き続きヘルスケア領域の案件を主に手がけた後、原に誘われて一緒にこのMICINを起ち上げました。
工藤
原さんはマッキンゼーに在籍していた時から、次のキャリアとして起業を意識されていたのですか。
原 
確かに起業に興味は持っていました。大学時代に東大のアントレプレナー道場にも参加しましたし、また留学先のスタンフォード大学では周りに起業家を志す人たちが多く、私もおのずと触発されました。ただ、自分のキャリアのひとつのオプションとして起業を考えてはいましたが、それだけを念頭に置いていたわけではありません。マッキンゼーでもできることはいろいろあると模索していたところ、「医療×データ」に新しい事業の可能性を強く覚え、それが起業の契機になりました。起業に踏み切ったのは、一緒に事業に挑めるメンバーと巡りあえたことが大きかったですね。草間はもちろん、いまCTOを務める巣籠(悠輔氏)や優秀なエンジニアの塩浜(龍志氏)に出会い、このチームならばきっと面白いことができると考え決断しました。
工藤
いま原さんがおっしゃった「医療×データによる新しい事業の可能性」とは、具体的にどのようなことなのでしょうか。
医療に関する情報は、現状ではいろんなところに散在しています。人が健康な状態から病に罹り、亡くなるまでのさまざまなプロセスにおいて、まだデータ化されていないことが実にたくさんある。それを明らかにすることで、人々がより健康に生きていくことに貢献できると考えたのです。医療費の増大で社会保障制度の維持が限界に近づいていることから、国も医療データの活用や予防医療に本腰を入れ始めました。医療はIT化が遅れており一筋縄では行きませんが、これから間違いなく市場は大きくなるし、挑戦しがいがある領域です。
入江
起業にあたってのチームづくりは非常に重要なことです。原さんが草間さんに声をかけられたのはどうしてですか。
草間は私とはまったくタイプが違うんですね。プロジェクトにあたっても、彼は期限通りに確実に執行していくタイプで、私は少し大雑把な面がある。だから互いに補完しあえるのではないかと。私に対しても歯に衣を着せずに異なる意見を言ってくれますし、たいへんありがたい存在です。
入江
逆に草間さんは、なぜ原さんについていこうと思われたのでしょう。
草間
原はマッキンゼーでも一目置かれる存在でした。コンサルタントとして大きな成果を上げていたのはもちろん、本業以外でもさまざまな活動に取り組んでいたんですね。たとえば東日本大震災の直後、被災された東北地方の中小企業の経営者の方々に向けて、復興支援のためのワークショップを開催するプロジェクトをディレクターと一緒に起ち上げたり、あるいは厚労省の「保険医療2035」のビジョン策定にも携わっていたりと、自身のパッションを追求する姿勢に感銘を受けていました。その後、私は米国に赴任しましたが、たまたま夏休みに帰国した際に原に会い、起業を考えているという話を聞いて……私自身も原と同じように、医療の現場でもっとデータを活用すべきだという課題意識を抱いていて、今後ここから新たなイノベーションが起こりそうだという感覚もあって、一緒に挑戦してみたいと思ったのです。

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医師が持つ暗黙知を言語化・形式化して、患者さんに大きな利益をもたらしたい。

工藤
現在、MICINではどのような事業を営んでいらっしゃるのか、具体的にご説明いただけますか。
大きく2つの事業ドメインを展開しています。ひとつはオンライン診療サービスで、“curon(クロン)”という名称で遠隔診療アプリを開発提供しています。医師と患者の間をつなぐコミュニケーションの仕組みを独自に構築して、いま600件ほどの医療機関のお客様に利用いただいています。そしてもうひとつが、AIを用いた医療向けのデータソリューション事業。医療に関するビッグデータを保有しているプレイヤーと協業し、機械学習や深層学習のテクノロジーを使って、そこから新たな知見を導き出そうとしています。国立がん研究センターや名古屋大学、中部ろうさい病院などの研究機関や病院に加え、大手保険会社などの民間企業とタッグを組んでいます。
工藤
ひとつ目の事業であるオンライン診療サービスに注目されたのは、どのようなお考えからですか。
当初は違う種類のプロダクトを考えていたのですが、ちょうど国の制度が変更され、オンライン診療を推進していこうとするタイミングだったのでこのサービスに着目しました。オンライン診療は、医師と患者のコミュニケーションによって両者のデータセットが溜まっていくんですね。そうした視点からも面白いサービスだと捉えました。
工藤
こうしたオンライン診療サービスを提供しているプレイヤーは他にも存在します。競合と比較して御社のサービスはどこが異なっているのでしょうか。
いまお話しした通り、医師と患者の両側のデータを取得していくという視点で取り組んでいることが大きな違いだと思います。他の多くの企業は、単純なコミュニケーションツールとして提供しており、医療機関から使用料を得るというモデルです。一方、我々はデータを蓄積していく仕組みとして価値があると考えており、この“クロン”の利用にあたって医療機関のお客様からフィーはいただいていません。そもそもの思想や哲学が他社とは異なっています。
工藤
もうひとつの事業であるAIによるデータソリューションも、大きな可能性を秘めたビジネスだと思います。こちらはどのように発展させていくお考えでしょうか。
我々としては、医師の方々が持っている暗黙知、すなわち言語化・形式化されていない知見を明らかにして、診断や治療をサポートするアプリケーションを開発提供していきたいと考えています。臨床の現場ではまだまだ医師の暗黙知に依るところが大きく、そのため診断や治療の質に差が生じ、地域によって最適な診療を受けられないという課題も見受けられます。たとえば、手術が上手いと評判の医師の方は各地にいらっしゃいますが、なぜ上手いのかがナレッジ化されておらず、周囲の弟子が見よう見まねで学んで上達しているのが実情。しかし、それでは狭い枠のなかでしか知見が伝承されず、患者さんが手術を受けられる機会が限定されてしまう。そこに機械学習の技術を駆使して、高いレベルの手術を実現するための技法を解明し、ロボットなども応用して手術を補助するナビゲーションを提供できれば、地域を問わずどこでも質の高い治療を患者さんが受けられるようになる。こうした手術のほかにも、患者さんへの医師のコミュニケーションの取り方とか、あるいは精度の高い診断方法とか、いろんな領域で暗黙知が存在しており、それを形式知化することで医療の進化に貢献できる可能性はいくらでもあると考えています。
工藤
そこに原さんの医師としてのバックグラウンドが強みになっていらっしゃるのですね。
我々が取り組んでいる事業は、日本の医療業界が抱える課題への理解も必要ですし、機械学習や深層学習などのテクノロジーへの理解も必要。どちらも非常に専門性が高いテーマであり、この2つを結びつけるのはなかなか難しい。その点、私は臨床医としての経験があり、草間も前職でヘルスケア領域のコンサルティングを手がけていたので、医療業界のニーズには通じています。また、巣籠や塩浜はソフトウェア技術としてAIをはじめとする先端テクノロジーを究めている。医療現場が解決したいことと、AIで実現したいことを、究めて高いレベルで融合させて実現できるのが我々のチームであり、それは他社にはない当社ならではの大きな強みです。

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コンサルティングでは得られなかった醍醐味をいま、大いに堪能している。

工藤
お二方はコンサルタントから起業され、それまでの経営支援から当事者として経営を担うことになったわけですが、当初は何かギャップをお感じになられましたか。
まったく感覚が違いました。サービスを自ら開発し、最初のひとつをお客様に使っていただくまでの過程がこれほど大変なことだとは思いませんでした。そして事業を拡大していくためには、必要な人材を集めて組織を作っていくことも重要。戦略コンサルタントとして机上で絵を描くのと、自分でそれを実現していくのはやはり次元が違う。私にとっては大きなチャレンジでしたが、逆に経験のないことばかりで新鮮でしたね。
草間
私は新卒でマッキンゼーに入社したので、それまで営業したことがありませんでした。でも、ここでは自社のサービスを導入していただけるドクターを、自らの足で開拓していかければならない。どうすればドクターと接点を持って話を聞いていただけるようになるのか、試行錯誤を繰り返しながら実践。大変でしたが本当にいい経験になりました。また、スタートアップにおいては“プロダクト・マーケット・フィット”が重要だとよく言われますが、それを達成するためのユーザー側の視点を得る機会としても営業活動は不可欠だとあらためて認識しました。苦労の連続ですが、でもコンサルティングと比べると事業の手触り感がまったく違いますね。
工藤
一方で、コンサルタントとしての経験がいま活きている部分はございますか。
コンサルタントは“ファクト”と“ロジック”をベースに議論を行います。やはり限られた情報のなかでは、そうした思考で結論を導き出すのが有効であり、当社でも意思決定する際はファクトとロジックを重んじています。ただ、スタートアップ時にはロジカルに考えると達成するのが難しい目標もある。それでも、絶対に実現したいという思いを持ってチームを巻き込んでいくという、ロジックを超えた熱量も大切にしたいと思っています。かつてアポロ計画で月に人間を送るという目標を掲げた時も、おそらく実現できる根拠は何もなかったはず。それでも人類が月面に立てたのは、理屈を超えた情熱があったからこそ。ファクトとロシックの積み上げだけでは果たせないことに挑戦していくのはコンサルティングとは大きく異なり、そこにスタートアップの醍醐味があると感じています。
入江
いまコンサルタントとして活躍されている方々のなかには、次のキャリアを探っている人もたくさんいらっしゃると思います。そんなみなさんに向けて、御社に参画する意義や魅力をお伝えいただけますでしょうか。
草間
私よりも若い層のコンサルタントたちは起業志向の人間が多く、それは社会のためにもたいへん良いことだと思っています。そうした方々にとって当社は非常に有意義な経験ができる場だと思います。経営に近いところで自ら事業を創り出せる機会があり、それは将来起業する時の大きな糧になる。当社はこれから急速に事業と組織が拡大していきます。その成長過程で直面する困難を経験することで、ご自身が起業される時のアクションのクオリティも変わると思います。
先ほどもお話しした通り、当社は基本的にファクトとロジックで意思決定していますので、コンサルタント出身者とは相性がいいと思います。また、我々のチームにはさまざまな分野のプロフェッショナルが集っており、レベルの高い多様な人材と連携しながら難しい課題に挑めるのも、ここに身を置く大きな魅力だと思います。ただ、無から有を生み出すのはけっして楽ではありません。まったく整備されていない環境のなかで、ゼロから何かを創り上げていくことを楽しめる人に仲間になってほしいと思っています。いま我々が手がけるデータソリューション事業は、新たなビジネスにつながるパイプラインをたくさん抱えています。協業している外部のパートナーの方々からも、その点を高く評価いただいており、医療に関する価値あるデータを有する企業として認知され、新たなオファーも続々と寄せられています。このアセットを基に、社会に大きな影響を与える事業を自ら創り出し、その手で育てていくことがいくらでもできる。そんなチャレンジをぜひここで堪能していただきたいと思っています。

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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