金融業界からコンサルタントへ転身

Vol.01

金融業界からコンサルタントへ転身

ボストンコンサルティンググループ

コンサルタント梶 沙瑤子氏

公開日:2012.09.15

インタビュアー 入江

投資銀行、金融機関のバイサイドを経てコンサルティング会社に転身を果たした梶氏。キャリアチェンジのきっかけは、コンサルタントなら「本当に自分のやりたいこと」ができると考えたからだった。

Message

企業によい影響を与え、発展に貢献したい

入江
梶さんは当社を通じ金融機関からBCG(ボストン コンサルティング グループ)に転職されました。ご活躍のようですね。このような形でまたお会いできてうれしいです。まず略歴からお願いできますでしょうか。
新卒で外資系投資銀行に入社し、投資銀行本部で金融機関を対象とした法人営業をしていました。内容は資金調達やM&Aなどです。二年勤務した後に日系金融機関に転職し、自社の子会社としてノンバンク等を買収するバイサイドの業務に携わり、ときには買収した企業に半年常駐して経営企画部の皆さんと一緒に働く、といったことをしていました。ところが世界的な金融危機に直面し、資金も減少したことから、バイサイドの仕事ができなくなってきました。そこで次は何をしようと考えたときに、入江さんから現在の会社をご紹介いただきました。
入江
確かにご紹介したのは私ですが(笑)、最終的に金融の世界からコンサルティングファームにご決断されたのはなぜでしょうか。
それまで自分は金融と法人という軸で、企業に価値を提供する仕事をしてきました。投資銀行に入社したのも、M&Aのように二つの会社を融合して良い方向に変化させていくという仕事をしたかったからです。しかし時期的な要因と対象顧客が金融機関だったため実際には資金調達の仕事が多く、自分のキャリアを考えると次はM&Aに携わる仕事がしたいという思いからバイサイドに移りました。ところが、事業環境の変化で徐々にその仕事ができなくなりました。では次はどうするかと考えた当初は、金融の仕事を続けて行こうと思い、金融機関に応募してオファーもいただいていました。そのような折に、コンサルティング会社をご紹介いただき何社かお話を聞いてみたところ、会社を見る視点の違いを感じました。極端な言い方をすれば「金融ならどこでもいいか……」という思いで受けていた他の面接よりも楽しかったことが、コンサルティング業界に軸足を移してみようと思うきっかけになりました。
入江
当時、コンサルティングという仕事にはどんなイメージをお持ちでしたか。
実は面接を受けるまで、コンサルティングという仕事についてはよく分かりませんでした。漠然とし過ぎているというか、範囲が広すぎて。友人から「投資銀行って何をしているところ?」と聞かれても「企業のM&Aや戦略的出資等に関わるアドバイザリー、あるいは資金調達をする仕事」と簡単に答えられるのですが、いま「コンサルティング業って何をしているの?」と聞かれても「会社に各種のアドバイスする仕事……」と曖昧な感じになってしまいます。現在でもこのような状態なので、面接を受ける前の私は「コンサルティングって何をしているのだろう?」「何をどうやって、どんな価値をつけているのだろう?」「価格に対して何がどう見合っているのだろう?」と思っていました。曖昧にしか理解していないために、自分の中でコンサルティングというものを避けていた部分もあったと思います。
入江
金融業界からコンサルティング業界へ移ることに不安はありませんでしたか。
もちろん不安はありました。でも、本当に自分が何をやりたいかを深掘りしていくと、学生の頃から企業に良い影響を与え、発展に貢献する仕事をしたいという思いがあって、コンサルタントの仕事はまさにそれだと思いました。お話をいただくまでコンサルティング業は一切頭の中になかったのですが、コンサルタントの方と実際にお話ししてみると企業に良い影響を与えたいというアスピレーション(大望)は変わらないと感じましたし、自分がコンサルティングの世界でどう成長していくかもイメージすることができました。
入江
「企業に良い影響を与え、発展に貢献する」というアスピレーションを抱かれた背景に、何か原体験があったのですか。
私の曽祖父が地方で中小企業を創業し、祖父や叔父が社長を受け継いでいます。幼少のころから、親戚に経営者がいるということが、会社経営に興味を持ち始めた理由でした。大学生になると、新聞や書籍を通じ、飛躍している地方中小企業がある傍らで、経営が立ち行かなくなっている企業があることを知り、企業の業績は、経済環境だけのせいではなく、経営に関する専門的な知識をしっかり持ち、活用できているかどうかに大きな影響を受けていると感じました。
それが法人に対して何らかの価値を提供する仕事をしたいと考えるきっかけで、「ある分野に関して、自分は絶対に価値を与えられる」という仕事をできるようになりたいと思いました。そのとき、まだ学生だった私にとって専門知識としてわかりやすかったのが金融でした。

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身に付いた能力は「問を立て、考える」力とCEOの視点

入江
コンサルタントになってどのようなプロジェクトを担当されたかについて教えてください。
最初に参加したのは、金融機関の内部リスク統制プロジェクトで、金融機関出身の私には比較的取りかかりやすいプロジェクトからスタートしました。
入江
約2年半の間にどれくらいのプロジェクトに参加されましたか。
10プロジェクト程度です。一つのプロジェクトの期間は、基本的には3ヶ月単位ですが、短いものだと1~2ヶ月、長いと9ヶ月のものもありました。BCGのコンサルタントはプロジェクト制で、プロジェクトが終わるたびに次にどういうプロジェクトをやりたいか希望を出します。ただし、次に参加するプロジェクトの決定にあたっては、自分の意志に加えて、マネージャーやパートナーからの「この人にはこういうプロジェクトを経験させたほうがよい」という視点などが考慮されます。現在は電機・通信業界の企業に対し海外事業展開の具申を行うプロジェクトに従事しています。
入江
金融からだいぶ離れた業種を担当されるようになったのですね。
最初の頃は金融が多かったのですが、数カ月たつとスキルといいますか「コンサルタントとしての型」のようなものが身に付いてきます。それで業種を問わず対応できるようになってきたのだと思います。
入江
「コンサルタントとしての型」とはどのようなものでしょうか。
コンサルタントならこういうことができなければいけない、という能力がいくつかあると私は思っていて、その中で最も大きいのが「問いを立て、答えていく能力」です。本当に何を問うべきかを把握し、それに答えを出していくというとシンプルで簡単そうに聞こえるかもしれませんが実際にはかなり難しく、私はその感覚をつかむのに苦労しました。
入江
コンサルタントとしての基本であり、でもとても難しいところでしょうね。他に身に付けられた能力はありますか?
もう一つ大きかったのはCFOとCEOの視点の違いを得られたことです。前職の投資銀行やバイサイドの場合、たとえば企業価値を一円単位で表します。それはリターンに関わってくるからなのですが、いまコンサルタントとしてクライアントに企業価値を提示する場合、その金額が妥当と思える範囲かどうかを明示できることのほうが重要で、むしろ一円単位にこだわってわかりにくい資料を提示するのは好ましくない場合が多いです。CFOは投資に対するリターンをシビアに評価する必要がありますが、会社全体を見る立場のCEOはそれだけがすべてではないと言えます。

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コンサルタントの醍醐味は自分の提案が大企業をも動かすこと

入江
金融の世界からコンサルタントにキャリアチェンジして、どんなことに苦労されましたか。
入社したばかりの頃は、金融という自分の得意分野がある一方で、資料をつくるスピード感や質がクライアントやチームのメンバーが求めている水準になかなか達することができず、そのギャップが苦しい時期がありました。要するに「私、本当はこのくらいできるはずなのに、この会社にいたらこれしかできないなんて」という感じです(笑)。
入江
その状態からどうやって脱しましたか。
「私はこのままコンサルタントのキャリアを歩んで大丈夫でしょうか」と、上司に相談しました。そうしたら「いや、君はコンサルタントに向いている」と言ってくれたパートナーが何人かいて。「そういう悩みを持つのは当然だし、こんなふうに考えてみるといいよ」、「次、こういうプロジェクトを担当してみたらどうだろう」と、少し弱気になっている自分に対し、本当に自分のことのように相談に乗ってくれたのです。
それだけでスキルが向上し、できなかったことができるようになるわけではないのですが、少なくとも自分が思っているほど私のことを他の人は悲観的に見ていないことがわかり、安心しました。意外と自分が思っていた以上にみんな私のことを気にかけてくれていて、BCGの一員として育てようとしてくれている。そんな温かい目で見てくれていることにやっと気付き、いまは辛いかもしれないけれど、BCGの一員としてもう少し頑張ってみようと思いました。
入江
コンサルティングという仕事の醍醐味はどこにありますか。
たとえば、クライアントに提案した内容が評価され、その3ヶ月後に別のプロジェクトでお伺いしたら「あの話、動き始めているから」と教えていただいたときですね。新聞に会社名が載るようなクライアントが多いのですが、そんな大きな会社で自分たちの提案した案件が動いていく。自分本位の言い方になってしまいますが、クライアントが動いてくださったということは、私たちの提案に価値があったということですから。
入江
今後、ご自身のキャリアの展望をどのように描いていますか。
基本的には、コンサルティングの仕事を続け、金融という自分の強み、興味のある分野を活かしながらクライアントに大きな価値を提供する仕事をしていきたいと考えています。自分にとってこの2年半は「コンサルタントとしての型」を身に付けるのが重要な時期だったのですが、これからはさらに自分の強みである金融について継続的に勉強し、もっと専門性を高めていく必要があると思っています。
入江
2年半働いてみて、どういう人材がBCGに向いているとお感じですか。
何か困っているときに「私はこういう理由で困っています」と言える方がよいと思います。先ほどの私の話もそうですが、誰かが困っているときに手をさしのべない会社ではありません。みんな助けたい気持ちと、助ける手法を持っています。ただ、同じチームのメンバーでも、どんなことで困っているのか、どの程度困っているのかまでは把握できているとは限りませんし、パートナーならなおさらです。ですから、まず自分が「困っている」と言うことが大切です。
自分が考えていることを率直に発言する重要性はプロジェクトの運営においても同様です。たとえばプロジェクト・リーダーが「私はこう思うからこうしよう」と言ったものの、現場に何回も通っている私たちは「それは適切なやり方ではない」と知っていたとしましょう。そのとき「言っていいのかな…」と躊躇するかもしれませんが、きちんと指摘しなければプロジェクトの価値を下げてしまいます。立場が上の人に「それは間違いです」と言った場合に「いや、絶対に自分のほうが正しい」という人は、BCGにはいませんし、言わないほうが相手に対し失礼にあたります。
入江
この記事を読んでBCG、あるいはコンサルティングという仕事に興味を持った方にアドバイスをお願いします。
なぜコンサルティングファームに入りたいのかという理由を明確に持ったほうがいいと思います。私の場合、当初はコンサルタントのイメージを持っていませんでしたが、自分のやりたいことの定義はできていたので、面接を受ける過程で「コンサルティングファームなら本当に自分のやりたいことができる」と思いました。その意味では「自分は何をやりたいか」を明確にすることが大事とも言えますね。何となくコンサルタントになりたい、というだけではおそらくモチベーションが続きません。いろいろな経験や能力を得られる仕事ですが、やはり難易度が高くストレスやプレッシャーも多いので、そういう悩みや苦しみまで共有しながら一緒に働ける方がいいと思います。

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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