コンサルタント転職のこぼれ話
コンサルから事業会社で経営層を目指すには
~「いつ事業の当事者になるか」という話~

キャリアコンサルタント 太田 涼

コンサルから事業会社で経営層を目指すには
~「いつ事業の当事者になるか」という話~

「いずれは事業会社で経営に関わりたい」
コンサルタントの方と話していると、よく聞く言葉です。
 
戦略を描き、経営層と議論し、意思決定を支援する。
そうした経験を積む中で、「次は当事者として経営を担いたい」と感じるのはとても自然な流れだと思います。
 
一方で、「コンサルから事業会社に転職すれば、経営層に近づけるのか?」
という問いに対しては、少し整理が必要です。
 
経営に“近い仕事”と経営そのものは、似ているようでまったく別物です。
 
 
|経営層に必要な力は、シンプルに3つ
 
事業会社で経営層を目指すのであれば、必要な要素を細かく分解しすぎるよりもまずは次の3つで捉えると分かりやすくなります。
 
1つ目は、経営を「考える力」。
事業の方向性を描き、どこに資源を投下し、何を捨てるのかを構想する力です。
この点は、コンサルタントとして培ってきた強みが最も活きる部分でしょう。
 
2つ目は、経営を「引き受ける力」。
PL責任を持ち、意思決定の結果から逃げないこと。
不確実な状況でも決め続け、うまくいかなければ自分の責任として向き合う覚悟です。
 
3つ目は、経営を「動かす力」。
戦略や数字だけでは、組織は動きません。
経営層に求められるのは、十数人から数十人規模の組織を預かり、成果と育成の両方に責任を持つこと。
つまり、組織マネジメントそのものです。
人を採用し、任せ、評価し、時には厳しい判断を下す。
その積み重ねによって、組織として継続的に成果を出せるかどうかが決まります。
 
 
|このうち、コンサルで得られないものがある
 
ここで大事なのは、この3つの力が同じようにコンサルで身につくわけではない、という点です。
 
経営を「考える力」はコンサルの中でかなり高いレベルまで鍛えられます。
 
一方で、経営を「引き受ける力」や「動かす力」は構造的にコンサルでは身につけにくい要素です。
最終意思決定の責任を負うことも、PLを背負い続けることも、人や組織の最終判断を下すことも、いずれもコンサルの役割ではありません。
どれだけ優秀でもそこは「支援する側」に留まります。
 
 
|だからこそ、「いつコンサルを出るか」が重要になる
 
事業会社で経営層を本気で目指すのであれば、どこかのタイミングで必ず事業の当事者側に移る必要があります。
そして重要なのは、そのタイミングを後ろにずらしすぎないことです。
 
「まだコンサルで学ぶことがある」
そう感じるのは自然ですし、間違いでもありません。
 
ただし、コンサルで積める経験と事業会社でしか積めない経験は、はっきり分かれています。
 
経営層を目指す人ほど、早い段階から事業の当事者としての経験を積み始めた方が結果的に経営への距離は縮まりやすいというのが実態です。
 
 
|転職は「ゴール」ではなく、役割を取りにいく選択
 
だからこそ、コンサルから事業会社への転職は「環境を変えること」自体が目的ではありません。
・いつから事業の当事者になるのか
・どの規模で、どの責任を背負い始めるのか
・その経験が、将来の経営にどうつながるのか
 
この視点で考えたときに、初めて「今出るべきかどうか」が見えてきます。
 
肩書きや分かりやすさではなく、自分が引き受ける役割の重さで判断すること。
それが、経営層を目指すキャリアでは何より重要です。
 
 
|キャリアは「正解探し」ではなく「タイミング設計」
 
経営層を目指すキャリアに唯一の正解はありません。
ただ一つ言えるのは、考え始めた人からしか選択肢は見えてこないということです。
 
もし今、
「このままコンサルを続けていいのか」
「事業会社に行くべきか」
そんな迷いがあるなら、それはキャリアを次の段階に進めるサインかもしれません。
 
転職するかどうかではなく、いつ/どんな当事者になるのか。
その視点で自分のキャリアを一度整理してみてもいいのではないでしょうか。
 
 
(2026年1月20日)
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