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Vol.67

個人向けの民間教育ニーズが加速する時代に、Gakken LEAPであればスピーディーに必要な新プロダクトを生み出していける。コンサルタント経験を活かして事業会社でインパクトを出したいなら、ぜひ当社で挑戦して欲しい。

株式会社Gakken LEAP

代表取締役CEO(株式会社学研ホールディングス 上席執行役員)細谷仁詩氏

公開日:2023.02.13

インタビュアー 永田

教育・福祉関連市場における非連続的成長モデルの創出を目指し、株式会社学研ホールディングスのデジタル事業本部が独立して2021年12月に誕生した株式会社Gakken LEAP。同社の代表取締役社長CEOを務める細谷仁詩氏に、これまでのキャリアの歩みと同社で働くことの魅力についてお話を伺った。

Message

強烈な挫折感を何度も味わいながらも、逃げずに試練を乗り越えてきたマッキンゼー時代。

永田
まず初めに、細谷さんのこれまでのキャリアについてお聞かせいただけますか?
細谷
私は大学卒業後、2008年にJPモルガン証券に入社しました。リーマンショックの影響から急激に同期の数も減少した中、従来よりも様々な機会を与えていただき、大手の航空会社や運輸系企業、通信会社などのカバレッジを担当するという貴重な経験を5年ほど積みました。

一方で、証券アナリストとして当時の私は、顧客に対して企業価値を高めるために、コスト削減や売上アップの必要性を指摘していたものの、当たり前の正論を伝えるだけでHOW論や実態がまったくわかっていないということに強い違和感を覚えていました。若いうちに実務に近いところで、かつ様々な業界、ファンクションの知識、経験を短期間で体得するにはコンサルティングが良いのではないかと考え、自己応募してご縁のあったマッキンゼー・アンド・カンパニー(※以下、マッキンゼー)に転職しました。

マッキンゼーでは、まず前職で凝り固まったプライドや価値観をアンラーンするようにと言われて、慣れるまでの半年間は苦労しました。どうやってクライアントのコスト削減や企業価値の向上をすれば良いのかもまったく知識が無い状態なので、社内の人達に聞くしかないのですが、その聞き方もわからない(笑)。

厳しいプロジェクトを経験する中で何度も辞めようと思う場面がありましたが、1つ1つのマイルストーンの中でマッキンゼーは様々な試練を与えてくるため、その度に一度は挫けるものの、プロジェクトのゴールを目指して何とか頑張ってこられたと思います。得意領域である戦略コーポレートファイナンスを軸としながらも、マーケティングセールスやコスト削減のオペレーションなど幅広い領域のプロジェクト経験を積み、アソシエイトから入社6年でパートナーに昇進しました。

現職に移った経緯としては、ある方のご紹介で社長の宮原とカジュアルに会う場を設けていただいたのがきっかけでした。今まで自分が知らなかった業界であり、創業家でないにも関わらず、宮原のような12年間上場企業の社長を務めている方に初めて出会い、そのストーリーを聞いて非常に興味を持ちました。その後、ゴルフや会食などを重ねて自然な流れで参画することになりました。
永田
マッキンゼー時代、何度も辞めようと思いながらも続けられたのはなぜですか?
細谷
課題解決が困難で、タイムリミットも厳しいプロジェクトでは、正直「逃げたい」と思ったこともありました。某大手企業のターンアラウンドプロジェクトに参画したときは、非常に殺気立った現場でハードな日々が続き、周囲のメンバーも続々と離脱していく中、私も精神的に追い詰められたことがありました。

また、経営が厳しい状況にあった別の日系大手企業のプロジェクトを担当した時は、職位も上がっていたため、数兆円規模の大企業のCEO、CFOを前にして、当たり前以上のことがいえるか、何度も挫折を味わい試行錯誤しながら、自問自答を繰り返しました。

それでも逃げずに続けられたのは、マッキンゼーの仲間の支えと、他では味わえないスピードで達成感と自己成長を実感できたからだと思います。マッキンゼーでは「自分にはできないことができる」「自分には言えないことが言える」ロールモデルを社内外に多く恵まれていました。ロールモデルから常に新しいことを吸収していくことは刺激的で充実していました。

一方で、経験を積んでいくうちに、ある時から外で、実際に自分がドライバーズシートに座って、事業と人に責任をもって学びたいと実感し、自分のライフステージのなかで今120%頑張る先をコンサルティングにするのか、事業会社にするのか、深く考えるようになりました。
永田
マッキンゼーのパートナーから現職へ移るというのは、相当なご決断だったのではないでしょうか。細谷さんのお話から、自ら目標を設定してやり切ることの覚悟を感じます。
細谷
もちろん迷いはありました。マッキンゼーで得られる学び、達成感、充実以上のものを他の環境で得られることが想像できなかった。だからこそ、現職に入る前は、これでもかというくらい、宮原はじめ現職の経営陣と会話を重ねました。そのなかで、自分がマッキンゼーのときよりも組織と事業に対する責任を得られ、ストレッチした環境のなか、成長ができる確信が得られました。また、その裏側にある社会的なインパクトも具体的に想像することができました。

また、決断した当時は34才だったので、年齢的な若さもありました。40代までにまだ5年ほどあるので、このタイミングで思い切って挑戦してみても良いかなと思えたことも大きかったですね。

目標設定に関しては、本当に日々の活動、意思決定が目標を実現するためのことなのか、自分に真摯に投げかける癖が必要だと思います。私自身も自分に甘いところがあるとの自覚を持っています。

そのため、自らの意思決定に対して「これは目標に沿ったものだ、と過剰に正当化してしまっていないか」というセルフチェックが重要です。あらゆる場面で、自ら設定した目標をやり切る覚悟ができていない人は、自身の意思決定を過剰に正当化する傾向があるように感じます。

特にコンサルタントは高い思考力を備えており、自分に対するコミュニケーションにも長けているが故に、ともすれば自身を必要以上に甘やかしてしまいがちです。それが本人にとって不幸な決断につながることもありますので、正当化し過ぎていないかどうかのチェックを怠らないようにすることを私自身が意思決定をする際に最も大切にしています。

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必要なことを議論抜きでスピーディーに実現するために、Gakken LEAPは誕生した。

永田
細谷さんの現職でのお立場やミッションについて教えてください。
細谷
現在は、10年20年後の学研グループにとって最もインパクトがでると信じる領域に私はフォーカスしています。

まず、1つ目の役割としては学研ホールディングスの上席執行役員としてDX領域を管掌しており、全社の長期的な成長に向けて次の中期経営計画につながるパイプラインをつくることを推進しています。特に重視している要素としては、デジタルをはじめとした近代的なサービス構築、ポートフォリオの合理化、「本気のグローバル化」です。

次に、2つ目の役割として2021年12月に立ち上げたGakken LEAPの代表取締役CEOを務めています。ここはデジタル集団としての位置付け以上に、新しいサービス創造をリードし、学研グループの挑戦の矛先になることです。Gakken Leapがやるべきだと判断したことを何の議論もなくスピーディーに実行していけるという点が大きな突破力となっています。現在は、約30名の組織体制で運営しています。

更には、3つ目の役割として、当社では新たな面白いサービスを社外で見つけてきてM&Aを積極的に行っているため、この1年半の間にM&Aにて当社に参画した企業の取締役を務めています。
永田
今の教育業界が抱えている課題と、それに対する貴社の方策にはどのようなものがありますか?
細谷
教育は大きく公教育・塾などサードプレイスでの教育・家庭学習の3つに分類されるのですが、その中で圧倒的に時間をもっているのが公教育です。しかし、現代の子供たちが将来大人になって成功するための教育が公教育だけで充分間に合うかと言うと、そうではないという課題があります。

こどもの得意不得意・興味・進度にあわせた学習提供、およびグローバルで活躍していくために必須な英語やプログラミング、コミュニケーション能力はなかなか公教育で賄いきるのは難しい。それでは、将来を見据えて小学生の時期から何をすれば良いのかと考えると、より一層民間教育が加速化していくと考えています。

公教育以外の領域において、学研グループが民間教育の立場から新しいサービスを生み出し続けていくことが従来よりも求められていると思います。その1つが書籍であり、小ロットでも多様なニーズに応えられるのが書籍の利点であるため、今後も書籍事業は継続していきます。

ただ、その他に教科学習(英語・数学・国語などの継続学習)のためのサービスも必要となりますし、大人の教育に関しても「本当に有意義なリスキリングとは何か」を再定義することを当社で手掛けていきたい考えです。
永田
競合企業も出てきているかと思いますが、貴社の競合優位性という観点ではいかがでしょうか?
細谷
確かに書店の中での図鑑等の書籍における他社との競合は存在しますが、そこから一歩出れば競合というよりもコラボレーターの要素が強いというのが実情です。

例えば、当社の学習塾ではatama plusさんやモノグサさんのプロダクトを活用させていただいています。すべてのニーズを満たすプロダクトを自社のみで実現するのは難しくなってきており、他社のプロダクトとコラボレーションしながら取り入れることで当社の目指すサービスが完結すると考えています。

使用するプロダクトが自社製かどうかということよりも、提供するサービスがユーザーの方々に継続・定着をしていくことの方が大事だという目線は恐らく同業他社の皆さんもお持ちではないかと思います。

当社に限らず、教育業界の各社は今ある市場規模のパイがすべてだとは思っていません。現代の子供たちは、1日の中で「ゲーム」「友達と遊ぶ」「食事」「習い事」「スポーツ」等の様々な時間に追われています。その中で、果たしてどれだけ「勉強」に意味を感じるのかということです。今は自主学習の時間としてたとえば毎日20分しか勉強していないとすれば、そのわずか20分の時間を競合他社と奪い合うのではなく、お互いにコラボレーションしながらより学習の効果を感じてもらえるようにしていこうという発想をしてきたい。

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コンサルタントが学研で出せるインパクトは想像以上。「卒業」ではなく、前向きな挑戦を。

永田
今後、貴社が目指していきたいことは何でしょうか?
細谷
お客様がワクワク・ドキドキするプロダクトのポートフォリオを確立していくことです。従来、当社ではホビーなど1つの領域において書籍を数十冊も出すことで多様化を実現しようとしていましたが、今後はそれだけに留まらず、教育の中で学び方や場所の制約を受けないようなプロダクトを開発していく必要があります。

それが1つのプロダクトで完結されるものなのか、様々な複数のプロダクトになるのかは現時点では未知数ですが、「学研教室に行きましょう」と言うだけではお子さんに来ていただけないケースも増えてきています。「学研教室が自宅の近くに無いために通えない」「そもそも学研教室に行きたくない」等の様々なお子さんがおられますので、個別のニーズに応じたオファリングを提供していきたいと考えています。
永田
コンサルタントの方が貴社にジョインすることの魅力をお聞かせください。
細谷
当社にはエキスパート人財がまだまだ少ないため、コンサルタントの方がジョインされると、想像以上のインパクトが出せると思います。「今まで培ってきたスキルを活かして実践したい」「インパクトを出せる実体験を積みたい」という方には、当社の環境はマッチしていると言えます。

また、当社で新たな方向に舵を切る際の組織論やスピード感やコミュニケーション等を体験した後に、またコンサルに戻るにしても別のスタートアップ企業等に移るとしても、とても良いキャリアが得られると思います。それから、当社は様々な規模の55社の企業が集まる連合体ですので、手触り感を持って挑戦できる規模感の企業を自分で見つけることもできる環境です。ぜひご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、当社でチャレンジしていただければと思います。
永田
最後に、ポストコンサルの方に向けてキャリアアドバイスをぜひお願いします。
細谷
コンサルティングの経験で得られる知識やスキルは、ミーティングの場や資料作成等を含むあらゆる実践の場と試行錯誤を通じて自身の脳内や行動様式に植えつけられる要素が大きいのですが、コンサルファームの中にいると周囲の人達も同じような話し方や考え方、資料作成ができる環境であるが故に、自分のポテンシャルを過小評価している可能性があります。

人生は有限です。やってみたい、と思ったことにチャレンジできるチャンスは意外と少ない。実際に事業をもつ責任を実感してみて、初めて「向こう側」の充実感を知ることができます。体力と気力があるうちに挑戦してみるのが良いのではないでしょうか。

この記事を読まれているコンサルタントの方々の中には、なかなか卒業の決心がつかない人もいらっしゃるかもしれませんが、一度コンサルタントをやめたからと言ってコンサルという業務内容やキャリアから完全に身を退くという話ではない。

実際に組織運営・事業という経営経験を積むことが将来またコンサルをやる上でも非常に大きな経験になりますと思います。「卒業」という言葉に囚われず、本当にご自身にとって前向きな決断をしていただければと思います。


構成:神田 昭子
撮影:波多野 匠

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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