決定者の声 Vol.002 株式会社ユーグレナ

マッキンゼー・アンド・カンパニーからユーグレナへ

自分のコアバリューを明確にすることが、転職成功につながる。

川内 明日香

株式会社ユーグレナ CEO室長/政策企画参事
2007年に東京大学法学部卒業後、東京大学法科大学院(ロースクール)を経て2010年経済産業省に入省。
経産省では省エネルギー、著作権(文化庁へ出向)、通商交渉、MBA留学等を経験し、2018年に退職。
同年マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、2021年に退職するまで様々なコンサル案件に従事。
同年1月からSustainability Firstを理念とし、事業成長を通じた社会課題の解決に取り組むユーグレナにて、全社戦略策定を中心とした経営企画業務から政府渉外まで幅広く担当し、同社の成長を支えている。

Points

コンサルタントとして活躍されている方が、何をきっかけに転職を考えるようになり、どのような活動を行って、どのように意思決定されたのか、ポストコンサルタント転職の事例をご紹介します。今回はマッキンゼー出身で、クライス&カンパニーを介して事業会社に転職された方にお話をうかがいました。

社会課題解決を強く志向し、経産省、マッキンゼー、そしてユーグレナへ。

ユーグレナに入社されるまでのご経歴を教えていただきますか。
私は2010年に新卒で経済産業省に入省しました。もともと私は社会課題を解決することを強く志向していて、当初は社会的に弱い立場にある方々を助けたいと弁護士を目指していたのですが、本当に困っている人々のためには、システムや法律を変えて根本的な課題解決を図った方が良いのではないかと思い、ソーシャルインパクトを求めて官庁に入ったのです。在籍中に米国へ留学する機会を得て、帰国後、思うところがあって2018年にマッキンゼー日本支社に転職しました。
経産省からコンサルティングファームに移籍されたのは、どのようなお考えからですか。
米国に留学した際、イノベーションが次々と起こる最先端の世界を目の当たりにして、自分が役所でスピード感を持って社会課題解決を推進していくことに限界を感じたんですね。それをきっかけに、イノベーションが生まれる最先端に自ら身を置きたいと、キャリアチェンジを考えるようになりました。

しかし、事業会社からの社会変革に挑戦する前に、一度、企業を支援する立場として力を磨き、自分を成長させてからやりたいことができる企業に移ろうと経営コンサルを選択しました。そしてマッキンゼーに2年在籍した後、2021年にユーグレナに入社しました。

信頼に足るエージェントを選び、難易度の高い転職活動に臨む。

ユーグレナへの転職活動はどのように進められたのでしょうか。
経産省時代、キャリアチェンジを考えた時に転職サイトに登録していたんですね。そこで複数のヘッドハンターの方々からお声がけいただいたのですが、今回、それを思い出して以前に連絡をくださった人をリストアップし、サイト上で公表されているヘッドハンターランキングで評価が高く、信頼できそうな方にこちらからアプローチしました。

そのうちの一人がクライス&カンパニーのキャリアコンサルタントの入江さんで、結局、実際にご一緒したエージェントはクライスさんを含めて2社でした。あとは、その転職サイトから直接オファーをいただいた企業も候補として検討しました。
クライス&カンパニーのキャリアコンサルタントの印象はいかがでしたか。
入江さんは、しっかりと私に向き合い、本当に私に合った企業を提案しようと努めてくださりました。私が提示したのは「業界はどこでもいいし、年収も下がっていいから、社会課題の解決に真正面から取り組んでいる企業か、そういった企業を支援している組織がいい」という漠然とした条件。無理難題をお願いしていることは重々承知していましたが、そんな私の想いをきちんと受け止めてくださり、とても有り難かったです。

難易度の高い転職支援だったかと思いますが、入江さんは一生懸命考えてくださって、私の知らなかった会社も含めていろいろと提案していただきました。もう一社は、エージェントの方の得意な領域で推したい企業を勧めてきているように見えて、私のニーズを汲んでいるように感じなかったんですね。そのなかでも面白そうな会社はあったので受けてはみましたが、本当に私にマッチしていると思える企業には出会えませんでした。
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転職先を決めたきっかけは、キャリアコンサルタントからの熱いメール。

転職活動中、クライス&カンパニーと関わる中で記憶に残っていることはありますか。
いまでもよく覚えているのは、入江さんから朝の6時にメールをいただいたことですね。その直前、直接お誘いをいただいた企業に決めるつもりだとお伝えしたら、『このタイミングのご提案で恐縮だが、この会社だけは受けてほしい。この会社を提案できずに転職活動を終えられるのは川内さんに申し訳なく、私もキャリアコンサルタントとして後悔することになる』という熱いメールが来たんですね。それがユーグレナでした。

後で入江さんにうかがったところ、前日にユーグレナの講演を聞いて興奮が収まらず、ぜひこの企業は紹介しなければと夜中にメールを書かれて、そのまま早朝に送られたとのこと。メール内で入江さんが『私が知る30代の経営者の中で最も尊敬する方に会ってほしい』と訴えられていて、その人がユーグレナの現・取締役代表執行役員CEOの永田(暁彦)でした。
弊社のキャリアコンサルタントからのメールが、ユーグレナ入社のきっかけになったのですね。
ええ。すぐに永田とのカジュアル面談を設定していただいたのですが、事業の成長と社会課題の解決を両立するという考えにたいへん共鳴するところがあり、数日のうちに経営企画の戦略担当としてオファーをいただきました。魅力的で面白そうだし、ユーグレナにお世話になろうかなと考えていた時に、友人から『創業者である代表取締役にも会ったほうがいい。経営企画で入社するのなら必ず関わることになるから、10分15分でも時間もらって自分に合うか合わないかを判断すべき』とのアドバイスをもらい、入江さんに無理を言って「出雲(充)さんに会わせてほしい」とお願いしたんですね。

そんな要望を出す候補者など異例だったと思うのですが、その時も入江さんが迅速に対応してくださり、出雲との面談をセッティングしていただきました。その面談で私はとても感動して……出雲には高い志があり、話をしているうちに思わず高揚して涙したほど。「社会を変える」と口で言うのは簡単ですが、永田と出雲からはそれを成し遂げようとする本気を感じました。
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世界を変えたいという「本気」を経営者から感じ、ユーグレナ入社を決断。

川内さんから見て、出雲さんと永田さんはどのような経営者ですか。
出雲は夢を語る経営者であり、まさしくアントレプレナーです。誰もが「無理だ」と思うようなことをこれまで成し遂げてきた。普通の人は微細藻類のユーグレナ(ミドリムシ)で会社を起こそうなどとは考えませんし、常識にとらわれないのが彼の魅力だと思います。
一方で、経団連で主要なポジションを務めており、歴史のある企業や官庁の方々とも上手に関係性を築くバランス感覚にも優れている。私自身はアントレプレナー気質ではないので彼の発言には驚かされることが多く、まったく底が見えない人ですね。

永田はキャパシティが広く、脳の構造が常人とは違うのではないかと思えるほどマルチタスクで、言語化能力も非常に高い。私から見ると、出雲の夢を具現化するのに全力を注いでいるように映りますが、かといって言いなりになっているわけではない。具現化する上で自分なりの理想をそこに乗せていて、確固たる美学を持っている人です。

私がユーグレナへの入社を決めたのは、二人が本気で挑んでいる姿に魅せられて、私もぜひその力になりたいと思ったのがいちばんの理由です。
ユーグレナに入社後、どのような仕事を担っていらっしゃるのでしょうか。
入社後は経営企画課に所属し、今年の5月からはCEO室で、全社の経営戦略の策定、取締役会などの重要会議体の運営、政務対応や官庁折衝、そのほか経営課題の解決を一手に担っています。

急成長を遂げてきた会社としての経営課題は山積しており、それを会社の仕組みを変えながら一つ一つ改善しているような状況です。すぐに成果が出る仕事ではありませんが、昨日より今日、今日より明日と、少しずつ会社がより良く変わっていくことが、ひいては社会にインパクトを与えていくことになると信じて日々邁進しています。
ユーグレナに転職して良かったと思うことは何ですか。
事業会社で働くのはユーグレナが初めてですが、やはり自社で目に見えるプロダクトを持ち、それを社会に提供できるのは良いですね。あとは、一緒に働いて楽しい同僚が多いのも、ユーグレナを選んで良かったと思うことのひとつです。

弊社は社員と言わず仲間と呼ぶのですが、その仲間の一人ひとりが、この会社が実現したいと思っているさまざまな夢のどこかに共感していて、社会課題解決やサステナビリティに関心がある人は他社よりも圧倒的に多いと思います。

人によってバックボーンはさまざまですが、根本に抱く志のようなものは共通しており、同質性と多様性が良い塩梅で掛けあわさったようなカルチャーで、それがとても心地いいですね。仲間も、単体ではまだ250人ほどで、把握しようとすれば全員を把握できる規模。手触り感を持って会社づくりができるのも面白い。経営課題はたくさん抱えているものの、まだまだ企業を自分たちの手で変えられるフェーズであり、スタートアップ段階からより規模の大きな企業に成長するにはどうすればいいのか議論し、変革していくことがいまは楽しいですね。
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私のキャリアに寄り添い、未知の選択肢を示してくれたことに感謝。

いま振り返って、転職時にクライス&カンパニーを利用した価値はどこにあったとお感じですか。
やはりユーグレナという選択肢を私に示してくださったことでしょうか。入江さんの支援がなければ、おそらくユーグレナへの転職は絶対に考えなかったと思います。

ユーグレナのことは知っていましたが、私の中では、「ユーグレナ=ミドリムシ(微細藻類ユーグレナの和名)の会社」というイメージで止まっていて、これほど可能性を秘めた企業だという認識はなかった。

入江さんは私の想いを汲んだ上でユーグレナを提案してくださり、私のキャリアを真剣に考えて寄り添ってくださったことにたいへん感謝しています。
これから転職に臨まれる方々にアドバイスをお願いします。
自分が何をいちばん大切にしているのかという価値観、いわゆるコアバリューをきちんと考えたほうがいいと思います。会社のネームバリュー、事業や待遇などの表層的な情報だけで判断するのではなく、自分がどうありたいのか、何をしている時がいちばん幸せなのか、抽象的でもいいからしっかり掘り下げて、その軸をもとに会社や仕事を選んだほうがいい。

私の場合、経産省をファーストキャリアとして選んだ頃から、コアバリューは変わっていません。私のコアバリューは、制度や仕組みなどの構造を把握した上で、何らかの素敵な驚きを付け加えることにより、その構造をより良い形に変革することです。経産省の時はより良い社会に繋がる政策を立案し、マッキンゼーではクライアントの課題を把握して解決してきました。

そしてユーグレナでは、私たちの持つテクノロジーと、サステナビリティという二つの強みを掛け合わせ、ソーシャルインパクトを出すことで世界を変えていきたい。そうして世界を変えられる会社にするために、そのための道筋を作りながら、会社の中も同時に変えていくのがいまの私のミッションであり、おかげさまで、日々生き生きと仕事ができています。

自分のコアバリューが明確であれば、転職時にそれをエージェントに伝えることでより深い提案が得られると思いますし、それを意識していただくことをお勧めします。

構成:山下 和彦
撮影:櫻井 健司

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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