なぜ官僚を辞めたのか?そしてコンサルタントとして目指すものは何か?

Vol.04

なぜ官僚を辞めたのか?そしてコンサルタントとして目指すものは何か?

株式会社コーポレイトディレクション

パートナー長尾 行造氏

公開日:2012.12.15

インタビュアー 入江

日本をベースとする独立系経営戦略コンサルティング会社、コーポレイトディレクション(CDI)パートナーの長尾行造氏は、もともと経済産業省で産学連携や石油政策に携わってきた人物である。官僚の世界からコンサルティングファームに転職し、パートナーに昇進するまでには何を考え、どのようにキャリアを切り拓いてきたのだろうか。

Message

官僚の世界からコンサルティングファームへ

入江
長尾さんは経済産業省からコンサルタントの世界へキャリアチェンジしたご経歴をお持ちですが、経産省ではどのようなお仕事をされていたのですか。
長尾
最初は工業技術院(現経済産業省産業技術環境局)に配属され、産学連携の制度改正に一年半携わった後、資源エネルギー庁の石油部開発課(現同庁資源・燃料部石油・天然ガス課)で中東における石油権益に関する政府間交渉のサポートや、石油公団という特殊法人の建て直しなどを担当していました。
入江
官僚時代のお仕事をもう少し詳しく聞かせて頂いても宜しいでしょうか。
長尾
官僚にはレギュラーな動きとイレギュラーな動きの二つがあって、レギュラーの仕事は大きく三つに分けられます。一つ目は法律改正。二つ目は予算で、要は財務省との交渉。三つ目は国会対応です。工業技術院ではレギュラーな仕事が多かったのですが、石油部開発課ではそれらに加えてイレギュラーな仕事が乗っかってきました。たとえば産油国へ石油権益を求める一方、そのかわりにODAや国際協力銀行の融資を使ってさまざまなプロジェクトを提案するという仕事がありました。しかし中東の人との交渉はなかなか大変で、ビックリするかもしれませんが、半年かけて密に議論し一週間後に合意する算段ができたところで突然「アラーのお告げだ。今までの話はなかったことにしてくれ」と本当に言われたりするんです。文化の異なる人たちと交渉する難しさをそこで初めて体験しました。また、石油公団には税金を使って掘削しても石油が出てこない失敗プロジェクトがいくつかあったのですが、国としては投資したものがロスするわけですから、損失処理しなければいけません。そこにはさまざまな利害関係者がいるのでその調整を図ったり、国会から叩かれたりもするので根回しや理論武装をしたり。これは役人というより会社のリストラに限りなく近い仕事でした。
入江
国家の重要なお仕事を担当していた長尾さんがコンサルティングファームへ転職しようと考えたきっかけは何ですか。
長尾
一つは役所という組織に対する将来性が段々見えなくなってきたことです。役人叩きがだんだんひどくなり、何をやっても評価されない物足りなさ感がありましたし、官庁のいわゆる「偉い人」と話してもあまり魅力を感じず「将来、こういうおじさんにはなりたくない」とも思いました。天下りもどんどんなくなっていました。天下りとは自分の身を組織に委ねることで将来の面倒をみてもらえるというあり方ですが、もはや将来を組織に委ねることはできない状況になってきたわけです。ならば、組織に頼らず将来のリスクを自分で背負って戦っていける人間になりたい。そう思ったのが役所を飛び出すきっかけになりました。
なぜコンサルタントだったかというと、役所で働いていると日本というものを強く意識するんです。経産省で産業政策に携わるなかで、やはり企業の強さによって日本という国は成り立っていると実感しました。しかし今の霞が関の世界は内向きで、企業を強くするよりも自分たちの権益を守るような動きのほうが多く、それが私のストレスにもなっていました。だったら役所を飛び出して、日本企業を強くする仕事で自分のバリューを発揮したい。それを達成するにはコンサルタントが一番近いと考えました。

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「ワンストップで相談できるコンサルタント」を目指す

入江
役所を辞めることに周囲からの反対はありませんでしたか。というのも、役所の方でコンサルタントへの転職を希望しオファーが出ても結局、周囲の反対で断念するケースをたまに見かけます。
長尾
私の場合、反対はありませんでした。石油開発課にいた頃は年間に10日も休んでおらず、平日はほとんど毎日徹夜か朝5時帰りというひどい生活でしたから、妻は「もう少しまともな生活になるのね」という反応でした。周囲の反対で転職を断念する方についていうと、厳しい言い方になりますが、周りの人間を説得できない人は、おそらくコンサルタントには向いていないと思います。
入江
官庁からコンサルティングファームに移り、すぐに適応できましたか。
長尾
そこは非常に苦労しました。何に一番苦労したかというと、頭の使い方や目の付け所が根本的に違うところです。たとえば自動車産業を見るとき、各社の財務諸表を集めて平均値を出し「日本の自動車産業はこんな姿になっています」と説明するのが役人の考え方です。しかしコンサルタントは逆で、「トヨタは日産やホンダと比較してこんな特徴がある」というようにむしろ違いを見つけていく。レポートの書き方にしても、役人はできるだけ玉虫色の表現をして後で幅広く解釈できるような技術が求められますが、コンサルタントがそんなことをしたら「アホか!」と怒られます。伝えたいことをビビッドに、シャープに書く技術がコンサルタントには求められるのです。そうした違いは言われたからといってすぐに転換できるものではありません。やはり役人としての物事の見方や文章の書き方が身体に染みついていて、しかもそれが正しいと思ってやってきたわけですから、コンサルタントのやり方は頭で理解できてもなかなか腹落ちしない。「本当にこのやり方でいいのか。いや、コンサルタントの世界に来たのだからこっちのやり方に合わせなければいけないんじゃないのか……」。そんな葛藤が続きました。中途で入ってくる人を見ていると、同じ悩みを抱えますね。やはり前の会社、前の業界の仕事の仕方が染みついていると、それを脱ぎ捨てるまでにはそれなりに時間がかかります。私は役所に四年間いましたが、いま振り返ってみると自分が自然にコンサルタントの目線で物事を考え、動けるようになるまでには同じくらいの時間がかかったかもしれません。
入江
長尾さんは数年前にCDIのパートナーになられましたが、パートナーに昇進できた要因はどこにあるのでしょうか。
長尾
私がコンサルタントとして強く心がけてきて、いまもそうしているのは「人と情報のハブになる」ことです。コンサルティングのスタイルは人それぞれあると思いますが、私は「ワンストップで相談できる人間になりたい」と思っています。誰かが悩みを抱えたとき、「まず長尾に相談しよう」と言われる存在でありたい。そのためには自分に知識や経験がないことでも、何らかの形でアウトプットを出せなければいけません。それには社内の人間だけでなく、社外の人も含めて自分が「人と情報」を豊富に持っていることが重要になってきます。そうすればどんなテーマを相談されても「この話ならあの人に相談すればすぐわかる」、あるいは「この人とあの人のスキルを組み合わせたらこんな解決策ができる」という形でアウトプットを出していけるからです。「人と情報のハブになる」意味はそこにあり、しかも人と情報は集まりだすと雪だるま式に大きくなっていきます。常にワンストップで相談される人間であろうとして、人と情報のハブを大きくしていったことで売上が伸び、その結果としてパートナーになったのだと思います。
入江
なぜ、「ワンストップで相談できる」コンサルタントになろうと志したのですか。
長尾
いまのコンサルタントはどんどん専門特化が進んでいます。それは経営が非常に複雑化したことの反映です。一昔前は人もモノもお金も国境を越えるのが大変でしたし、情報化もこれほど進んでおらず、経営者は限られた世界のなかで、相当ゆっくりした時間軸でP/Lを良くすることを考えていればよかった。しかし現在は競争が激化して世界中で戦うようになり、コンプライアンスや情報化、M&Aといったテーマも考えなければいけません。そのため、経営をサポートするのに必要な知識の幅が広くなり、コンサルタントも専門特化していく一方で、経営者のよろず相談というか、体に横串を刺し、統合して相談できるような機能が失われてきました。なので私は、難しい目標ではありますが、ワンストップで何でも相談できる「ジェネラリストのスペシャリスト」になろうと考えました。

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CDIの魅力は成長機会の豊富さ

入江
コンサルタントという仕事の醍醐味は何ですか。
長尾
コンサルタントを外形的に定義すると「アセットを持たないでビジネスをする人」と言え、極めてあいまいで幅広く解釈できる仕事です。定義の自由度が高く制約が少ないということは、自分が目指すコンサルタント像を自分で設計できることをも意味します。誰かが決めた画一的なコンサルタント像に自分を合わせるのではなく、さまざまなプロジェクトの機会を通じて知見を広げたり、先輩のやり方やポリシーを吸収したりしながら自分なりのコンサルタント像をつくっていく世界なんです。それを楽しめるのがおそらくコンサルタントという仕事の一番の醍醐味で、逆に自由度が高いがゆえに自分の信念を貫き続けられないと形にならない難しさもあります。
入江
信念がないと流されてしまう危険性もあるのですね。
長尾
「会社に育ててもらう」「決められたコースに乗って昇進する」という考え方をする若いコンサルタントを見かけることがありますが、そういう発想でコンサルティングファームで働くと、安くて便利な労働力にしかなれないと思います。そうではなく、自分がなりたいコンサルタントの姿を描き、ファームやプロジェクトに対しWin-Winの感覚を意識して、自分のやりたいことと貢献できることを実行していく。そうやって自覚的に自分のキャリアパスをつくっていくことがファームでは重要です。
入江
CDIに向いているのはどういう人材ですか。
長尾
CDIは会社から「こういう風に育ちなさい」ということはなく、「私はこうなりたい」というものを持っていれば、それを実現するために必要な経験を積むことができる組織です。だから自分の物差しをしっかり持って、少なくとも三年間は頑張り続けられる人がよいと思います。他人からの評価で自分の存在をアイデンティファイする人は、おそらく使われるだけになってしまうでしょう。自分の目指すゴールがあって、そこに向かって成長しようとすると一時的にマイナス評価を受けるかもしれないけれど、そういうことを気にせず自分の信念を貫き続けられるかどうか。とても難しいことだと思いますが、それができる自信のある人には向いていると思います。
外資系ファームの東京オフィスはグローバルのなかの一ブランチですが、CDIは東京が ヘッドクオーターですべての物事がここで決まります。しかもCDIはコンサルティングファームでありながらベンチャー企業であるという特徴があって、他のファームでは売上やプロジェクト規模などさまざまな制約があるのに対し、私たちは何でもやれます。もし入社2 ~ 3 年目の人が「友人が経営するベンチャー企業の手伝いをしたい。しかし月20万円しかフィーが出ません」と言ったら、「他のプロジェクトに影響が出ないよう空いている時間をうまく使ってやりなさい」と我々は積極的にサポートします。このように自分の軸がしっかりあれば、いくらでも機会を与えられるのがCDIの魅力です。

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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