Vol.59

この世に生きた証を残せることが、当社の最大の魅力だと思う。本当に良い商品をつくっていると信じられるから、今の自分は「ユニクロで働いている」と誇りを持って言える

株式会社ファーストリテイリング

人事部長武山慎吾氏

インタビュアー 入江・永田

「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」を企業理念に掲げ、日本発のグローバル企業として、世界No.1のブランドを目指す株式会社ファーストリテイリング(以下、FR)。コロナ禍においても危機をチャンスと捉え、戦略的なグローバル旗艦店や大型店を銀座・原宿・横浜にオープンし、Eコマースを更に拡大すべく有明プロジェクトを推進する等の挑戦を続けている。同社で人事部長を務める武山慎吾氏に、これまでのキャリアの歩みや仕事に対する価値観の変化、同社でキャリアを積む魅力についてお話を伺った。

Message

ミーハーだった商社・戦略コンサル時代。子供が生まれたことがキャリアの転機に。

入江
初めに、これまでの武山さんのキャリアについて簡単に教えていただけますか?
武山
新卒で三菱商事に入社しました。世界を股にかける営業マンになりたかったものの、配属されたのはリスクマネジメント部門で、事業投資管理や与信管理等の管理型の仕事をしていました。

その後3年弱でBCGへ転職するのですが、当時プライベートでショックな出来事があって。同僚や上司から「お前と一緒にいるとこっちまで悲しくなるから暫く休め」と言われるくらい負のオーラ全開でした。それで、ガラッと環境を変えた方が良いのかなと転職したのが実情です。
入江
そうだったんですね。なぜBCGを選択したのですか?
武山
僕は元々ミーハーなところがあって、三菱商事に入る時も親が喜ぶとか、友達に自慢できるとか思って選んでいて。次のキャリアを選ぶ時にもその思いがあり、伝統的な大企業ではなくても外資系金融やコンサルならキャリアアップだと思ってもらえるし、年収も下がらないと考えてBCGの選考に進みました。

すると、ケース面接での議論が面白くて知的好奇心を刺激された感覚があり、すごい人たちだなという思いと同時に、そこに食らいつけていることも「やればできるのではないか」という自己肯定感に繋がり前向きな気分になって、環境を変える意味でも良いなと思い、BCGに転職しました。

BCGには6年強、在籍していて、アソシエイトから入り最後はプロジェクトリーダーを1年半経験しました。業界としてはユーティリティと呼ばれる電力・ガス・水道等のインフラ系と金融のプロジェクトが中心でした。ターンアラウンド系の長期のプロジェクトから、中期戦略策定や新規事業開発なども幅広く経験させてもらいました。
入江
なるほど。その後、FRに転職されたのはどのような経緯だったのですか?
武山
これもプライベートな事情ですが、BCGに入って5年目に結婚して、妻が妊娠したんです。僕自身、5才で父親を亡くしており母子家庭で育ったので、自分に子供が生まれたらできるだけ一緒に子供と過ごしたいと思っていて。BCGの仕事は掛け値なしに楽しかったのですが、平日は夜遅くまで働き土日も仕事がデフォルトだったので、この働き方は子供ができたら続けられないなというのが唯一の転職理由です。

FRの選考の中で人事をやってみないかという話があって、想定外だったものの自分で本を買って研究してみたら、意外に人事って戦略的なこともやるんだなと。確かにコンサルのプロジェクトを通じて、計画も大事だけれど結局はやる人が全てということは体感していましたし、PLとして人の育成やアサインを考えていたのも突き詰めると人事だったのかと分かって興味を持ちました。

転職・キャリア支援を申し込む

本当に良い商品×社長のビジョン×戦略=仕事が楽しく、会社に誇りを持てる。

入江
柳井社長との初対面の印象はいかがでしたか?
武山
今でも鮮明に覚えています。「僕も経営者になりたいんです」と言ったら、強い口調で「君ね、本当に経営者になりたいんだったら今すぐコンサルなんてやめてくださいよ」と。僕が「経営にとって人事は大事だと思います」と話すと、「人事が大事とかそういうことじゃない。経営の半分以上は人事なんです。私は人生の半分以上、人のことしか考えていない」と物凄い熱量で言われましたね。

それを聞いた時に、一瞬一瞬を本気で生きている人だと思い、真剣に向き合ってもらっていると感じました。これだけ真剣に人のことを考えている経営者の近くで人事の仕事ができるのは面白いだろうなと一気にワクワクしてきて、入社を決めました。
入江
柳井社長のお言葉はとても刺さりますね。FRで実際お仕事されてみていかがですか?
武山
もちろん大変なことも色々とありますが、非常にやりがいを感じながら仕事をしています。なぜやりがいを感じられるかと言うと、1つは会社のビジョンや価値観、生み出す商品やサービスそのものを素直に良いなと思えていること。商社とコンサルという業態で生きてきたので、30才も過ぎて恥ずかしいのですが、FRに入って初めてその感覚が理解できました。

「服を通じて世の中を良くしたい」という想いを社長はもちろん社員一人一人が信じていて、会社の意思決定や仕事の仕方一つ一つにも色濃く表れています。今でも商品やサービス一つ一つにこめられた、それぞれの社員の想いやこだわりを知ることによって、自分の会社をどんどん好きになっていきます。

もう1つは、人事という仕事が思った以上に知的でチャレンジングだということ。人事の仕事は、突き詰めれば優秀な人材を採用して、大きく成長してもらい、できるだけ長くこの会社で働きたいと思ってもらうことですが、これをやろうとした時に様々なレバーがあることが分かってきました。仮にそのレバーが100個あるとしたら、自分はまだ5個くらいしか引くことができていない。でもそのたった5個のレバーだけでも引くことは難しいし、できれば大きな達成感もある、そしてまだまだやれることが山ほどある。これが本当にできたら会社をもっと成長させられるという莫大な白地にワクワクします。
入江
お話を聞いていると本当にユニクロが好きなことが伝わってきますが、なぜそこまで会社を好きになれたのですか?
武山
1つは、本当に良い商品をつくっているからだと思います。毎日全身ユニクロの服を着ていて良さを実感するというのもありますし、商品にこめた想いを社内の様々な人たちから聞く機会も多く、ものづくりの過程も知る中で、本当に良いモノをつくっていると信じられることが大きいですね。そして、それがグローバルで多くの方に当社の服を買っていただけているという事実の裏付けで支えられている。

もう1つは、社長の柳井の存在です。柳井の話を聞いていると、服を通じて世界を豊かにしたいと本気で思っていることが伝わってきます。その壮大なビジョンを実現するためには戦略的に競争に勝っていかなくてはいけない。お客様から信頼をいただき愛され続けるためには有明プロジェクトを成功させ、全社改革を実現する必要がある。ビジョンを裏打ちする戦略も含め社長自身が熱量をこめて語るからこそ、この会社の可能性を信じられるのだと思います。
入江
柳井社長は、武山さんから見てどんな方なのでしょうか?
武山
意外かもしれませんが、とても慎重な一面があります。最後は自分ひとりで決断するため意思決定は早いのですが、決定に必要と思われる人たちの意見には耳を傾けます。社内外の様々な人たちに意見を求め、経営やアパレル、ファッションはもちろんのこと、地政学や歴史、テクノロジーに至るまで幅広いジャンルの本を読んで勉強しているようです。

出来得る限りの意見や材料を揃えて理詰めで考え、最後は自らの直感も信じて意思決定をする。よく1勝9敗と言っていますが、勝つことは簡単でないと分かっているからこそこのような努力をしているのだと思います。

また、経営者としてとても厳しい面もありますが、根は優しく人情味に溢れた人です。会社の黎明期や拡大期に貢献してくれた社員に関しては、会社のフェーズや求めるスキルセットが変化した現在も「この人たちがいたから今のユニクロがあるんだ」と変わらずサポートしています。プライベートな事情で厳しい困難を抱えることになってしまった社員に対しても、会社として個人として出来得る限りのサポートしてくれます。偉そうにふんぞり返ってもおかしくない立場にいるにもかかわらず、一人一人の人生に親身になって向き合える、そんなところを私はとても尊敬しています。

転職・キャリア支援を申し込む

この世に生きた証を残せるか。世界を本気で変えたいなら、当社にはその舞台がある。

入江
ポスト商社のキャリアとしての貴社の魅力をお聞かせください。
武山
「完全実力主義」と「全員経営」が挙げられます。商社で転職を考える人の多くは上が詰まっている感覚があるかと思いますが、当社はバックグラウンドや年齢に関係なく、実力次第で昇進が可能です。当然、裁量が持てるのは真の実力者のみであり、決して甘い世界ではないですが、商社とは全く異なる環境と言えます。

また、商社の場合は特定の商品群や細かい機能に組織が細分化され、大きな仕事をやるには膨大な時間がかかり無力感を覚える人も多いと思いますが、当社では組織の壁を越えて仕事をすることが評価されます。

団子屋が団子の味だけではなく、価格や店の雰囲気、接客、のれんなど全ての要素を考慮して経営するのと同様に、本当にお客様や会社のためにより良くするにはと、自分の役割の範疇を越えて様々な人を巻き込んでいくことが当社では認められています。

とは言え、当社も今では大規模な組織となっていますので、組織の壁を越えていくには相当の馬力と「この人が言うなら」と相手に思わせるだけの能力と人間力が求められます。
入江
ポストコンサルのキャリアとしては、貴社の環境はいかがでしょうか?
武山
コンサルと当社は、セルフドリブンという意味で似ています。特に全社改革リーダーは、未経験領域でも入社2日目であっても、周囲を見渡して状況を把握し、課題やチャンスを見極め自ら考えて行動することが求められます。コンサルタントがクライアントの大きなお題をベースに自分が何をすべきかから考えるのと同様の仕事の進め方なので、そこは僕がコンサル出身で良かったと感じる部分です。ただ、コンサルと違って短期間で期日を切られていないので、腰を据えてテーマに取り組めます。

また、我々は自分の仕事に最終責任を負うため、市場やお客様からどう評価されるのかというヒリヒリ感が常にあり、当事者意識を持ってリアルな環境で戦いたい人にはお勧めです。特に当社はコングロマリットではなく、服をつくって売るという事業にフォーカスしており、家族や友達も使う身近な商品でもあるので、自身の貢献をリアルに体感しやすいという意味では事業会社の中でも際立った存在かと思います。
永田
戦略コンサルの方は様々な選択肢がある中で、貴社の魅力はどんな点でしょうか?
武山
この世に生きた証を残せるということでしょうか。PEやスタートアップに行っても歴史をつくれるかどうかは運に身を任せるような確率になってしまうと思います。「世界を良くしたい」、「世界を変えたい」と本気で思っている人には、当社ならその舞台を用意できます。

単に高い報酬やキャリアの広がりだけを求めるなら当社でなくても良いと思いますが、個人的にはそこに人生の本質は無いのかなと。僕も当初WLBを求めて入ったので偉そうなことは言えませんが(笑)。そこは僕も入社してから気づいたことですね。
永田
どんな方が真の実力者として貴社の中で活躍できるのでしょうか?
武山
考える力があり、自ら手足を動かせて、柔軟性が高い誠実な人ですね。いくら頭が良くても口しか動かない人はダメですし、周りから信頼される誠実さも重要です。先ほどの組織を超えていく話にしても、私心ではなく会社やお客様のためにやっていると周囲から思われる人である必要がある。

また、柔軟性についてはこれだけ世の中もめまぐるしく変化する中で、本当に自分が正しいのか、違う考え方もあるかもしれないということを常に頭の片隅に置きながら、心の余裕を持って自分を変えていけるような人でないとうまくいきません。
永田
アパレル業界未経験の方でも本当に全社改革は推進できるのでしょうか?
武山
確かに服作りなど未経験では難しい領域もありますが、全社の視点で考えた時に、例えば、どう生産効率を上げるか、物流のリードタイムを縮めるか、店舗オペレーションをスムーズにするか、コロナの影響による消費者の行動変化も踏まえて出店場所をどうするか等の課題に対しては、SCM、オペレーション改善、商圏分析という機能がより重要になります。機能の観点から全社の大きな改革にどう貢献していくかにおいて、服やアパレルの知見はあるに越したことはないですが、入社時に無くてもまったく問題無いです。
入江
最後に、ポストコンサルの方向けにキャリアアドバイスをお願いします。
武山
僕もコンサルで鍛えてもらったので感謝していますし、仕事も本当に楽しかったです。ただ振り返ってみると、自分の人生を生きていなかった感じがありました。コンサルをライフワークだと信じてやれる人は魅力的ですし、実際そういう人たちも見てきました。

一方で、多くの人は頭や要領が良くてコンサルができてしまうからやっている。周囲からも羨ましがられるし、報酬も悪くないしという雑念が入って、本当に自分がやりたいことに蓋をしているケースもあると思います。自分がどういうキャリアを歩んでいきたいのか素の気持ちで考えてみた上で転職するのも良し、やっぱり自分はコンサルがやりたいんだと思えればそれも良しです。

僕自身は今の方が良い人生を生きていると自信を持って思える。この価値観を押し付けるつもりは無いですが、同じように感じる人がいるなら「何のために生きるのか」、「自分が死んだときにどう思われたいのか」、「子供に自分をどう伝えたいのか」に嘘偽りなく向き合って欲しいと思います。


構成:神田 昭子
撮影:櫻井 健司

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

転職・キャリア支援を申し込む

※携帯キャリアメール以外のアドレスをご入力ください。
※outlook.com、outlook.jp、hotmail.com の場合メールがエラーとなる事象が発生しておりますため上記以外のアドレスを推奨させていただいております。

30秒で完了 エントリー

CLOSE