投資ファンド、企業再生、中国ビジネス――常に時代の先端を行く仕事ができる理由とは?

投資ファンド、企業再生、中国ビジネス――常に時代の先端を行く仕事ができる理由とは?

Vol.02 後編

投資ファンド、企業再生、中国ビジネス――常に時代の先端を行く仕事ができる理由とは?

シティック・キャピタル・パートナーズ・ ジャパン・リミテッド

日本代表中野 宏信氏

エンジニアからMBA留学を経てキャリアチェンジし、日本における黎明期の投資ファンドや更生会社の経営者、産業再生機構などを経て現在、中国系ファンドの日本代表を務める中野宏信氏。その時々の時代における先端的な仕事ばかりできる理由は、果たしてどこにあるのだろうか。

Contents

中国系ファンドへ移った理由

丸山
再生産業機構で多くの企業再建に取り組まれた後、2007年に中野さんは中国系のシティック・キャピタル・パートナーズ・ジャパン・リミテッドの日本代表に就任されました。就任はどういう経緯で決まりましたか。
中野
丸紅さんがシティックの日本ファンドの投資家の一つなのですが、丸紅さんはアドバンテッジパートナーズのパートナーでもあり、アドバンテッジがファンドを始めるときのキーマンになった人がいます。その方からシティックを紹介されました。
丸山
アドバンテッジ、産業再生機構、シティックとすべて人のご縁で動かれているのですね。シティックに関しては当初、どのような印象を持たれましたか。
中野
最初は断るつもりでした(笑)。プライベートエクイティはすでに競争が激しくなっていたので、これから参入しても難しいと思ったのです。しかしお世話になった方のお誘いだったので、会わずに断るわけにはいきません。で、とりあえず一度お会いしてみたら「もう少し話を聞いてみよう」と考え直しました。
丸山
中国最大級の金融・産業コングロマリットであるシティック・グループの力を活用すれば、投資した企業の業績を中国マーケットで伸ばす、というかけ算ができるからですか。
中野
そうです。最初は中国のファンドと聞いて「私は中国に縁もないし中国語もできないし…」と思っていたのですが、日本企業が今後成長するためには中国市場が必要です。それに、実際にお会いしてみるとトップの人柄、見識、哲学もしっかりしていました。欧米系のファンドでは日本の事情を理解しようとせず、自分たちの成功体験を押しつけてくることがよく起こりがちですが、シティックのトップの二人は日本で働いたことがあり、「日本はこういうところだから、しっかりした日本人に任せたほうが成功する」という考えを持っていました。その方針は正しいし、私に任せてもらえるならやりがいもあります。もしうまくいかなかったとしても中国とご縁ができて、自分の活動の場を広げられれば将来も何とかなるでしょう。だったら失敗しても「ま、いいか!」と思いました。経営者は失敗したときのシミュレーションをしておくことが大事ですからね(笑)。
丸山
産業再生機構のコンサルタントからファンドに移って苦労したことはありますか。
中野
シティックの投資戦略にはコンサルタントのバックグラウンドがぴったり合います。ファンドによってはファイナンスやリーガルに重きを置くところもあります。レバレッジを大きくかけて、大きなリターンを狙うファンドが流行った時代もありました。しかしシティックのやり方はしっかり事業の素質を見て健全な会社に投資し、中国で業績を伸ばしてなおかつ日本の業績も改善し、リターンを得るというものです。そこでは事業や経営を見る目、企業の業績を伸ばすノウハウ、マネジメント力が重要なので、コンサルタントの経験が役に立つのです。

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面白い仕事をできる秘訣は「人の縁」

丸山
逆にコンサルタントで身に付けた経験や能力で、事業会社のトップになったときに役立ったのはどんなことでしょうか。
中野
コンサルタントと経営者は別物です。私がコンサルタントとして関わった顧客は大企業で社員もそれなりにしっかりした会社ばかりでしたが、社長をやったのは売上が100億円くらいの規模の会社です。パスやトラップなど基礎技術のしっかりしているサッカーチームとそうでないチームでは、監督のやるべきことや苦労することは全然違います。経営もそれと同じで、コンサルタントをやっているときは基礎技術のある企業がお客様でしたから「こうやればいいんですよ」とアドバイスすればよかった。しかし社長をやった会社はパスもトラップもうまくできなかったし、そもそも試合に来ない社員もいました。そういう組織を預かって経営をするには、正しい戦略を描いたからといってその通り動いてもらえるわけではないという苦労がありましたね。
したがってコンサルタントの経験が経営に直接活かせる部分がたくさんあるとは言えませんが、もちろん役立つこともあります。とくに自分のメッセージをわかりやすく社員に伝えることに関しては、コンサルタントの経験が役に立ちました。会社のなかにはさまざまな水準の、さまざまな立場の人たちがいます。いくらメッセージが正しかったとしても、相手に合わせてわかりやすく伝えないと意味がありません。
丸山
中野さんがシティックの日本代表というポジションに就くことができた要因は何だったと思いますか。
中野
結局、私の転職はどれも人に引っ張ってもらい決まっています。人の縁があったからアドバンテッジにも産業再生機構にも入れたし、シティックに引っ張ってもらうことができた。ですから、今のポジションにいる要因は「ご縁」です。
丸山
日本初であったファンドの運営や企業再生、中国ビジネスなど、その時々の先端的な仕事をしてこられたのはなぜでしょうか。
中野
私のキャリアは最終目的をハッキリして歩いてきたわけではありません。その時々のチャンスとご縁でいろいろな選択をしてきたのですが、結果として見るとその時代の先端をいく分野の仕事ばかりやってきました。それは自分で時代を切り拓いてきたというより、時代を切り拓いている人とのご縁があったからです。アドバンテッジではリチャード、産業再生機構には冨山さん。そういう時代の先端を走っている人に私は引っ張ってもらいました。
丸山
2007年に中野さんがシティックに移られたときと現在とでは、中国のイメージはだいぶ違います。当時としては海のものとも山のものともつかなかった中国のファンドに行く決断をできる決断力が、大きな秘訣のようにも思います。
中野
大した決断とは思っていません。要は新しいもの好きで怖いもの見たさがあって、「これから」というものにすごく興味が湧きます。戦略的に考えるというより、先端的なことをやっている人たちの話を聞き、「なるほど!」と思ったことをやってきました。そして、私を引っ張ってくれた方々は皆、能力も人格も素晴らしい人たちです。そういう人たちとのご縁を大切にすることが、やはり一番の秘訣かもしれません。声をかけられたからといって、誰にでも付いていっていいわけではないですよ(笑)。
能力だけある人は世の中にいっぱいいますが、能力も人格も優れていて、かつビジョンを持っている人はあまりいません。普通はそうした人物とはなかなかご縁を持てませんが、私は幸運なことにご縁を持たせていただき、チャンスを与えてもらった。世の中には私程度の人間は他にもたくさんいますが、なぜか私を選んでくれた。その理由は相手の方に聞いてみないとわかりませんが、とてもラッキーだったと思います。

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業界の範疇を超えた人脈と見識を磨き、適切な判断を下す

丸山
どういう人がシティックには向いていますか。また、人を採用するときはどんな資質を重視しますか。
中野
向いているのはコンサルタント、ですね(笑)。我々は事業に投資するので事業を理解していることが大切です。それを実体験で理解できているといいですね。重視している資質は誠実さ、インテグリティです。
丸山
仕事においてご自身のモットーはありますか。
中野
当たり前の話ですが、どんな仕事でも最後までやり切ることが大切です。絶対に途中で投げ出さない。そして常にフェアであろう、誠実に対応しようと心がけていることぐらいでしょうか。相手を利用してうまくやろうという発想を持ったことはありません。あくまでフェアに、誠実にやってうまくいけばそれでよし。ダメなら仕方ない。あとは強い当事者意識を持つことでしょうね。組織が大きくなればなるほど誰かに任せる部分が大きくなります。任せた仕事であってもよく理解して、うまくいっているかどうか進行をチェックし、うまくいかなかったらどういうアクションを取るかきちんと考える。よくあるハンズオフのスタイル――トップである自分は方針と戦略をつくり、後は部下の君たちがやってね、というような――そういう形はあまりうまくいきません。本当に自分がやってみせるくらいでないと、人はついてきません。
丸山
事業会社トップの発言ですね。
中野
ただ、現在のように判断を下すのが仕事という立場になると、自分の仕事だけをやっていれば成功するとはとても思えません。自分の仕事の範疇を超えたところまで人脈や関心、見識を持つようになってはじめて事業を客観視することができ、適切な方針を打ち出せるのです。ある事象の渦中にいる人はどうしても視野が狭くなります。物事は対象にのめり込めば込むほど適切な距離感を失い、判断を誤ってしまう。私はいまファンドの世界にいますが、業界の範疇を超えた人脈と関心、見識を持って適切な距離感を保たないといけないと自戒しています。
丸山
そう考えるようになったのはいつ頃からですか。
中野
去年くらいからです。そのために経済同友会に入り、国政の問題を考える部会に所属しました。そうするとさまざまな業界の人たちが集まっていて、人脈や関心を広げる効果はあったと思います。それ以外だとプライベートで文化、芸術にも興味を持つようになりましたね。自分の住んでいる世界なんて本当にちっぽけですが、往々にしてそれがすべてになってしまいがちです。しかし判断することが仕事という立場になったら色々な世界を体験し、世間を広げ、常に適切な判断をできる状況に自分を置かなければなりません。だから自分の時間の3割くらいは今いる業界とは別のことをするようにしています。
丸山
たしかに仰る通りですね。経営者として大いに共感致します。これからがますます楽しみですね。本日は長時間ありがとうございました。
(了)

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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