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Vol.64

ハードウェア・ソフトウェア共に内製し、顧客現場を熟知した当社だからこそ、IT×グローバル軸で「買い物の未来を変える」という前人未到の挑戦ができる。

株式会社スマートショッピング

代表取締役林英俊氏

執行役員CSO小島隼氏

公開日:2022.05.12

インタビュアー 入江・永田

最先端のIoTプロダクトで買い物・消費の未来を創るというビジョンを掲げ、2014年に創業した株式会社スマートショッピング。IoT重量計「スマートマット」を用いて在庫を可視化するハードウェアと在庫管理・発注を行うプラットフォームを開発し、プロダクトの独自性と現場の課題を熟知している強みを武器にグローバル展開を見据えており、注目の企業だ。同社代表取締役である林英俊氏と、執行役員CSOの小島隼氏のお二方にお話を伺った。

Message

身近な人の笑顔を増やす仕事が好きだと気づき、買い物の未来を変えるべく起業を決意。

永田
まず初めに、林さんのこれまでのキャリアについてお聞かせください。
私はインターネットが大好きで、大学・大学院と6年間コンピューターサイエンスを専攻していましたが、自分がWordを書くよりもプログラムを書くのが速いような人間が周囲に多数存在していて、この分野で超一流になるのは大変だなと(笑)。

ただ、そういう人たちはビジネス視点が無いことも多く、テクノロジーとビジネスの両方をハイブリッドでできる人材がこれから求められるだろうと考え、新卒でローランド・ベルガーを選択しました。

MBA取得期間も含めて5~6年ほど在籍した後、やっぱりインターネットが好きだなと思ってアマゾンに移り、消費財の事業部でプロダクトマネージャーのような役割で新サービスを立ち上げ、その後事業を伸ばすマーケティングに近い領域も経験しました。そこで買い物の未来について考えた末、2014年に共同代表の志賀と起業して当社を設立しました。
永田
買い物の未来に興味を持たれるようになったきっかけは何だったのですか?
コンサルタント時代は一本数千万規模の案件を一部のクローズドな人達の中で担当していましたが、アマゾンではシャンプー等の数百円の商品を多くの人に売るという薄利多売のビジネスに関わるようになり、そうすると身の周りの人から声をかけられることが増えて、身近で笑顔がたくさんあるビジネスは単純に好きだと感じられて面白いなと思いましたね。

それから、コンサルタント時代は人に仕事の内容を言えませんでしたが、「シャンプーを安く便利に買ってもらうための仕事をしている」というのは分かりやすいなと。日常に関するビジネスの中でも、特にショッピングが面白いなと感じたことが出発点でした。
永田
起業することにはリスクもあったかと思いますが、そこに怖さは無かったですか?
起業の怖さは全く無かったですね。前職や前々職で一緒に仕事をしていた方々とは、僕が退職した後もずっとお付き合いが続いていて、「いざとなったらいつでも戻ってくれば良い」という有難い言葉もいただいていたので、もし起業がうまくいかなかった場合でも生活に困ることは無いだろうと思えたことが大きかったです。
永田
そうだったのですね。続いて、小島さんのこれまでのご経歴もお聞かせください。
小島
私は新卒でローランド・ベルガーに入社し、約6年弱在籍した後に楽天の新規事業立ち上げに参画しました。その後、創業間もない旅行系スタートアップで2年半ほど営業から資金調達、採用にカスタマーサクセス等、コードを書く以外はほぼ何でもやるという経験を積んだ後、縁あって知り合った林さんに誘われて当社にジョインしました。
永田
最終的に貴社にジョインすることを決められたのは、どういう点だったのですか?
小島
1つはグローバルで勝負できるプロダクトだということですね。もう1つは、これまで人や組織の問題で苦労してきた経験から、問題解決とはプロダクトや事業だけではなく、人をしっかり動かしていくことが経営の根本であると実感していたので、林から組織について任せたいと言われた時に、「まさに自分がやりたいことだ」とジョインを決意しました。

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ビジョンを実現するために2度のピボットを決断。IT×グローバルで世界に挑んでゆく。

永田
貴社の事業について、簡単にご説明をいただけますでしょうか?
当社はモノの流れに注目していて、「モノが置かれて保管されて使われる」という消耗材の流れを便利にしたいというビジョンで事業を展開しています。具体的には、IoT重量計「スマートマット」の上にモノが置かれて、その重さでモノの残量が分かることにより、モノが何個残っていると人が数える必要が無くなり、残量が減ってきたら自動で買うこともできる、更にはどう消費されてきたのかというデータが全て可視化されるというサービスです。今は約60名規模であり、シリーズBのフェーズの企業です。
永田
創業当時からここに至るまでには、色々と変遷があったのですよね。
当初は「買い物を任せたくなるのはどんな人か」と考えて、「どこの店が安くて、何がお勧めか」を知っていて、自分の代わりに買ってくれる人というイメージで価格比較サイトを立ち上げたんですね。ただ、そこで「買う」となった段階で、タイミングを計らないといけないなという話になって。

ソフトウェアで購買履歴データを分析すれば次にいつ欲しいのか分かるのではないかと試行錯誤したのですが、「コンビニでつまみ食いをしてしまった」「安かったから」「たまたまスーパーに寄ったので買った」という場合は購買履歴に残らずタイミングが当たらなくて、これだと信頼してもらえないので、モノの残量を測るしかないという発想に至りました。

とは言え、ハードウェアは誰もやったことが無く、お金も無かったので、本当にやるのか非常に迷いました。それでも「買い物の未来を変えるんだ」という大義が明確にあり、これだけ頑張ってもタイミングだけはどうにもならないから、もうやるしかないなと腹を決めて、補助金も必死に見つけて2年ほどかけてハードウェアができました。

そこでテストマーケティングを重ねていくと、我々が元々ユーザーとして想定していた一般の消費者ではなく、飲食店などの方から「これをうちで使いたい!」と声がかかって。一般家庭だと消耗品の買い物の頻度は1ヶ月に1回程度である一方で、飲食店では週1~2回という頻度で購入しているので、より在庫管理の悩みは深い。

それならBtoBビジネスのほうが絶対良いなということで、ピボットして今に至ります。初めはピュアにソフトウェアでやろうと思っていたのに、ビジョンを達成するにはどうしてもハードウェアが必要ということで勇気を出してハードウェアにピボットし、それをやると実は別のお客様がもっと欲しがっていることに気づいて再度ピボットしたという、2回の軌道修正がありました。
永田
事業の市場規模としては、どれくらいになるとお考えでしょうか?
日本だけで1億台は見込めると考えており、市場規模は兆円の規模になると思っています。モノの流れや在庫管理は世界中どこの国でもあまり変わらないものであり、在庫数をチェックして買い物するということをやらない人はいないと思うので、グローバルでも汎用性がある。それから、業種も問わないところがあり、意外な業種からよく声をかけていただくんですね。

例えば、サンプルの店頭配布に際して「どこのお店で何時にサンプルが取られていったのか」というデータがマーケティング上非常に貴重なのでスマートマットを置きたいというニーズがあったり、ビュッフェでは「何曜日にどのメニューがどれだけ消費されているのか」というデータが全然残らないのでフードロスが大量に出てしまっていた中、スマートマットの導入で廃棄量が半分に減少できたりというケースに遭遇する中で、我々が想定していた枠を大きく超えたところで需要があると実感しています。
永田
IoT重量計というプロダクトの参入障壁の高さという点では、いかがでしょうか?
1つは「モノをどう買うか、どう保管するか」というアルゴリズムに難しさがあり、買い物をする人の心理やニーズは意外と理解されていないと思っています。モノの保管に関しても、実はモノ単体ではなく容器がついているとか、瓶ビールの容器を複数積み上げて保管しているとか、更にはそこに中仕切りがある等、皆さん多様な置き方をされているんですね。

お客様の個々のニーズを深く理解していることが当社の大きな強みであり、そのニーズに泥臭く対応するカスタマーサクセス部隊をつくって、プロダクトの中の見えないアルゴリズムに反映しているところは地味ながら強い点かと思います。

もう1つは、ハードウェアとソフトウェア両方の内製をしている点です。

IoTのビジネスは、見た目だけ似たようなものをつくれば良いのではと思われやすいのですが、実はクラウドとハードウェアの中の頭脳が対話しながら双方向で良い顧客体験をつくるということが重要です。

ソフトウェアが強いからハードウェアは外注するとか、逆にハードウェアは立派につくるけどソフトウェアが使いにくいということが往々にして起きていますが、当社ではソフトウェアとハードウェアの両方を内製しているので、他社が容易に模倣できないのではと思います。この2点により、クオリティの高いプロダクトが実現できていると考えています。
永田
貴社の今後のビジョンとしては、どのようなことを描いていらっしゃいますか?
やはり自分でビジネスをやるからには「IT×グローバル」の領域で旗を立てたいと思っているので、海外という軸は大きく考えていますね。また、ハードウェアとしても我々は板状のものにこだわってはいないので、他にもモノの流れが把握できるようなプロダクトに挑戦していきたいと思っています。

現状では、1つの会社の1ヵ所でモノの流れを捉えているのですが、将来的には原材料が仕掛品に繋がって、完成品、卸と複数の多段階のモノの流れに繋がっていくと、今まで見えなかったものが見えていくようになり、社会全体がジャストインタイムになるという世界観をグローバルで実現したいと考えています。

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戦略ファーム出身の経営メンバーが多く、コンサルタントの問題解決能力が活きる環境。

永田
コンサルタントの方にとって、貴社で働く魅力は何でしょうか?
小島
実業としてプロダクトや組織に触れていく経験は、絶対良いと思います。他の事業会社と差別化できる点で言えば、コンサルタントのバックグラウンドを持っている方は当社で非常に働きやすいと思うんですね。代表をはじめ経営陣にプロフェッショナルファームの出身者が多く、問題解決の方法論や仕事のやり方が社内で浸透しています。

例えば論点ベースで考えるとか、文章を構造化して書くことはコンサルタントの方であれば慣れているのでスピーディーにできますが、事業会社に行った時にそれができる人は多くはない。その点で、当社はコミュニケーションも取りやすく、バリューも出しやすい環境かと思います。
当社では様々なポジションで採用ニーズがあるのですが、そのすべてに共通する要件として「問題解決能力」が挙げられます。まず、カスタマーサクセスチームはお客様の1社1社に向き合い、どうやってモノを買って保管するのかを変革していくので、まさに問題解決の塊なんですね。それから、プロダクトをつくるときも広い観点でお客さんの課題を解くという問題解決だと捉えています。

更に、事業レベルでの問題解決もありますし、小島が管掌している部署では組織・会社レベルの問題解決に取り組んでいます。また、小島からお伝えした通り、戦略ファーム出身の役員が4人もいるのはスタートアップでは珍しいかと思います。問題解決能力を色濃く大事にしていこうという意識もあるので、コンサルタント出身の方にとって当社は働きやすい環境なのではないかなと考えています。
入江
今後入社されるコンサルタントの方のポジション機会としては、いかがでしょうか?
事業開発のポジションに加えて、オペレーションやグローバルSCMのヘッドのポジションなどはこれから採用しなければいけないので、CxOに近い裁量が持てるポジションは少なくとも4~5つほど空いている状況です。

そのポジションが充足した後に関して言えば、当社の組織規模が今後拡大していく中で、現在の60名規模の組織から300名規模くらいに成長した暁には恐らくマルチプロダクトを展開していて事業が分かれると思うので、それに伴って同様のポジションニーズが新たに生まれるものと予測しています。
永田
最後に、ポストコンサルの方に向けてキャリアアドバイスをぜひお願いします。
小島
「とりあえず、ご飯に行きましょう」ですね。私もコンサルタント時代に、色々な方に直接お話を聞かないとその企業のことは分からないなと思っていました。コンサルタントの皆さんは忙しいですし、リサーチも得意なのでネットで情報収集することが多いと思いますが、フットワーク軽く直接色々な方に話を聞きに行くことをお勧めしたいです。私もコンサルタント出身として、自分の体験なども純粋にお伝えしたいと思いますので、もちろん当社へ誘いたい気持ちもありますが(笑)、まずはお気軽にお会いしましょう。
私は、「早く飛び出しましょう」ということですね。もちろんコンサルタントの経験が事業会社で活きる部分もありますが、50%くらいは事業会社やスタートアップでのみ経験できることだと思います。コンサルタントとしてパートナーを目指すという方は別として、「いつかは事業会社へ」と考えていらっしゃる方が多いので、「いずれは」と思うのであればあまりコンサル業界に長居し過ぎずに、早めに事業会社へ移った方が良いと思います。


構成:神田 昭子
撮影:櫻井 健司

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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