Vol.62
横串で企業の本質的な課題に迫れる面白さと、経営経験を積む打席に立つ機会を多く得られるのは、「企業の縮図」とも言える業界・規模も多種多様なグループ会社を持つ当社ならでは。
三井物産株式会社
総合力推進部 ビジネスコンサルティング室岡林遼太郎氏
総合力推進部 ビジネスコンサルティング室福島慶子氏
公開日:2021.10.13
インタビュアー
入江・永田・工藤
「トレーディング」と「事業経営・事業開発」の両輪での成長を軸とするビジネスに取り組む、三井物産株式会社。それぞれの現場で蓄積された知見をもとに、様々な機能とグローバルなネットワークとを掛け合わせ、新たな価値を創出することで進化を続けている。同社の総合力推進部ビジネスコンサルティング室で活躍されている岡林遼太郎氏、福島慶子氏のお二方にこれまでのキャリアや同社で働く魅力についてお話を伺った。
大企業ながら、国内外約500社もある関係会社で経営経験を積める機会の多さが魅力だった。
- 工藤
- まず初めに、これまでのお二方のご経歴を簡単にお話いただけますか?
- 岡林
- 私は大学院卒業後に日本銀行に入り、松江支店と本店のシステム情報局で合計約3年間勤務しました。その後、2010年にボストンコンサルティンググループへ転職し、7年ほど産業材や通信メディア業界を中心に経験を積み、2017年10月に現職へ入りまして、約4年になります。
- 福島
- 私は大学を卒業後、新卒でアーサー・D・リトルジャパンに入社しました。消費財系のメーカーや官公庁、商社など大企業の中期経営計画やR&D戦略、新規事業戦略立案プロジェクトなどのほか、中小企業に向けて全社事業戦略の検討・実行支援を行うプロジェクトなどを扱い、6年ほど経験を積んだ後、2019年1月に現職へ転職して、現在約2年半になります。
- 工藤
- 当時はどのようなことを考え、またどんな軸で転職活動をされていましたか?
- 岡林
- コンサルタントの第三者的な立ち位置ではなく、自らが事業を動かす立場で仕事をしてみたい、更にずっと国内で仕事をしてきたので、海外でも働いてみたいという思いが強くなっていました。
また、コンサルティングファームでは昇進スピードが早く、どうしてもキャリア形成の視点が短期的になりがちでしたが、より中長期な目線で仕事に取り組み、キャリアも考えられるような仕事が良いなと思っていました。そのため、当時は、商社以外に日系メガベンチャーや外資系IT企業も検討していました。
- 福島
- 私は前職を離れる前マネージャーのポジションにいたのですが、次第に自己成長よりもチームの人達の働きやすさや成長に重きを置く時間が非常に増え、20代後半でこの環境に居続けることに不安が生まれていました。また、前職では中長期のプロジェクトが多く、コスト改善やオペレーション改善等の案件があまり無かったので、扱えるテーマの幅を広げたい思いもあって。
コンサルに近い動き方ができる環境を探したい一方で、前職に愛着があり他のファームには行きたくないと思っていた時に、当社のこの部署の話を知りました。また同時期にハンズオン色の強いVCの話も伺う機会があり、アドバイザー的な立場で動ける可能性もあるなと。いずれもコンサル的な動きをしつつテーマの幅を広げるという自分の志向に合致すると感じ、最後はその2社で悩みました。
- 工藤
- 様々な選択肢があった中で、三井物産を選ばれた理由は何だったのでしょうか?
- 岡林
- 国内外約500社ある関係会社で経営経験を積めるチャンスがあるという機会の多さと、海外に携わる機会も多いという点で、商社はとても魅力的でした。
また、先にBCGから当社へ転職していた先輩からも「人を大事にする会社だし、中途採用者も受け入れてくれる文化だから働きやすくて良い会社だよ」と聞いていて、最初から志望度は高かったです。
実際に選考を通じて部長・室長など様々な方にお会いする中で、「ここなら一所懸命に楽しく働けそうだな」と思えたことが最後の決め手でした。
- 福島
- 三井物産であれば、将来的に自分がプレイヤー側に行くという選択肢もあるので、可能性の幅があるのはいいなと思いました。
また、VCに行くとキャリアが金融系に寄ることと、キャピタリストとして一人前になるには5年~10年かかる中で、今後子供を持つ可能性も考えた時に、ベンチャーという動きが速い業界で第一線から退く期間ができるのは自分として避けたいという思いもあり、最終的に三井物産を選択しました。
「この提案面白い」と言われるよりも、大事なのは「やってみよう」と思ってもらえるか。
- 工藤
- ビジネスコンサルティング室に期待される役割についてご説明いただけますか?
- 岡林
- 約500社あるグループ会社の企業価値向上を図るべく、コンサル経験のある専門的な人材を集め、各社のバリューアップに取り組むと共に、会社全体で経営改善に関するスキル・ナレッジの拡大を図ることが部署設立当初からのメインミッションです。
加えて、最近ではグループ会社共通の課題を見つけて解くことで、個社の改善に留まらずグループ会社横断で解決していくような取り組みを行っていたり、当社本体の経営企画部や人事総務部と連携して全社の事業経営力を高めるための様々な施策の検討も増えてきています。
- 工藤
- 現在のお仕事と、コンサルファームとの仕事の違いについてはいかがでしょうか。
- 岡林
- コンサルファームの場合は、クライアント企業もお金を払ってでもやるという意思を持っていますし、スコープや論点・期間・課題が明確に決まってからプロジェクトをスタートするケースが多いと思います。
一方、当室の場合、もっと前段の抽象的な課題認識で相談を受けることが多い。「とにかく収益性を上げたくて困っている」「上司からビジコン室に話をしてみればと言われてとりあえず相談に来た」と言われるケースもあります。
そのような状態から、「こういう取り組みからやっていった方がいい」「元々コストを下げたいと言っていたが、トップラインを上げにいかないといけない」等、プロジェクトでの取り組み内容や必要な期間・チームの人選も自らが主体的に決めていける点は、コンサルファーム時代とはかなり違います。
また、三井物産の内部組織なので、「期限が切れたから終わり」ではなく、プロジェクト後のフォローなど柔軟な対応ができる点もコンサルティングファームとの違いかと思います。新規のプロジェクトに取り組みつつ、自分のリソースの許す限りプロジェクト後のフォローとしてお世話になった関係会社の方には定期的に話を聞いています。こちらの提案が実行されているかどうかも明確に見えるため、結構緊張感はありますね。
- 福島
- 関係会社の方々の信頼を勝ち取るところが前職より圧倒的に難しく、泥臭いこともやるなどの努力が必要ですが、そこで信頼を勝ち得て物事が進んでいく面白さもひとしおです。
それ以外では2つあり、1つは本当に多種多様なテーマを扱える点です。
コンサルファームにいると専門性や強みが特定されると思いますが、当社では上場企業からJVを立ち上げた段階までレベル感も様々であり、国内外に色々な会社があります。
また、1つの会社に対して営業戦略や業務効率化・人事面の課題洗い出しと打ち手など様々な角度からプロジェクトを進めることにより、数字やマネジメントとの議論だけでは分からない現場の悩みなども拾うことができ、会社の全体像も見えますし、コンサルファームで経験した業界・テーマ軸のプロジェクトよりも手触り感を持って本質的な課題に迫っていると感じられます。
もう1つは、日本国内だけでも業界も規模も本当に多種多様な会社があるので、当社のグループが共通で抱える課題は実は日本の縮図とも言えると思っています。そこに対して横串で対応策を打っていくことは、本質的に日本企業全体の課題に対して役立てるツールや方法論を生み出せる可能性があるとも感じており、まだ試行錯誤の段階ではあるものの、コンサルファームにいた時よりも横串で日本企業を支えられるような面白さがあると感じています。
- 工藤
- コンサルとは異なる立場となったことで、鍛えられた部分もぜひお聞かせください。
- 岡林
- コンサルファームの看板も全く無いので、個人の力量やキャラクターも含めて当社の人達から「どこの誰ですか?」「何ができるのか?」という目で見られるところからのスタートになります。そこから信頼関係を積み上げていき、「この室に相談する」ではなく「岡林さんに相談する」というところまで持って行くのが時間もかかり、最初は大変でした。
また、大企業でステークホルダーが非常に多いので、関係会社の社長と進めているプロジェクトであっても、当然その社長の下に管理職の方々や現場寄りの方達もいますし、当社側にも主管部署やコーポレート部門の人達がいて、大きな合意形成には時間とコミュニケーションコストがかなりかかります。分かってはいたことですが、実際やってみると相当ハードルが高い部分もありましたね。
- 福島
- 描いた戦略が実行されていく中で、PDCAを回していくことの重要性を肌で感じる場面が前職よりも非常に多いです。前職ではお客さんに「この提案は面白いね」と言ってもらえることが一番楽しかったのですが、今は「これならやってみよう」と相手の方に動いてもらえることが一番になっていて。
これは、仮に今後前職に戻ったとしても非常に活きる部分だなと思っています。どうすれば相手の方に「やってみよう」と思ってもらえるのだろうという肌感覚が、この2年半で大きく成長させてもらった点ですね。
ソフトスキルを磨きたい方、経験の無いこともやってみたい好奇心旺盛な方に来てほしい。
- 工藤
- 貴社のビジネスコンサルティング室には、どんな志向の方が合いそうですか?
- 福島
- ソフトスキルの醸成をしたい方や、ソフトスキルが無いと物事が動かないことを過去のプロジェクトで感じた方には、とても面白い環境ではないかと思いますね。
ハードスキルだけならコンサルファームの方がスキルアップできる面は大きいと思いますが、コミュニケーションで相手に動いてもらう、根回しも含めて組織を動かすということが、ビジネスにおいてはとても重要なので、その経験が数多く積める点は特徴的だと思います。
- 岡林
- これまでやったことのない仕事でも積極的に楽しみ、前向きに捉えてやってみたいという好奇心旺盛な方は、当社にはフィット感が高いと思います。
ビジネスコンサルティング室も徐々にやることの比重が変わってきていて、3年後には今とは全く異なる新しいことにも取り組んでいるはずです。コンサルティングの仕事だけでなく、「三井物産としてはもっとこんな取り組みが必要」との発想を持ち、積極的に動ける人が活躍できるように思います。
- 入江
- コンサルファームでは、プロモーションするにつれて営業や組織のマネジメントが主な役割となるかと思いますが、貴社におけるキャリアパスはいかがでしょうか?
- 岡林
- 全社的なローテーションがある中で色々な仕事に関わっていきます。関連会社に出向して数年後にまたビジネスコンサルティング室に戻ってくるパターンもあれば、他の事業部門に異動し、新規の投資案件に取り組んだり、その部署が主管する関係会社のバリューアップに携わったりする機会もあると思います。
まずはこの部署でコンサルのケイパビリティも発揮しながら全社を見渡してご自身の興味・関心がある領域を見定め、その後のキャリアパスを決めていくイメージです。
- 工藤
- 岡林さんご自身のキャリアパスについても伺いたいのですが、先ほどお話されていた「事業経営の機会を創っていく」という点では実際のところいかがですか?
- 岡林
- 現在、既に兼務という形で関係会社に出向しており、2021年10月からは本出向することになっています。社長補佐という経営に近いポジションで仕事をする機会をいただき、これからが本格的な自分にとってのチャレンジとなります。
当事者として企業価値向上に取り組み、会社の業績という形で自分の仕事の定量的な成績も出るので、しっかり結果が残せるようにこれからより一層頑張っていきたいと考えています。
- 永田
- 貴社に転職して、お二方が一番良かったと感じることは何ですか?
- 福島
- 私はコンサルの仕事が好きだったので、コンサルとして面白いことができればいいなと思って転職しましたが、実際に入社して前職よりも密接に各関係会社の方々とコミュニケーションを取っていく中で、「自分も1回はプレイヤー側に行って意思決定してみたい」と強く思うようになりました。
そういう自分自身の変化も面白いと思いますし、当社にプレイヤーとして楽しんでいる人が多いからこそ感じられたことなのかなとも思っています。
- 岡林
- 良くも悪くも自分の裁量が大きく、関係会社から相談があった時に、それを受けて、大規模なプロジェクトとして提案するのか、もしくは壁打ちで返すのか、そうしたすべての判断が当事者に委ねられます。
私自身も成功したこともあれば、同じくらい失敗経験もありますが、すべて自分事として捉えられるという醍醐味がここにはあるなと思います。それが面白くもあり、難しさを感じるところです。
- 工藤
- 最後に、この記事をご覧になっている方に向けてメッセージをお願いします。
- 岡林
- ポストコンサルのキャリアをお考えの方は、「どういうキャリア経験を積みたいのか」「どんなことをやってみたいのか」という観点で転職先を探すと同時に、現職では本当にそれが実現できないのかをあらためて考えてみることも重要だと思います。
「コンサルファームから出る」ことありきで考えるのではなく、様々なキャリアの選択肢を持っておくと良いかと。その中で、もしご自身のキャリアプランに当社がフィットすると感じられたら、ぜひ手を挙げていただきたいです。
- 福島
- ビジネスコンサルティング室のメンバーは、転職者の出身のファームも様々、社内から異動してきた方々の経験もそれぞれで、バックグラウンドが非常に多様です。前職のファームで働いていた時は、こういう課題だったらこのやり方で解いていくという手法がある程度見えていましたが、今は本当に様々な視点からの意見交換・化学反応が起きていることが個人的にとても面白いなと感じます。
手前味噌になりますが、当社のように横串で幅広いテーマを経験できる機会は、他ではなかなか無いと思っていますので、少しでも面白そうと感じていただけたらぜひ一度お話を聞いてみていただければと思います。
構成:神田 昭子
撮影:波多野 匠
※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。