Vol.58

自分でやらない限り「いつか」は来ない。経営のプロとして身を立てたい覚悟と能力がある人がどう活躍するかという時に、MIRARGOという選択肢が効いてくる。

株式会社MIRARGO

代表取締役 CEO小寺規晶氏

公開日:2021.02.8

インタビュアー 入江

スタートアップと大企業が共に成長する世界を構築すべく、2020年3月に設立されたMIRARGO。スタートアップ投資によるオープンイノベーションを本気で狙う大企業とパートナーシップを組み、投資先スタートアップへ経営プロフェッショナル人材を供給することでスタートアップの成長と事業協創を実現する。この活動を通じて、日本の未来を創るスタートアップと経営プロフェッショナルを増やす仕組みの構築を狙っている。同社代表取締役CEOの小寺規晶氏に、MIRARGOのビジョンや同社でキャリアを積む魅力についてお話を伺った。

Message

順風満帆だった自分に訪れた試練は、MBAでも教わらない大事なことを気づかせてくれた。

入江
小寺さんのご経歴について、アクセンチュアに入られた経緯からお聞かせください。
小寺
懐古録みたいな話ですが、大学時代はM&Aを扱う弁護士を漠然と目指して勉強していましたが、英語が全然ダメで。これだとその業界で活躍できないなと思い、ワシントン大学に留学しました。判例六法をスーツケースに入れて。でも、折角ならと法学ではなく経営学を受講したのですが、そこでルイス・ガースナーの「巨象も踊る」やジャック・ウェルチの「ウィニング勝利の経営」といった本と出会い、アメリカには経営のプロという役割があるんだなと認識して、ジョン・グリシャムよりこっちがやりたいことじゃないか!と。現地の友達はもとより、日本の親や友達にも興奮しながら時差関係なく話し倒していたのを覚えています。当時、「アメリカでのスタンダードは10年後に日本のスタンダードになる」という考えがよく言われていて、そこに向けてどうするのが良いのか?と考える中で、経験の量と質で最適解だと思ったのが、戦略コンサルタントでした。アクセンチュアを選んだ理由は、当時の戦略グループのトップだった西村裕二さんの人柄が大きかったなと思いますが、当時のアクセンチュアは戦コン業界では新規組でここからトップを獲ろうぜという挑戦者の雰囲気があり、凄くしっくり来たのも大きいですね。
入江
MBAに行かれた理由は何ですか?また、行かれてみていかがでしたか。
小寺
人生は選択の連続なんて話がありますが、今やらないと一生できない、やるかやらないか今選ばなくてはならない、というテーマとして最初に認識したのがMBAでした。当時コンサルの仕事が楽しくて、小さいことも大きいことも「いつかやる」で片付けていたのですが、MBAは非公式に年齢制限があるので、今選ばないと一生MBAには行かない人生を自分で選択したことになるんだなと感じました。アクセンチュアのキャリア的には行ってもプラスではなかったのですが、ワクワクするのはこっちだという思いに勝てず、MBA行きを選択しました。行ってみてよかったのは、経営コンサルティングと言いつつ、当時私がやっていたのは、全体ではなく狭く深くなんだということ。これまでの経験を経営全般の体系知の中に組み入れていくことが本当に楽しかったですね。ケンブリッジ大学という新たなアイデア・ビジネスが生まれる環境の中で、起業家や老舗ビジネスの継承者、さらにアジア・アフリカ諸国からきた国の未来を真剣に考えるエリートと交流する日々は刺激的でした。その環境の中で、周囲からリーダー的な存在として位置付けられたことも、その後の自身の方向性を定める大きなインプットでした。日本では「自分」「キャリア」の話が多くなりがちでしたが、「恵まれた層だから責任がある」「世の中に新しいものを創りより良くしたい」という視座の人が多く、彼らから頼られると嬉しいし、自分も新しいことをやって国や世の中に還元したいという種を植え付けられた感じでした。経営のプロフェッショナルという当初のコンセプトを再認識したのもこの時期でした。
入江
当時選択肢は多数あったと思いますが、ユニゾンの投資先に行ったのはなぜですか?
小寺
30代前半から経営の打席に立つことができる環境を探していたのですが、とっかかりが見えず、初の転職活動で、その上で「30代で経営」という曖昧なテーマで動いていたので、そりゃそうだという話なのですが派手に空回ってましたね。そんな中、ハンズオン投資ならチャンスがあるかなとPEファンドを調べていた時に、ユニゾン・キャピタルさんとお会いし「小寺さんは投資がしたいの?経営がしたいの?経営だったらこっち側じゃないよ、僕たちは投資家で、経営者に参画してもらう側だから。」と伺ったのは印象的でした。もちろん面接としては不合格の雰囲気で進み、基本褒められたい気質としては残念なのですが「やっぱり経営プロフェッショナルって大企業のトップ以外にもニーズが出てきてるんだな」と妙にワクワクしたのを覚えています。知覚できると、元スシローの加藤智治さんやミスターミニットの迫俊亮さんといった方々の活躍も見えるようになり、自分もそちら側に、と燃えましたね。2週間くらいして「実は新しい投資が決まって小寺さんどうですか?」と誘われた時は素直に嬉しく、参画させていただくことを決めました。とは言え、当時を振り返ると恥ずかしく、参画当初は全く期待に応えきれていなかったと思います。エイヤと飛び込んで勝手に穴に嵌っていたなと思います。肩書きやら年収やらお手並み拝見的な雰囲気やら、足場が整っていないのでどんどん視点が「誰も守ってくれないから自分で守らなきゃ」になっていく。それじゃ会社は良くならない。もがく中で、段々と「自分のことは何とかなるし、会社が良くなれば自分も良くなる」と変化し、すると社員や株主にも頼られ、アイデアを一緒に形にし成果を出し、ますますのめり込んでいくという好循環になりました。これは結構中毒性があります。
入江
アクセンチュアで昇進、MBAと順風満帆で来ていた中で初めて苦労されたのですね。
小寺
順風満帆ではなかったですが、苦労といえばアクセンチュアの採用面接で西村さんに「君は優秀だけど、苦労を知らないね。もったいない。」と言われたことがずっと心に残っています。アクセンチュアで順調にキャリアを重ねられたのも、今思うと将来的な期待値込みでの守られた評価だったなと。個の経営人材として少しは苦労したことで、自分ができないことが明確になり、逆に結果を出しやすくなりました。コンサル時代は切れ味を求めていましたが、皆がワクワクして働ける仕組みの方がずっと大事であり、「これをやったら皆幸せになるから俺を信じてよ。でも助けてね。」と言えるか。これはMBAでも教わらない、でも核心のようなものを噛み締めた感じですね。

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「自分はこういう生き様です」と旗を立て、新しいものを創りにいくと肚を決めた。

入江
Origamiに行かれたのはどういう経緯だったのですか?
小寺
創業者の康井義貴さんと会った時に、キャッシュレスの世の中を作るというパッションと彼のチャーミングさにほだされてしまったのが一番大きいですね。それとアーサー王と円卓の騎士の様な、それぞれが独立し領域を担う人たちと力を合わせて組織を創りたいという僕の理想があって、Origamiの創業・経営メンバー陣となら、同世代なこともあり、それができるのではないかと思いました。妻にも「また年収が下がるけど、日本をアップデートさせる会社になるから、賭けてみたい」といったら「スタートアップ業界の” プロの経営 ”良いじゃない」と我が家はかなり楽観的なので(笑)。最終的にはOrigamiは無くなってしまいましたが、本当に苦しく、楽しい鮮やかな日々でした。ただ、今思うと、採用・組織作りや、戦略の割り切り、混乱の中での振る舞いなど、悪手が多く、反省しきりです。これは次に活かしていきたいですね。
入江
素晴らしい経験ですね。その後、MIRARGOを最終的に選んだのは何故ですか?
小寺
経営を生業に、というのは変わらないのですが、なかなかOrigamiの夢から覚めず、COOなどのお誘いいただきながらも、しっくりこずという状況でした。また、MBA以降はずっとコンサルティングに比べて年収を低く活動していたので、勝負かけるにも時間かけるにもキャッシュって大事だよなぁと「株式会社自分」の財務の弱さに苦笑いしていました。大企業のオープンイノベーション活動、ハンズオン型へシフトしていくベンチャーキャピタル、経営者・CxOというキーワードの増加など、時間だけはあったので色々な人とお話をする中で、「大企業とスタートアップと経営プロフェショナルが結びつく仕組みを作ったら三方良しにならないか?」と着想を得ました。それを、イグニション・ポイントの野上さん・田代さんとした時に「イグニショングループでそれを創らないか」とお誘いいただいたのがきっかけですね。自分が新しく創るまでは考えていなかったけど、誰かが作ってくれるものでもないし、だったらやるかと肚を決めた感じですね。

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MIRARGOでは環境と心理的安全性を提供できる。プロ経営を志す人と共に創っていきたい。

入江
貴社の事業スキームについて、詳しく教えてください。
小寺
経営人材のためのコミュニティとして創っています。大手企業とパートナーシップを組み、スタートアップ投資をする際、一緒にバリューアッププランを描き、経営人材がスタートアップに参画します。大企業のスタートアップ投資は自社のアセットを未来に活かす目的で業務資本提携を結ぶ一方、スタートアップとしては自社の戦略に噛み砕かれないとそのアセットを使いようがなく、延々と会議が行われることになってしまうか、塩漬けになるか。私たちが入ることで、大企業にとっては投資の狙いを理解した人材がスタートアップ側で推進してくれる。スタートアップにとっては、アーリーフェーズでは獲得が難しい優秀な経営人材が参画し、外部のアセット活用や事業開発、組織構築、資金調達を二人三脚で行ってくれるという価値が生まれます。さらに、経営人材にとっては、バリューアッププランを自分で描けるスタートアップ経営参画機会とともに、心理的安全を担保する給与とSOという経済条件、組織としての知識やネットワークのサポートを獲得することができる。それぞれにとってメリットがあるスキームになる様に組み立てています。
入江
第1弾は、日本ユニシスがCVCのような形で出資するということでしょうか?
小寺
日本ユニシスグループの事業創造を目的とした戦略子会社であるEmellience Partnersと共同して活動しています。一緒にアーリーフェーズのスタートアップを対象に投資先選定を行い、経営人材がそのまま参画する流れが基本形です。新しい仕組みなので、走りながら、仕組み・ルールを喧々諤々議論して作らせていただいています。また、アーリーフェーズのスタートアップ投資だけでなく、日本ユニシス本体の中で温めていた事業をスピンオフさせてベンチャー企業として育てていくモデルも計画中です。
入江
他のファームでも投資や経営者派遣スタイルの会社がありますが、他社との違いは何でしょうか?
小寺
MIRARGOは経営者集団として存在していて、今のところ全部を自分達でやろうとは思っていません。自社の投資先にコンサルタントを経営者として派遣するというコンサルティングファームが出てきていますが、私たちは投資家でもコンサルタントでもなく、経営プロフェッショナル集団であることで、ミッションやカルチャーを明確にできると考えています。それを1つにしてしまうと、バリューアップチームと投資チームのどっちが偉いとか、経営者をやりたくて入社したからコンサルティングは嫌々やるとか、内向きの議論になりがちです。世の中への価値貢献として目指す志向が違うのであれば集団として分けた方が良いと考えています。これはMIRARGOに限らず。「自分は生業として何がしたいのか」という視点で同じ志を持つ仲間で会社が組織され、選ばれる時代になっていくと思います。加えて、イグニション・ポイントグループは、コンサルティングも投資もそれぞれ組織があるので、そこと連携していけば十分に同様のことが実現できるというのもありますね。
入江
貴社はスペシャリストよりも経営全般ができる経営人材を投資先に送るのですか?
小寺
経営人材のマーケットを紐解くと、第2創業期のターンアラウンドマネージャー、事業承継を含めた中継ぎ、上場請負人のようなプロ経営者、アーリーフェーズの経営者等に細分化されます。それぞれ要件が異なり、IPO直前のスタートアップではCMOやCFO等のファンクションに特化した専門家が必要ですが、その前のアーリーフェーズのスタートアップに僕たちは特化していて、このフェーズで必要なのはCxOよりも事業化・組織化・次のラウンドに向けた資金調達戦略を描くために何でもできる総合格闘技型なので、そのタイプの経営人材を集めています。MIRARGOでは、50~60代のコーポレート領域の専門家をアドバイザリーボードとして揃えることでコーポレートの知見を補完し、経営人材が彼らのアドバイスを借りながらハンズオンで前に進められる状態にしていこうと思っています。IPOに詳しい人が欲しい場合はIPO経験が豊富なアドバイザーに相談する等のつながりを創るのが第1弾です。第2弾は会社としての連携で、デザインファームとの連携によりPRを投資先にテコ入れしたい時に相談できる等、各ファンクションのプロフェッショナルファームという形を創って経営人材本人が全部オーガナイズできればかなりの馬力が出せると思います。
入江
小寺さんと近しいキャリアの方が貴社で働く魅力は何でしょうか?
小寺
経営のプロとして生きていきたい方は、同じ想いを持つ人が創っているので面白いと思います。成長したい・稼ぎたいという形をどう選ぶか。給料を上げて権力を持ちたいならプロフェッショナルファームが良いですが、自分で企業価値を生み出した分の報酬を得る世界が面白いならプロ経営者が向いています。パフォーマンスが出せるかどうかは「アビリティ×環境×心理的安全性」の掛け算だと考えていて、アビリティが無いならやめたほうが良いですが、ダメな環境で頑張っても難しいし、給料やキャリアに悩みながら100点を出すのも厳しい。MIRARGOでは環境と心理的安全性を提供でき、あとはアビリティを発揮するだけなので活躍できる確度も上がり、実績がついて更にやれる好循環が生み出せる。将来、MIRARGOの経営人材が日本の経済界で様々な企業のプロ経営者として活躍することを想像するとワクワクします(笑)。僕は本来経営をやりたいタイプですが、この2~3年は運営側として会社を創り皆さんに活躍してもらうミッションにコミットしています。まだ人数も少なく、クオリティも経験もこれからという段階なので、まさにこういうのが欲しかったという方と一緒に創っていければと思います。
入江
応援しております。最後に、ポストコンサルの方々へアドバイスを一言お願いします。
小寺
僕がアクセンチュアに入社した頃、当時エグゼクティブ・パートナーの田村誠一さんにゆくゆくは経営をやりたいと言ったら「じゃあ早くやりなよ」と。自分でやらない限り「いつか」は来ないので、やりたいことがあるなら絶対やった方が良いです。時代の流れが速すぎて、今準備しても次につながらない可能性があるので、未熟ながらも飛び込むことはとても大事だなと。僕はかつてユニゾンに言われた「投資やりたいの?経営やりたいの?(更に僕が付け加えるなら)コンサルやりたいの?」が未だに響いていて、それぞれ全く違う独立した仕事でワクワクするポイントも異なります。キャリアに悩んでいるならまずその問いに向き合うことが重要で、それが決まればあとは「早くやりなよ」に尽きますね。


構成:神田 昭子
撮影:櫻井 健司

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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