本当に価値のあるサービスだけを手掛けたい。社会を変えるには、発言力、レピュテーション、キャッシュも必要。それを得るには最大バリューを出し続けることに尽きる。株式会社ユーグレナ 永田 暁彦氏

Vol.48

本当に価値のあるサービスだけを手掛けたい。社会を変えるには、発言力、レピュテーション、キャッシュも必要。それを得るには最大バリューを出し続けることに尽きる。

株式会社ユーグレナ

取締役副社長COO
株式会社ユーグレナインベストメント 代表取締役社長 リアルテックファンド 代表
永田 暁彦氏

公開日:2019.05.13

インタビュアー 入江

ミドリムシ(学名:ユーグレナ)で社会解決に挑む、いま世間で注目を集めるバイオテクノロジー企業のユーグレナ。プライベートエクイティファンドから同社に転身し、現在副社長として経営をリードしているのが永田暁彦氏だ。エネルギッシュに事業に挑む永田氏を突き動かかしているものは何か、そしてこれからユーグレナを通して社会で何を成し遂げていこうとしているのか、さらに深くお話をうかがった。

Message

“Give, Give , Give”でいい。その結果が自分の取り組みたい課題の解決に繋がる。

入江
先ほど、永田さんの行動原理は「義理」と「責任」であり、生きていく上で「徳指数」を大切にされているとうかがいました。永田さんのそうしたスタンスは、どのように築かれてきたのでしょうか。
永田
「義理」と「責任」を重んじるのは、私が育った環境によるところが大きいですね。私の両親はソーシャルワーカーとして知的障害者の方々の支援に携わっていました。その仕事にとても意義を感じていたようで、父親は福祉施設の管理者を務められる資格を持っていたものの、マネジメント側に立つと現場に関われないと敢えて昇格を避けていました。よって経済的に裕福ではない、はっきり言って貧乏な家庭だったんですね。でも父は「お金がない」などという不平不満は一切口にせず、空いた時間にいろいろな仕事を掛け持ちして、私に高等教育を受けさせてくれた。本当に感謝していて、絶対に両親に恩返したいと思って生きてきましたし、それが私のすべての行動に影響しているように思います。
入江
そうした家庭環境が、いまの永田さんを形作られたのですね。
永田
「徳指数」を意識し始めたのは最近のことです。私は2008年からユーグレナの経営に携わってきましたが、他の企業の経営者とあまり関わってこなかったんですね。でも先日、いろんな業界の経営者の方々が集うカンファレンスに参加する機会があり、自分が取り組んできた事業や戦略についてお話しすると、周囲から「凄いことやっているじゃないか」と高く評価されて……私は「自分が関わった人への義理と責任を果たしたい」という思いで仕事に臨んできたわけですが、それが認められて「これでいいんだ」と。“Give & Take”ではなく“Give, Give , Give”でいいのだと、その時あらためて強く感じたんですね。
入江
“Give, Give , Give”でいこうというのは、永田さんらしい表現ですね。
永田
「義理」と「責任」を果たして誰かを幸せにすると、その数だけ将来いいことがある。私はこれまでの経験の中で、本当にそれを実感しています。それが「徳指数」であり、ポイントを溜めて指数が高くなると、自分が何とかしたいと思う課題を解決する力もついていく。たとえば「ポケットマルシェ」という全国の農家や漁師の方々とスマホで直接コミュニ―ケーションを取って食材を購入できるサービスを展開している会社の社外取締役をしているのですが、資金調達を図った際、「永田さんが関わるのであればお金を出しますよ」と言ってくださる出資者の方がいらっしゃりました。とてもありがたいことで、そしてそれも「徳指数」を上げたおかげだと思うんですね。そして調達した資金を基にこのサービスが進化すれば、私が問題意識を持っていた日本の一次産業の生産者が抱える課題を解決できる。
入江
永田さんとユーグレナの関係も“Give, Give , Give”で成り立っているのでしょうか。
永田
報酬面ではそうですね。出雲に「ストックオプションを寄こせ」と言ったことは一度もありませんし、ファイナンスでお金を集めることには自信がありますが、自分自身がお金を儲けることには興味がない。それよりも、集めたお金に遠心力を利かせて、社会全体に影響を与えていきたいのです。

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良いものを作って消費者に正しく売る。既得権益が支配するいまの社会を変えたい。

入江
永田さんはこれからユーグレナをどんな会社にしたいとお考えですか。
永田
私がよく言うのは「売上が10倍になると社会が10倍良くなる会社にしたい」ということ。世の中の多くの会社は利益の一部を社会に還元するだけですが、ユーグレナは売上の伸びがダイレクトに社会に繋がる会社でありたい。我々が開発するバイオ燃料がいまの100倍売れたら、社会に対していまの100倍インパクトがあると思うんです。また、ユーグレナは食品や化粧品も手がけていますが、現状、日本ではまだまだこの領域で「まがいもの」も正直多い。日本の健康食品マーケットは現在1兆3000億円ほどで、トップ企業の売上高が約1000億で全体の1割にも満たないんです。そして売上の多寡は広告宣伝費に相関していて「まがいもの」が公然と売られている。一方、米国ではトップ5の企業で市場の7割を占めており、売上高が研究開発費に相関しているんですね。明らかに米国のほうが健全であり、私はユーグレナの事業を通してこうした日本のいまのマーケットを変えていきたいのです。
入江
確かに、いまの日本の健康関連マーケットは不健全な印象もありますね。
永田
やや乱暴な言い方ですが、いまの消費者はマーケティングにお金を払わされ過ぎていると思うんです。ユーグレナは数年前、遺伝子解析サービスの「ジーンクエスト」をグループ会社化しましたが、それも消費者の方々にとって正しいビジネスをしたいという思いから。その人の遺伝子情報を解析し、すべてエビデンスが整っている状態で健康に役立つサービスを提供したい。本当にお金を払う価値のあるサービスだけを私は手がけたいのです。
入江
永田さんの「ものづくり」に対する確固たる志がうかがえます。
永田
良いものを作って、それが正しく売れる世界にしたいんです。意味のないマーケティングが蔓延する世界から脱したい。だから私は商品開発の現場にも口を出しますし、優れたエビデンスがないものは商品化しない。現場の社員からは「商品を出さないと売上が下がる」と心配する声も寄せられますが、私はそれならそれでいいと思っています。健康関連だけではなく、バイオ燃料もそうですね。日本はバイオ燃料の導入が遅れているのですが、その背景には既得権益の存在がある。そうした状況には怒りすら覚えますし、日本を見渡すと根本から変革していかなければならないことがたくさんある。それをひとつひとつ変えていくことが、自分の子供に対する責任だと思っています。
入江
ここでも永田さんの口から「責任」という言葉が出ました。いま永田さんがさまざまな事業でチャレンジしているのは、我が子への責任を果たしたいという思いもあるのですね。
永田
そのためにも正しい意味での「権力」が欲しいですね。権力とは発言力であり、レピュテーションであり、キャッシュフローであり、それがあれば社会を変えられる。かつて成毛さんが「世界は一部の人間が決めている」とおっしゃっていましたが、その一部の人間になって自分のためではなく、社会のために権力を行使したい。インターネットの世界なら、自由な発想と資金力があれば新しい仕組みを比較的容易にもたらせますが、我々が挑んでいるのは課題解決のための物理的な要件がたくさんあり、しかも既得権益が立ち塞がっているリアルな世界。でもアメリカでは、イーロン・マスクが地下にトンネルを掘って新しい交通システムを作ろうとしているじゃないですか。交通なんて既得権益の塊ですが、ベンチャーでもそれを崩すことはできるんです。私もぜひ挑んでいきたいですね。

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やりたいことは見つけるのではなく「決める」。それをやり切れば面白い人生になる。

入江
ユーグレナをさらに発展させていくために、いま新しい人材を求めていらっしゃるとのことですが、どんな方に仲間になっていただきたいですか。
永田
欲を言えば、これから我々が進もうとしている領域で、我々ができないことができる人がいいですね。あと、自分が置かれている現状の業界に疑問を持ち、それを変えていきたいと思うもなかなかうまくいかない、という方がいらっしゃればぜひユーグレナに参画してほしいですね。我々はベンチャーですが、ファイナンス能力もありますし、レピュテーションも高いので社会を変えられるポテンシャルが大いにある。また、ユーグレナで活躍するためには、変化に対応できることが重要。朝令暮改で3カ月ごとに戦略が変わり、経営陣がどんどんパラダイムシフトを起こしていくので、それを楽しめるような方に来ていただきたいですね。
入江
そもそも、なぜ永田さんはそこまで「社会を変える」ことを強く志向されていらっしゃるのでしょうか。
永田
そうはいっても、やはり自分は恵まれていると思うんですよ。先ほど私の実家は貧乏だとお話ししましたが、大学に進学しているのは全人口の5%ほどで、私はその中に入っている。そう考えると本当に幸せな環境で生きていると思いますし、いわゆる上位のエリート同士でキャリアアップや報酬を競うのは、なんて意味のないことだろうと感じるんですね。だから恵まれていない人たちのために、私は自分の力を使いたい。あと、何かに熱中して生きていかないと人生つまらないじゃないですか。そして、せっかくなら人に喜んでもらえるようなことに打ち込みたい。誰かから何かを搾取するような仕事には、とてもじゃないけど私は熱中できない。そう言えば、私は中学生の時の作文に「死ぬ時にガッツポーズしたい」と書いた覚えがあるのですが、まさにそれがいまの私の偽らざる気持ちで、最期に振り返った時に多くの人から認められて感謝されるような人生にしたいですね。
入江
ご自身の人生に対して明確な信念をお持ちの永田さんを羨ましく思います。
永田
よく「自分の人生を賭けられるものが見つからない」という方がいらっしゃいますが、それは見つけるようなものではなく、自分で「決める」ものだと思うんですね。世の中に絶対的な正義なんてないんですよ。貧困問題を解決したいというのも、エネルギー問題を解決したいというのも、その人にとっての正義に過ぎない。でも、それを信じて行動することが重要なんじゃないかと。だから、自分が正しいと思うのはこれだと決めて、そのなかで最善を尽くしていく。そして決めたからには必ずやり切る。そのほうがきっと面白い人生になると私は思いますね。
入江
やりたいことをあれこれ考えるよりも、とにかく決断して行動したほうがいいというわけですね。では最後に、今後の進路を考えている読者のみなさんに向けて何かアドバイスをいただけますでしょうか。
永田
「キャリア」を大切にしすぎないほうがいいと思いますね。別に会社を明日クビになっても構わない、というぐらいの心持ちで臨んだほうがいい(笑)。たとえば超高級車を運転するとして、普通なら「ぶつけたらどうしよう?」とビビりながらハンドルを握ると思うんですが、このクルマが壊れても大きな問題ではないと思えば大胆に操縦できるじゃないですか。私もいまユーグレナを同じような感覚で経営していて、自分が正しいと思う道を忖度せずに進み、結果、株主から怒られて副社長のポジションを失ったとしても、それはそれで、正しいと思うことを精一杯やっていきたい。もしも会社を辞することになったとしてもたぶんこれまでの徳指数が効いて、誰かがまた新しい機会を与えてくれるんじゃないかとも思いますですからみなさんも、いま取り組んでいる仕事でカウンターパートに対して最大限のバリューを出し続けていれば、徳指数がおのずと積み上がって「キャリア」なんて特段意識しなくても生きていけると思います。

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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