未来のことは分からない。だから行動を通して見える範囲を広げる。その積み重ねが価値観とキャリアを磨く。

Vol.28

未来のことは分からない。だから行動を通して見える範囲を広げる。その積み重ねが価値観とキャリアを磨く。

エムスリーキャリア株式会社

代表取締役羽生 崇一郎氏

公開日:2015.08.18

インタビュアー 入江

外資系コンサルティング会社でのITコンサルタントから、高齢社会の情報インフラ構築を手がけるベンチャーの“エス・エム・エス”に転身した羽生崇一郎氏。現在は、医療従事者へ向けてさまざまなネットサービスを提供するエムスリーとエス・エム・エスが共同で立ち上げた“エムスリーキャリア”の代表取締役を務めている。コンサルタントから経営者へキャリアチェンジを果たした羽生氏に話をうかがった。

Message

自ら意思決定する側に立ちたいとベンチャーへ。最初はまったく通用しなかった。

入江
羽生さんは新卒でIBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS)にご入社されたとのことですが、まずはコンサルタントというキャリアを選ばれた理由をお聞かせいただけますか。
羽生
私は都市デザインを研究する大学院に進学し、その中で心理学的な面から人と環境のあり方について考える研究室に所属しました。私の研究内容は、深夜の公園での社会秩序を調べるというもので、様々な人にインタビューしたり、一緒に過ごしたりというフィールドワーク中心です。当初は研究者になることを考えていて、一般企業に就職するつもりはまったくありませんでしたが、大学院で1年ほど過ごすうちに、博士号の取得も研究職のポストを得ることも難しく、研究者として生きていくのは難しいと感じるようになりました。

そこで就職しようと方向転換したわけですが、特にやりたい仕事などなくどうしようかと悩んでいた折に、たまたま友人に勧められて読んだ大前研一さんの本に触発を受けたんですね。これからはキャリアを積むにあたって、英語とITと財務の知識が重要になると大前さんは説いていて、それらを得られるのは外資のITコンサルではないかと考え、IBCSに入社したのです。
入江
IBCSではどんな案件に関わられたのですか。
羽生
2004年に入社してから2008年5月に退職するまで、大きく3つのプロジェクトに携わりました。いずれも大規模な基幹システムの再構築のプロジェクトで、最後のほうはチームリーダーを務めていました。
入江
IBCSからエス・エム・エスに転職されたのは、どのような経緯からですか。
羽生
IBCSに入社して3年ぐらい経った頃から、自分の意識が少しずつ変わってきました。コンサルタントとしてお客様の意思決定を助けるよりも、自分で意思決定してチームをリードしていくほうが面白く、自分の強みを活かせるのではないかと感じるようになってきたのです。それで、いずれは事業会社に行こうと考えていたところ、いまエス・エム・エスの代表を務めている後藤(夏樹氏)から「是非来てくれないか」と誘われて……後藤はIBCSの同期で、半年ほど前に辞めてエス・エム・エスに参画していたんです。彼とはIBCSの新入社員研修で一緒に3ヶ月に及ぶ模擬プロジェクトに関わった仲で、人柄としても能力的にも自分にないものを持っていて信頼できる人間だと感じていました。そんな後藤からの誘いを受けて、転職を決めた次第です。
入江
エス・エム・エスに移られてからは、どのような仕事に携わってこられたのですか。
羽生
最初の配属は経営企画室で、そこでは中小の介護事業者の市場調査というテーマをいきなり与えられました。当時、エス・エム・エスは看護師の人材紹介事業で伸びていましたが、それに加えて介護の領域でも事業を伸ばして行きたいという経営者の意思があり、そのためのインプットがほしいと。それで自分なりに公的なデータを集めたり、事業者へのインタビューなどを行って資料をまとめたのですが、1ヶ月半後の報告会では当時の社長の諸藤(周平氏/エス・エム・エス創業者)から「まったく使えない」と散々な評価を受けて……経営者のニーズに応えられるアプトプットにまったくなっていなかった。自分のこれまでの経験やスキルが、事業会社ではまったく通用しないことを痛感しました。

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コンサルタント経験を活かしつつ、苦しみながらも徐々に成果を上げていく。

入江
コンサルタントから事業会社に移って、最初はやはり大きなギャップをお感じになられたのでしょうか。
羽生
ええ、特に私はたかだか4年ほどITコンサルを経験したに過ぎませんから、経営的な視点が決定的に欠けていたんです。経営者の意思決定に役立つ情報を出すのは、ITコンサルのプロジェクトで要件定義を行ったり、資料をまとめたりすることとはまったく次元が違う。そのことを気づかされて本当に衝撃を受けました。今振り返ると当たり前なのですが、世間知らずでした。その後、看護師の人材紹介事業部門に移ることになり、役員の下についてタスクフォースを回していく立場を務めることに。現場への指示命令系統を整備し、現場から情報を吸い上げて経営会議にリポートしていく役割を担いましたが、そこではコンサルタント時代に得たスキルを活かすことができ、経営陣からも多少は重宝されたと思います。
入江
コンサルタントで得たスキルで活かすことができたというのは、具体的にはどんなことですか。
羽生
状況を整理して、他の人にわかりやすくアウトプットするということでしょうか。何事に対しても目的・ゴールを明確にし、チームのコミュニケーションをスムースにするスキルは事業会社でも通用しましたし、社会人になって早目に身につけておいて良かったと思いますね。それで社内でも多少は認められ、入社した年の秋に中期経営計画を策定するメンバーにもなり、今後のエス・エム・エスについて考える場に加わりました。当時、事業を創り出せる人材をいかに増やしていくかが会社としての大きな課題で、新たに立ち上げた薬剤師の人材紹介事業を若手に任せたいという経営陣の意図があり、そこに私は自ら手を挙げて、事業の責任者をさせていただくことになりました。
入江
そこで成果を上げられたわけですか?
羽生
いえ、勇んでそのポジションを引き受けたものの、何しろ自分でビジネスをリードしていくのは初めての経験でしたから、当初は苦労しました。事業で注目すべき数字やそもそもの事業構造もよくわからないまま組織を率いていて、いわばダッシュボードがない車を運転しているような状況。特に自分の至らなさを思い知らされたのが、人・組織のマネジメントでした。ほんの一例ですが、コンサルファームにいた時は、メンバーへの情報伝達などはFYIと書いてメールを転送するだけ。そこで齟齬が生じても、情報をきちんとキャッチアップしない側が悪いくらいの感覚。しかし、ここではそれは通用しない。いろんなレベル感のメンバーがいるなかで、どうマネジメントすればメンバーがやる気と成長実感を保ちつつ結果を出し続けられるのか、それがまったく理解できていなかったんですね。人の入れ替わりも起こったりして、業績も期待されていたほどには伸ばせませんでした。ただ、そこでもコンサルタント時代のキャリアが多少強みになっていて、物事を分析して課題を抽出するスキルだったり、あるいはグローバルなプロジェクトで異なる価値観の人間と協業した経験などは、事業を運営していく上でも役に立っていて、苦しいながらも逃げずに目の前の課題解決を重ねていくことで次第に状況が見えてきて結果が出るようになっていきました。
入江
エス・エム・エスに移られてからは、決して順調なキャリアではなかったわけですね。そんな羽生さんが、事業責任者としてブレイクスルーを果たすことになったきっかけは何ですか。
羽生
薬剤師の人材紹介事業に関わって1年ほど経った頃、医師や薬剤師へのキャリアサービスを提供するジョイントベンチャーとして、このエムスリーキャリアを立ち上げることになったんです。会社設立に関われる機会はそう得られるものありませんし、新しい事業を自分の手で創れるチャンスだと捉えて、事業責任者としてそのまま転籍することに。そこでの経験が大きかったですね。ほぼ現場に裁量を委ねられることになり、自分で意思決定しなければならないことが増えた。上から干渉されない代わりに、失敗もすべて自分に跳ね返ってくる。そうした環境が自分には合っていたんでしょう。自分で考えたこと、感じたものから意思決定を重ねていくことでそうした環境にも慣れ、1年目に薬剤師の人材紹介で実績を上げ、2年目からは医師の人材紹介事業やメディア事業を担当。今まで薬剤師の人材紹介事業の営業管理を中心に見ていたところからより広い視点で事業を見渡せる立場に就いて、人材紹介とメディアの事業をどのようなバランスで進捗させていくか、そこでどう人を動かしていくかなど本当の意味でのマネジメントを経験することができ、そこで一気に視野が広がりました。また、自分の理解が及ばないところは、そこに精通したメンバーの力を借りながらビジネスを進めていくという姿勢も身につきましたね。

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コンサルタントから経営者へ。その確かなパスが、エムスリーキャリアにはある。

入江
そしてエムスリーキャリアの代表取締役に就任されたのですね。もともと「いつかは社長になりたい」という気持ちがあったのでしょうか。
羽生
けっして社長を目指していたわけではありません。エムスリーキャリアに参画した当初は、自分の将来のキャリアを考える余裕などありませんでしたし、とにかく事業を伸ばしていくために目の前の課題に必死で対処していくうちに、組織もできて数字も上がってきて、自分がやるべきことが見えてきたという感じです。社長に就いたのも、グループ内で経営人材をもっと育成していこうという方針が掲げられ、チャンスをいただいたという経緯です。
入江
ご自身を振り返られて、羽生さんはコンサルタント経験をベースにどんなことを意識されてこられたから、いまの経営者のポジションに就くことができたとお考えですか。
羽生
ひとつは、状況に合わせて自分を変えていけるかということですね。例えば、私はコンサルタント時代から一対多でプレゼンテーションするのは得意でしたが、実は一対一でコミュニケーションするのは苦手で、自分の考えを相手にその都度伝えて共通認識を作っていくことがうまくできなかった。そのことに気づいて、メンバーへの関わり方を変えようと努めましたし、組織の作り方も変えました。また自分の能力の限界を察知して、他のメンバーの力を借りるというスタンスでビジネスを進めたことも奏功しました。いま自分が置かれている状況の中で、どう変わるべきかをいち早く認識して修正していくことのできる能力が、コンサルタントから事業会社へ転身する際、特に弊社のように成長スピードが早く変化も激しい会社には求められると思います。

あとは、逃げずに向き合い続けることでしょう。事業運営では様々な利害関係を調節して、関係者のベクトルをあわせる必要がある。その時、自分も含め人は論理だけでは動かず感情にも大きく左右されるので、最初からスムースに行くことの方が少ない。でも、諦めずにアプローチを工夫しながら、人や組織を動かしていく必要があります。コンサルティングのプロジェクトとは違い、事業に終わりはなく結果がすべて。組織で起きることは全て自分に関係があるという気持ちで、事業に向き合い続けることが重要と思います。
入江
羽生さんが率いるエムスリーキャリアでは、コンサルタント出身者も積極的に採用していらっしゃいますが、そうした人材が御社に参画する魅力は何だとお考えですか?
羽生
当社は、小さなテストサービスをどんどんつくって事業領域を広げていくスタンスの企業なので、ひとつのサービスを自ら設計して組織をつくり、オペレーションを構築し、PLを管理していくという、一連の事業運営を担えるチャンスが豊富にあります。特に弊社では「m3.com」というマーケティングの基盤があるのでそうしたサービスをテストしやすい環境にあります。
入江
確かに単に経営企画に関わるのではなく、事業全体に関われるチャンスがあるのは御社ならではの魅力ですね。
羽生
加えて、いま私たちが取り組んでいるのは「超高齢社会に適した医療提供体制づくりの支援」であり、「医療人材の最適な配置と能力の最大化」というこれからの世の中にとって重要なテーマです。それをビジネスを通して解決していくことができる。しかも、日本だけではなくグローバルにもビジネスを展開しようとしており、それは当社に参画する大きな醍醐味だと思います。私自身も、今後10年20年と自分のキャリアを捧げてもいい、それぐらい価値のあるテーマだと感じています。
入江
若手のコンサルタント経験者も歓迎しているとのことですが、彼らには何を期待されていますか。
羽生
3年から5年ぐらいかけて、ひとつの事業の責任者になっていただければと考えています。コンサルタント経験者は論理的思考力や知的体力などを高いレベルで備えている方が多いので、短期間に一つでも多くのPDCAを回して事業について見えている範囲を広げていただきたい。3年から5年ぐらいというのは、私自身もそうでしたが、コンサルタントを数年経験して事業会社に移ってすぐに事業の責任者として通用するほど甘くはないからです。

コンサルタントの中には、設定されたゴールに向けての論点整理や課題抽出は得意でも、自らゴールそのものを設定するという経験がない方が多いのではないでしょうか。ですから、まずはここでいろんな失敗をして気づきを得て、マインドを変えて、自らPDCAを回して事業をリードしていくためのゴールを設定し、それをマネジメントできるようになってほしい。
入江
長い目で見て経営人材を養成されようとされているのですね。では、最後に若手のコンサルタントの方々に、これからのキャリアを考える上でのアドバイスをお願いします。
羽生
自分が何をやりたいのか、逆に何をやりたくないのか、それを一行でも二行でもいいので「言葉」として記すことをお勧めしたいです。人間は、言葉にしないと意識で捉えられませんからね。その集合体がみなさんの価値観になり、その軸がないと事業会社に行ったほうがいいのか、ファームに残ったほうがいいのかわからなくなる。また、自分のやりたいこと、やりたくないことは、特に20代の頃は常に変わっていくものでしょうから、その度に言葉で書き記していくうちに、徐々に価値観が醸成されていくと思います。その価値観とエムスリーキャリアの目指す方向性がリンクするのなら、ぜひ私たちの仲間になっていただきたいですね。

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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