日本の医療システムを進化させるために、 患者さんの動線にある「薬局」から 新たなアプローチを繰り広げていく。 コンサルタント出身者が大いに注目する、 ユニコーン になる可能性を秘めた企業。 日本の医療システムを進化させるために、 患者さんの動線にある「薬局」から 新たなアプローチを繰り広げていく。 コンサルタント出身者が大いに注目する、 ユニコーン になる可能性を秘めた企業。

Vol.74

日本の医療システムを進化させるために、 患者さんの動線にある「薬局」から 新たなアプローチを繰り広げていく。 コンサルタント出身者が大いに注目する、 ユニコーン になる可能性を秘めた企業。

株式会社カケハシ

代表取締役CEO中川貴史氏

上級執行役員西田庄吾氏

公開日:2026.02.12

インタビュアー 入江

大きな転換点を迎えている日本の医療に強い問題意識を抱き、患者さんとの接点である「薬局」に着目して、これからの社会に必要な医療体験を追求しているカケハシ。マッキンゼー出身でカケハシの共同創業者である中川貴史氏と、ボストン コンサルティング グループのマネージングディレクターアンドパートナーから同社に転身した西田庄吾氏に、これまでのキャリアや同社の社会的価値、コンサルタント出身者がここでキャリアを積む魅力などについてお話をお伺いした。

Message

実は「薬局」は潜在的な価値が大きな場であると捉え、カケハシを創業。

入江
まず初めに、中川さんがカケハシを起業されるまでのキャリアを教えてください。
中川
実は私、学生時代から起業していたんです。自分で何かサービスを作るのが楽しくて、音楽ストリーミングなどの事業を起ち上げて運営していたのですが、なかなかうまくいかずに畳むことになり、卒業後は縁あってマッキンゼーに入社しました。当初は2年ぐらいで辞めようと思っていたのですが、良い上司やメンバーに恵まれて仕事が楽しく、結果的に5年ほど在籍。ハイテクや製造業のお客様を主に担当し、最後の1年半ほどはシカゴに駐在しました。そのまま米国に残る道もありましたが、今後のキャリアを考えた時、やはり自分のオリジンである起業家に立ち戻ろうと、マッキンゼーを退職してカケハシを創業しました。
入江
カケハシは医療にフォーカスした事業を展開されていますが、医療を起業のテーマに選ばれたのはどうしてですか。
中川
日本は超高齢化社会を迎え、我が国の医療保険制度は大きな転換点に直面しています。民主主義の枠組みだけでは解決できない課題が山積しているなか、テクノロジーを駆使して日本の医療や社会保障制度を変革していくという、そんな重大なテーマに正面から向き合いたいとカケハシを起業しました。とはいえ、私に医療のバックグラウンドはなく、門外漢が飛び込んで何かを果たせる領域ではないので、医療に精通し、業界内にネットワークを持つ人と共同で創業したいと考えていたところ、大手製薬企業に勤めていた中尾(豊氏)と出会い、志を同じくして一緒にカケハシを起ち上げたのです。
入江
西田さんのご経歴もおうかがいできますか。
西田
私は大学で制御システム工学を専攻し、もともと車が好きだったこともあって日産自動車にエンジニアとして入社しました。好きだったスポーツカーの開発にかかわれるのは非常に楽しい時間であった一方、ビジネスに強くならなければという思いもありボストン コンサルティング グループ(BCG)に転職しました。私も2~3年BCGで修業して力を磨き、自分のやりたい事業をやろうと考えていたのですが、思いのほかコンサルティングが面白くて、結局BCGには17年在籍して途中でマネージングディレクターアンドパートナーに昇格。その間、いろいろな業界の案件に携わって、最終的にはヘルスケアの領域にエクスパティーズが収斂し、日本の製薬企業がグローバルで戦えるように支援することや外資企業の日本市場への参入を支援するようなアジェンダに注力していました。コンサルタントとして非常に挑戦しがいのあるテーマで面白かったですし、マネージングディレクターアンドパートナーにも就いてこのままBCGにずっといるか、外で新たなチャレンジをするかを考えている中で、カケハシと出会いました。
最初は、薬局向けのサービスを提供していると聞いて、直面する課題の大きさや自分が貢献できる領域とのマッチングなどの点でイマイチしっくりこなかったのですが、中川と話すうちに、日本の医療システムを進化させることに貢献できる可能性がある企業だと感じて大いに興味を持ちました。
入江
具体的に、西田さんはカケハシのどこに大きな可能性を感じられたのでしょうか。
西田
日本の医療システムを進化させるための有効なパスというのは、実はあまりないんですよね。日本は国民皆保険であり、国が医療システムを運営している形なので、じゃあ行政側に立てばいいかと言えば、このシステムそのものを変革するのはやはり難しい。製薬会社、病院、薬局からのアプローチも、単一プレイヤーであると日本の医療の構造全体を変えていくのは困難だと思っていて、そんな中でカケハシが推し進めている、分散市場である薬局のプラットフォームを構築し、そこから患者さんを取り巻く環境を変えていくチャレンジは、日本の環境で、医療システムに貢献できるプラットフォームを構築するにはユニークな筋だと思ったのです。
入江
中川さんは日本の医療を変えていくにあたって、なぜ薬局に着目されたのでしょうか?
中川
薬局というのは、実は非常に潜在的な価値のある場所なんですよね。薬を要する治療において患者さんがほぼ必ず通る導線であり、全国にコンビニよりも多い6万店近い店舗が存在し、この薬局を通じて約6兆円もの医薬品が動いている。このように潜在的な価値が大きいにも関わらず、カケハシを起業した当時、薬局内の業務にテクノロジーによるイノベーションがほとんど起きておらず、現場の薬剤師の方々は非常に多くのペインを抱えていました。薬剤師の方々はみなさん、薬に関して深い知識を有し、もっと活かしたいと思っているのに、十分に発揮できていない。最終的に日本の医療を変えていくという大きなアジェンダの実現に向けて、DXによって薬局業務を革新し、それを通して患者さんへのアクセスを向上させ、膨大な医薬品の流通を最適化することはきわめて有効ですし、何よりも非常に大きなポテンシャルを感じたのです。また、病院やクリニックとは違って薬局は株式会社が運営し、DXなどの導入にあたって経済合理性が働きやすい市場であり、我々のサービスが入り込む余地が大きいと捉えたことも大きな要因ですね。

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社会へのインパクトを自らの意志で選択するというキャリア観。

入江
コンサルタントとして第一線で活躍されていた西田さんが、どのような軸で次のキャリアをお考えになられたのか、興味をお持ちの読者の方も多いかと思います。あらためて、西田さんが転職時に最も重視したポイントを聞かせていただけますか。
西田
やはり、自分が取り組むテーマが面白いか、社会にインパクトを与えられるか、ということでしょうか。実はBCG時代、中川とコンタクトをとる以前から、ヘルスケアに関わるベンチャーや大手企業からオファーをいただいていて、ひと通りお話をうかがったものの、あまり食指が動かなかったんですね。ベンチャーのなかには面白いビジネスモデルを持つ企業もありましたが、社会的なインパクトはそれほど見込めないと感じることが多く、また大手企業の場合だと、シニアで参画するにはお互いに相当なフィット感がないと難しいなど、BCGで手がけていたテーマを超える面白さを味わえそうな環境が見当たらなかったんです。
ただ、私はBCGで環境にも恵まれ30代半ばでマネージングディレクターアンドパートナーに昇格させて頂き、大変ありがたかったものの、残りの人生をずっとこのポジションで過ごすのもどうなのだろうかという気持ちもあって、自分のキャリアの次のステップで取り組む意義のあるテーマがあればチャレンジしてみたいという思いは抱いていました。
それがカケハシにはあると思えたこと、あとは中川から鼓舞されて決断した感じでしょうか(笑)。
入江
面白いかどうかが、西田さんの判断基準だったのですね。やはりコンサルタント出身者がスタートアップに移ると、報酬面ではかなり下がると思いますので、そうしたマインドをお持ちでないと動かないということでしょうか。
西田
確かに報酬のベースは下がるのですが、ストックオプションを付与されることでリスクマネーは期待できます。本当に事業を成長させられるかどうか、自分の実力次第で得られるリワードが大きく変わってくる。欧米では、パートナークラスでベンチャーに移籍する人材はたくさんいるんですね。スタートアップ界隈に飛び込むだけの価値のあるベンチャー、ユニコーンになる可能性を秘めた企業が数々存在していて、将来のリワードも期待できる。企業の価値は時価総額がすべてではありませんが、やはり100億円ぐらいでスモールに上場すると、創業メンバーは潤うものの、レイターステージで参画したメンバーには報酬面ではあまり恩恵がない。カケハシはもともと、スモールな上場をゴールにしていません。リワードを得られることはもちろん、そのクラスまで成長しなければ社会にインパクトも与えられないでしょうし、その意味でも転職する意義があると判断した感じですね。
中川
日本はまだ、サラリーが高いほど自分の価値も高いという固定観念が根強いと思うんですね。一方、シリコンバレーなどのスタートアップ界隈では、むしろ企業から給与をもらっているほうがダサいという風潮があって、優秀な人材ほどリスクテイクして社会にインパクトを出し、それがキャピタルゲインという形で自分の報酬になるという考えでビジネスに向き合っています。シニアクラスになると、給与というのはもう最小限の報酬であり、参画した事業に深くコミットして大きな社会的インパクトを達成した時、給与の何倍ものリターンを得られるような期待値が想定できるところに飛び込んでいくのが、もう当たり前の認識になっている。もちろんボラティリティは高いのですが、平均的な期待値を考えると、いま勤めている会社に残るよりもはるかに良いリターンが返ってくる可能性は大いにありますし、むしろそうしたチャレンジできることを面白いと思ってほしいですね。
西田
リスクって、周りが思っているほどないんですよ。アップサイドが取れるか取れないかというリスクがあるだけです。しかも万が一そのベンチャーがダメだったとしても、元の職種にでも戻ればいい。スタートアップにシニアマネジメントとして身を置くと、事業開発に対する圧倒的な解像度と企業経営における経験が両輪で身につきますし、それは他の仕事でも武器になると思いますしね。
中川
私もカケハシを起業する時、2~3年やってうまくいかなかったら、またマッキンゼーが雇ってくれると思っていて、やらない理由はないと。もちろん起業して短期的には報酬が格段に下がりましたが、人生という長いキャリアで捉えれば、むしろ得るものしかない。事業や組織を創ることに悪戦苦闘し、自分で戦略を描いて実行し、お客様に怒られたり褒められたりしながら次の手を果敢に打っていく、そうしたサイクルを回しながら手触り感をもってビジネスを動かしていく経験は、やはりコンサルというある種守られた環境で得られる経験とはまったく違うんですね。シミュレーションゲームをやるのと、本当に無人島に行ってサバイバルゲームをやるぐらいの違いがある。そこで得られる自分の成長はかけがえのないものがあると思っていて、たとえカケハシがここまで発展できていなくても、私はまったく悔いていませんし、リスクよりもはるかに大きなリターンがあったと感じています。

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経営者として成功するための経験値を得られるのが、スタートアップの面白さ。

入江
西田さんはカケハシにご入社されてから、これまでどのようなテーマに取り組まれてこられたのでしょうか。
西田
当社は現在、薬局経営や薬剤師の業務、患者さんとの関係性など、薬局のあり方そのものをアップデートしてDXを推進するバーティカルSaaSを展開していますが、私はすでに構築されだしている薬局向けのプラットフォームを土台とした新規事業の開発を2つの視点で進めています。
ひとつは、ペイシェントエンゲージメントと呼ばれるサービスで、患者の情報や患者との接点を活用しながら患者にとっての治療価値の最大化を図るような仕組みの構築です。
例えば患者さんが適切な服薬を続けるためのコミュニケーションを図ることで、再発率を下げ、患者さんのアウトカムを向上させるとともに、製薬企業の薬剤価値最大化にも寄与していく。
もうひとつはサプライチェーン事業と呼ばれる事業です。医薬品流通はまだまだクラシカルで、各店舗で薬剤師が毎日手作業で発注していますし、発注先の在庫の有無は薬局側では把握できず、欠品していれば医薬品卸から連絡が来るという形態。医薬品特有の規制や安全性要件から、改善余地が明確にあるのにアドレスされてこなかった領域でもあります。この薬局と医薬品卸、製薬企業をつないだ、End to Endのサプライチェーンの最適化を推進することで必要な医薬品の欠品をできるだけなくし、需要予測ができるレベルにまでもっていきたいと考えています。このサプライチェーン事業は、薬局以外の医薬品卸や製薬企業、医療機関などのステークホルダーを巻き込んでいかなければならず、そこでは私がコンサル時代に培った医療業界の知見やネットワークが役に立っています。それまで私は新規事業開発を自ら担った経験はありませんでしたが、ある程度環境が整備されたなかで、明確に設定されたテーマに取り組み、過去の経験も生かしながらビジネスを創り上げていくことができ、過去の経験やコンサルで培ったスキルを活用しながら比較的スムーズに力を発揮できているように感じています。
入江
西田さんのようなコンサルタント出身のパートナーや MD クラスの方が参画される場合、どのように受け入れるのかというオンボーディングも重要ではないかと思いますが、その点について中川さんはどうお考えですか。
中川
基本的に、コンサルタントというのは同じカルチャーと言語を共有し、同じスキルセットを共通基盤として持つ同質的な生き物の集団だと思うんですね。一方、スタートアップには営業に強みを持つ方もいれば、エンジニアのバックグラウンドを持つ方もいて、本当に多種多様な価値観と専門性を持った人のクロスファンクショナルチームなんです。コンサルでは当たり前だと思っていた価値基準を持ち込んで対応してしまうと、やっぱりうまくいかない。
さらに言えば、トップファームで活躍されていた方は、日本を代表する大手企業をクライアントに、意思決定層と直接議論する機会が多かったと思います。そうした環境では、前提条件や目的が比較的整理された状態で議論が進むことが多い。一方で、スタートアップの組織では、事業や組織の前提そのものを一から作っていくフェーズであり、異なる専門性や価値観を持つメンバーと丁寧にすり合わせながら進めていく必要があります。
マネジメントに求められるのは、多様な人材が集うチームをエンゲージし、旗印を掲げ、その人たちが 120%の力で働ける環境をどのように作り上げるかということ。ポストコンサルで入社される方には、コンサルタントとの差分をしっかりと理解した上で、覚悟をもって飛び込んでいただきたいですし、逆に受け入れる我々側も、その方の秀でている部分が最大限に発揮できる場を提供するとともに、知見や経験のない部分はチーム内で補えるような組織を編成することが重要だと考えています。私自身、ポストコンサルで起業して事業や組織を創る上で失敗を重ね、コンサルタント出身者がスタートアップでぶつかる壁や苦労を肌で感じているので、  どんな枠組みで入っていただけると双方にとって良い形になるのかを理解しているつもりです。
西田
コンサルタントからスタートアップへの転職をお考えになられている方がいらっしゃれば、やはりマネジメントの中にポストコンサルの人がいる会社のほうがフィットしやすいと思います。また、私のようにレイターステージで参画すると、すでに事業基盤がある程度形になっているので、与えられたミッションに取り組む上で周囲に頼れる人がトピック毎にいるんですね。たとえば、自分が企画したサービスを形にしていく上では、優秀なエンジニアチームが社内にいますので、自分ですべて開発を推進できなくても彼らと適切に連携し、任せるところを正しく任せればうまくプロダクト開発が進む。このような形で社内のリソースを最大限に活用することを意識すべきだと思いますね。
入江
ポストコンサルのキャリアとして経営者を目指している方が結構いらっしゃるのですが、そうしたみなさんに何かアドバイスをいただけますでしょうか。
中川
コンサルティングで養われた、市場を綿密に分析して戦略を立て、正しく意思決定できる能力はもちろん経営において必要ですが、それよりも重要なのはもっと事業のスタート地点に近いレイヤーで発揮すべき能力だと思っています。結局、どのような企業が勝ち残っていくのかというと、強い組織を築き、優れたメンバーを採用し、その人たちが熱烈に働いてパフォーマンスを最大限に発揮するカルチャーを築いている企業なんですね。どのような組織を作り、どのような目標を設定し、どうマネジメントして成果を出すのかという、そのエグゼキューションのレイヤーの作り込みが実は最終的に事業が伸びるかどうかを決める最も重要な要素になると思っていて、その経験値はなかなかコンサルでは得難いもの。やはり事業を伸ばすのは本当に泥臭いんですね。たとえば、お客様と飲みに行って仲を深めて、ベクトルが同じ方向になるように努力するなど、そのような泥臭いことの積み重ねが事業のリアリティだったりするので、その経験値を積めることがスタートアップに身を置く面白さ。私も起業後そこに苦労しましたし、泥臭さを楽しめるようになることが、本当の経営者になる重要なステップではないかと個人的には思っています。
西田
コンサルタントからスタートアップに転身する際、別に清水の舞台から飛び降りるような気持ちで臨むのではなく、もっと気軽にアクションを起こしていいんじゃないかと思います。スタートアップで経験を積んで、またコンサルに戻ってもいいし、そこから大企業のCxOを目指すという世界観もある。キャリアを主体的に構築していくことが重要であり、世の中が変わっていくなかで、どのようなスキルセットを獲得していくことが自分の市場価値を高めて、本当にやりたいことに繋がっていくのか、しっかり考えて行動することが大切ではないかと思います。




構成:山下和彦
撮影:櫻井健司

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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