不完全な情報の中で意思決定する。戦略と実行を同時に回していく。コンサルタントでは味わえなかったエキサイティングな経験の連続。 不完全な情報の中で意思決定する。戦略と実行を同時に回していく。コンサルタントでは味わえなかったエキサイティングな経験の連続。

Vol.31

不完全な情報の中で意思決定する。戦略と実行を同時に回していく。コンサルタントでは味わえなかったエキサイティングな経験の連続。

楽天株式会社

グループ執行役員 ECカンパニー企画部部長 兼 C2C事業部部長松村 亮氏

エンジニアから戦略コンサルタントに転身し、その後、楽天に参画した松村氏。入社後はしばらく社長室にてトップの三木谷氏とともに全社的な経営課題に関わり、現在は、同社の中核事業であるオンラインショッピングモール「楽天市場」の企画部門の責任者を務めている。なぜ松村氏は楽天を選び、ここでどんなキャリアを得ているのか、詳しく話をうかがった。
「自然科学」よりも「社会科学」を。エンジニア、戦略コンサルタントを経て楽天に入社。
入江
まずは松村さんが楽天に入社されるまでのご経歴をお聞かせいただけますか。
松村
大学卒業後、最初はエンジニアとしてキャリアをスタートしました。新卒で外資系のIT企業に入社して、主に研究開発の開発側のチームに所属し、世の中で生まれた新しい技術をビジネスに実装していくプロセスに数年ほど携わりました。その後、思うところがあって外資系の戦略コンサルに転職し、途中留学や海外オフィス勤務などを挟みながら、コンサルタントとして国内外のさまざまな案件に携わり、そして2年ほど前に楽天に移籍しました。
入江
エンジニアから戦略コンサルに移られたのは、どのような理由からですか。
松村
社会に出て実際にエンジニアの仕事をする中で、自分は「自然科学」より「社会科学」のほうが好きなんだなと気づいたんです。エンジニアというのは自然科学の領域で、閉じた世界で論理を突き詰めていく仕事。それはそれで面白かったのですが、実際の社会というのは色々なステークホルダーが存在して複雑に絡み合い、単に優れたものを創ったからといって世の中で使われるようになるわけではない。ごく当たり前の事実なのですが、実際に働く中で改めてそのことを認識させられました。それで、世の中のさまざまな複雑な要素をうまくドライブしながら、最終的な変化の実現に繋げていく社会科学的な仕事の領域のほうが面白いのではないかと感じるようになり、自分の立ち位置を技術側から事業側に移そうと思うようになりました。そうしたキャリアチェンジの第一歩として、クロスインダストリーで多種多様な経営アジェンダに関われる戦略コンサルティングという仕事があることを知り、移籍しました。
入江
コンサルではどんなキャリアを積まれたのですか。
松村
事業戦略、マーケティング戦略の策定や、ターンアラウンド、M&AやPMIなど、幅広いテーマに関して、様々な業界の案件を手がけました。海外のコンサルタントと協業する機会も増え、自らも海外のオフィスで働いてみたいと希望し、しばらくロンドンオフィスに移籍したりもしました。また、策定した戦略のインプリまで関わっていくことも多かったので、色々なステークホルダーが絡んで想像しなかった事態が想定しなかったタイミングで起きたり、、というのも日常茶飯事でした(笑)。そういうことも含めて難解なプロジェクトをドライブして着地させるというのは、今思い返しても非常に面白い経験でした。社会科学的な領域で仕事をする醍醐味を大いに味わえたと思います。
入江
楽天に入社されたのはどのような経緯だったのでしょう。
松村
事業側でのキャリアをさらに一歩進めて、一人称で事業に関わりたいと思ったというのが大きな理由ですね。その場として楽天を選んだ理由は3つありまして、ひとつは単純に自分が楽しそうだと思えるビジネスフィールドだったから。エンジニアがキャリアのスターティングポイントだったので、何かしらの形で技術に関わっていたいという気持ちがやはり根本にはあって、なかでもネットの世界に興味を持っていました。また、コンサルタント時代にB(Business)の領域、C(Consumer)の領域、G(Government)の領域も携わりましたが、個人的にはCの領域が一番面白かった。それで“ネット×C”のフィールドがある楽天に興味を持ったのです。2つ目は、難しさを覚悟の上で「崇高なビジョン」を追い求めている企業だと思ったからです。例えば、ECでは、1st Partyとよばれるリアルの小売業をネットに置き換えるモデルの方が、よりシンプルで効率的です。しかし、楽天はエンパワーメントというビジョンのもと、4万を超える店舗をアグリゲートし、リアルにはなかった魅力的な空間を生み出しています。もちろん、このモデルはより複雑で、例えばサービスの「統一感」を出していく難易度などはより一層高まるのですが、それは百も承知の上で、社会的な意義を見出し挑んでいる、そういう姿勢に惹かれました。3つ目は、これまでのキャリアであまり経験してこなかった「何か」を、楽天という組織では経験出来そうだと直感したからです。同じ業界の他の大手企業からもオファーをいただいたのですが、楽天にはエンジニアやコンサルの世界では経験したことのない、ある意味新鮮なカルチャーや組織のダイナミズムがあると感じました。敢えて逆張りで選んだという感じでしょうか。

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コンサルタントでは得がたい、真のリーダーになるための力を日々鍛えている。
入江
松村さんのお話ですと、それまでご自身が得られなかったものが楽天にあるとお考えになられたとのことですが、具体的にはどのようなことなのでしょう。
松村
前職のコンサルタントで手がけてきたのは、主にリアルなビジネスを営む大企業に向けて、戦略立案から実行まで各フェーズをシーケンシャルに進めていく案件でしたが、面接で話をうかがうと、楽天が手がけるネットビジネスはサイクルがものすごく早く、売上や利益の状況に応じて、中長期の施策とともに、デイリーベース、アワリーベースで課題を捉えてアクションを打っていくような世界なんです。戦略立案と実行がよりシンクロしていて、投資を決めて回収まで10年、20年間待つような重厚長大な事業とは大きく異なります。私はコンサルタント時代、「ビジネスは科学のみ」と思っていて、例えば、ミンツバーグ(経営学者)が説く「ビジネスマネージャーは科学的な根拠に基づいてディシジョンメイキングするだけではなく、その上で+αの感覚をもって判断する」という経営のアート的な要素など全くピンとこなかったのですが、楽天は常に不完全な情報の中で意思決定しているんです。そうしなければこの業界では事業のサイクルについていけず、競争に勝てない。それは、これまでの自分のキャリアで身につけてきたスキルやケイパビリティにはないものでした。ファクトをトコトン分析して意思決定することはファンダメンタルとして普遍的にとても重要なことは言うまでもありませんが、同時に不完全なものでもその時にあるベストな情報やEducated Guessをもとに責任を持ってジャッジできる「+αの力」や「胆力」がないと、おそらくこうした実業の世界でリーダーは務まらない。そう考えて、ここに参画しようと決意したのです。
入江
楽天に入社後は、どのような業務をご経験されてこられたのですか。
松村
最初に配属されたのは社長室で、そこは私のようなコンサルタント出身者や投資銀行出身者などが集い、さまざまな経営課題に取り組むチームでした。入社後1年目は国内での新規事業の開発や、成長が停滞している既存事業の再構築などに携わり、そして2年目はアメリカに渡ってリージョナルヘッドクォーターの立ち上げを担いました。ちょうどアメリカで大規模な企業買収を立て続けに実施していた時期で、米国全体で事業をマネジメントしていくストラテジックな機能が必要とされており、その土台づくりに従事し、また並行して現地企業との提携などのディールにも関わりました。それが一段落した頃、社長の三木谷から突然連絡が入り、楽天市場の事業企画のために帰国するようにと指示を受け、現在は企画部門の責任者を務めています。楽天市場は2020年に10兆円の流通金額を目標に掲げており、そのためには成長カーブを、さらに鋭いものにしていかなければなりません。その目標へ向けて現在、三木谷をはじめ役員たちと毎月合宿をして議論を重ねており、そこで導き出された戦略を、事業部全体を俯瞰しながら現場をコーディネートし、実行に移していくことがいまの私のミッションです。
入江
たいへん濃密なキャリアを送っていらっしゃいますね。経営コンサルタントから楽天に転身されて、ギャップをお感じになられたことはありませんでしたか。
松村
楽天で求められるのは、不確実な要素がたくさんある中で走りながら戦略を立てて実行し、そのサイクルを高速で回していくこと。完璧なレポートを作ってエグゼクティブを説得し、それから実行に移していくという経営コンサルティングの仕事とは異なる部分もあり、やはり当初はとまどいましたね。また実行段階においても、コンサルタント時代もチームを持ってプロジェクトを動かしてはいましたが、メンバーはせいぜい数名から大きなプロジェクトでも10名程度。いまは100名ほどの企画部やジャンル戦略のチームをマネジメントする立場であり、組織を動かすドライバーが全然違うため、その要諦を掴んでチームを率いるのもチャレンジングですね。さらに、提携やJVなど、外部企業との交渉に関わる機会も多いのですが、コンサル時代にM&AのデューデリジェンスやPMIは何度も携わったものの、交渉の場に自ら臨むことはありませんでした。しかし、ここでは自ら矢面に立つことになります。米国でも実現まで至らなかったものも含めて、様々な交渉で当事者として前面に立ってきました。対峙するのはグローバル企業の百戦錬磨のリーダーシップやシリコンバレーの強烈なアントレプレナーで、なかなか一筋縄にはいきません。しかし、そうした場を自ら経験することで、交渉というのは合理だけでは進まず、エモーショナルな部分やタイミングなどの駆け引きも非常に大事だということをリアルに学びました。様々なギャップに直面しつつも、逆にそれが私にとってはエキサイティングです。

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不完全な情報の中で意思決定する。戦略と実行を同時に回していく。コンサルタントでは味わえなかったエキサイティングな経験の連続。 不完全な情報の中で意思決定する。戦略と実行を同時に回していく。コンサルタントでは味わえなかったエキサイティングな経験の連続。
これほど巨大なプラットフォームでビジネスができるチャンスは、そうはない。
入江
コンサルタントで身につけたスキルで、楽天に入社してからも活きていることはありますか。
松村
これはコンサルタントから事業会社に転身された方がみなさんおっしゃることだと思いますが、プロブレムソルビングのスキルセットに集約されると思います。「課題を発見し、解決する」ということを繰り返してきた経験は、どのようなビジネスでもファンダメンタルなので、社長室でも楽天市場の事業でも役立っています。あとは、若い頃から強烈なプレッシャーの中で働いて来た経験から、何が来ても良い意味で「何とかなるだろう」と思える心構えみたいなものでしょうか(笑)。
入江
お話をうかがっていると、松村さんは経営陣からの信任も厚いようにお見受けします。こうしてご自身が評価されているのは、何が認められてのことだとお考えですか。
松村
信任が厚いかは分かりませんが(笑)、楽天で評価されるのは、平易な表現ですが「激しい変化の中での結果へのコミットメント」だと思います。楽天が手がける事業は環境変化が激しく、今日決めたことが次の日には「前提が変わっている」ことも日常茶飯事です。そんな状況下でも、トップの意図を汲み取り、粘り強く複雑な要素をマネージしてMake things happenさせる。それを繰り返しきちんと果たすことが社内での信用につながると思います。
入江
御社は現在、コンサルタント出身者を積極採用されていますが、その背景は何でしょうか。
松村
会社が大きくなり、事業の多様化が加速しています。ビジネスのドメインも拡がっていますし、フットプリントもグローバルに拡がっています。そうした中では、事業を成長させるためのドライバーが複雑化してくるため、それらを正しく理解して、事業の方向性や組織をチューニングしながら大きなプロジェクトをリード出来るような、ビジネスリーダーがより多く必要とされているステージに入ってきています。そうしたポジションに、経営コンサルティングを経験してきた人材はフィットしやすいのだと思います。
入江
そうしたコンサルタント出身者が、楽天に参加する魅力は何だとお考えですか。
松村
個人的には、前に述べた様なコンサルタント時代に経験していなかったことにタッチできるのは大きな魅力です。さらに一般的な観点で言うと、このサイズのプラットフォームを触りながらビジネスができる場というのは、世の中的にもそう多くは存在しないということだと思います。楽天の会員数(ログイン会員数)は7,000万を越え、巨大なプラットフォームの上で小売や金融など人々の生活に根差したサービスを展開しています。それがゲームやメディアなどのプラットフォームビジネスとは決定的に異なる点です。このプラットフォームを少し革新するだけで世の中に大きなインパクトをもたらすことができ、人々の生活を変えることすらできる。また、三木谷のリーダーシップのもと、意思決定が非常に速いのも楽天の魅力です。エスタブリッシュな大手企業なら半年や1年ほどかけて意思決定するようなM&A案件が、即座にジャッジされることも珍しくない。このスピード感は気持ちがいいです。あとは、ダイバーシティが高い環境も刺激的ですね。色々なスキルセットを持つ人材がいますし、また国籍も実にさまざま。国内でこれだけ外国人と協業できる会社は稀有だと思います。
入江
ご自身は今後のキャリアをどうお考えですか。
松村
特に明確なゴールは設定していないんです。10年後のことなどわかりませんし、考えてもあまり仕方がないと思っています。でも、2~3年後はある程度想像できるので、そこで自分がエキサイトしていられるかどうかという観点で、いまの自分を選んでいます。楽天という会社には、自分がこれまで経験してきたものと違う要素が多くあり、しばらくは新しいことを吸収して楽しめそうだと、そう思って飛び込んだというのが本心です。
入江
理想像があって逆算しているわけではないんですね、経験していないことをやるのが楽しい、と。
松村
はい。コンサルタントから事業会社への転身を考えている方のなかには、いろいろ思い悩んで踏み切れずにいる人もいると思います。確かにファームに身を置いていれば、より合理的なルールの中でパフォームし続ければ生き残っていけますし、事業会社に移ると想定外のこともたくさん起こるでしょうから、果たしてそこで本当に自分が望むようにキャリアアップしていけるのか、決断が慎重になるのも無理はないと思います。ただ、必要以上に細かく考えてもあまり意味がないとも思います。大抵の場合、想定通りにはいきませんから(笑)。アンラッキーなことが起きたらしょうがない、ぐらいの気持ちで「自分がエンジョイできそうだ」と感じた環境に思い切ってベットしたほうがいいこともあるだろうと。考えることは重要ですが、分からないことを必要以上に悩んでも、せいぜい失敗する確率が10%から8%になるぐらいなもの。コンサルタント風に言えば、考えても分からないものは論点とは言わない、という感じでしょうか(笑)。それに人生の時間を費やすのはとてももったいないことだと思いますから。

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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